特別委員会からの決闘
コセール先生はその後、何も追及しなくなった。
僕は認められた訳ではなく、競技場の端で授業を見守っていた。彼らはまだ僕を劣等と見ているのだろう。それかどのようにしたらいいのかが、分からないのかもしれない。だけど、その授業で僕が参加出来なかった事だけは、よく分かった。
その後も同じように虐げられ、僕の午前の授業は終わった。武闘祭は、新入生。特に劣等生を潰すために開催される事だけ、理解出来た。それもすぐにやってくるので、準備を始めないといけない。そう思いながら、僕は歩いていた。
「劣等のレイ。わざわざ姿を現すとは、思わなかったぞ」
と、夜中に聞き覚えのある、声がした。
顔を上げれば、特別委員会の委員長、ジーク・アーネストが立っていた。完全に僕を敵認定している顔だった。これはまた、面倒な事に巻き込まれると思った。
ジークは眼鏡を押さえながら、きっぱり言い放った。
「生意気だ」
お前の方が生意気だ、と言ってやりたくなる。この姿を第三者が見れば、どう思うか分かり切っている。
常識を持っているアレスは、何とも言えない顔で見ていた。やっぱり、ださいと思うのだろう。
だけど、少し頭が可笑しい者達は歓声を上げていた。特にジークのファンと思われる、女性の方が。
「劣等生などやってしまえ、ジーク様」
など、
「ジーク様、行け行け」
と、どこかのアイドルのように、応援していた。
それは何とも見ていてこちらが恥ずかしくなる、姿である。が、彼らの仲間である、男子達はより自信を持ったように、ジークの側でかっこ付けていた。似合わない体勢で、ポーズを決めているようだった。
もう、僕とアレスは言う事がなかった。
何か勘違いした、ジークが再度口を開いた。
「観念するのだな、劣等生よ。この特別委員会の委員長が直々にお前と、決闘をしてやろう」
もうジークは初めから、自分の本当の性格を隠そうとしなかった。僕はいいのだが、誰かの前だとやばいのではないか、と思った。が、見た所彼らは、彼のそこを知っていながら、応援しているようだった。なおさら、嫌な奴らである。
「この学園には我々の言う事を聞かない、者達など必要ないのだ」
と、学園で君臨しようとしていた。
何で先生方はこんな者を放っているのだろう。もう、全員が騙されているとしか、言えない。この決闘自体も、僕に言う事を聞かせて、口封じを企むただの私闘である。そんな綺麗な、決闘と呼べるものではない。
仕方なく、僕は話を合わせた。
「僕が負けたら、どうなるのだ?」
「それは当然、我々の言う事を聞いてもらう。絶対にな。生憎、学園から劣等生を追い出せないのが、困った事だよ。何か悪い事をしてくれたら、話は凄く単純なのだがね」
と、僕に悪い事をするよう、強要するような発言をした。
これにはアレスはあからさまに、嫌そうな顔をした。僕はそれを一瞥しながら、話を続けた。
「なら、僕が勝った場合は?」
ジークは笑い出した。そんな事など、ないと思っているのだろう。
なら、なおさらこの勝負には勝つ必要がある。
笑わない僕を見て、ジークは真剣な顔をした。
「……いいだろう。なら、特別委員会の委員にしやろうじゃないか」
その顔は明らかに勝ちを、信じている。何とも面白い。
「本当に大丈夫ですか、ジーク様」
と、一人の女子生徒が口を開いた。
兎のように、男子生徒が守りたくなるような、姿である。僕が一番、嫌いな演じ方であった。
「安心しろ。この私が負ける訳、ないだろう」
と、ジークは安心させた。
見ているこっちは何とも、気持ち悪くなる。
こう言うシーンは本当に、嫌いだ。




