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信じない者達

 固まっていた者達だったが、すぐに何とか動き出した。


 コセール先生は僕を見ると、大きな声で言った。

「こんな事があっていいはずがない…いや、あり得ない」

 と、彼は全面的な否定派だった。


 仕組みも何も考える先に、全てを否定していた。魔法使いとしては尊敬出来る考え方ではない。何故かと知ろうとしなければ、困る局面もある。

 例えば魔物に魔法が効かない時に、何故かと考えなければ、死ぬ可能性がある。いつまでも、自分が優位だと考えても状況が変わる訳でもない。


「…何でそう言うのですか?」

 僕の味方である、アレスが正しい事を言った。


 何とも妥当な意見と言える。彼らに何故と問い掛ける。だが、劣等としか見えない彼らだから、訳の分からない事を述べるだろう。


 今度はコセール先生が、アレスを見た。大きく腕を動かしながら、演説するかのように。

「あれを何と言うのだ? 不正を行なっているとしか、言えないだろう。あれは、あり得ない。起きる訳がない事なのだから」

 と、コセール先生は考える事さえ、止めていた。



 その事に気付かずに、影響されていた生徒が口々に言い始めた。それは予想通り、平和そうではない。


「劣等生だから、不正をしていたのだろう」


「最初から可笑しいと思っていたのだ」

 と、自分が劣っている事を何としてでも、隠そうとしていた。


 が、それに使われる理由は何とも弱い。アレス以外は、全員が僕の実力に疑いを持っていた。実力を見せろ、と言われたから見せたのに。これだと、最初から全て可笑しいだろう。こう言う結果が嫌なのなら、初めから言うな、と返したくなる。


 僕の手品の種が分からない、アレスは何も言えない様子だった。ここで彼らのように、訳の分からない事を喚かない点から、彼らとはやっぱり違う考え方をしている。


 競技場は、僕の実力を信じるアレスと、他の信じない者達に綺麗に別れた。信じる方が劣勢であるとは、明らかに分かった。


 ふと、コセール先生が言った。

「再度、同じ事をしろ。レイ。ここで同じ事が出来なければ、先程は不正を行なっていた事になる」


 僕は先程と何も変わらない、と思った。が、見たいのならいつまでも見たらいい。だけど、同じ事が出来ればどうするか、を彼らは考えていない。初めから、出来ないと考えている者達なのだろう。




 僕は短く詠唱した。

「【火玉(フレマ・マブル)】」

「【水玉(アク・マブル)】」

 と、先程の無詠唱魔法も一緒に発動させた。


 一つではなく二つ同時に発動させたのは、同じ魔法では不正だと言われたら二度手間だからだった。


 これも予想通りと思って見てみると、また固まっている人々がいた。


 唖然としながら、コセール先生は呟いた。

「同時発動だと?」


 同時に二つを発動させるのなど、大した事ではない。それが出来なければ、動く魔物に当てる確率が落ちるだろう。


 だけど、コセール先生はそれがあたかも、大きな事のように言った。アレスを見ると、同じような顔をした。こう言う事は出来ない事である、と言われているのかもしれない。


 何とも遅い魔法社会だと、思い知った。

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