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無詠唱魔法の応用

 コセール先生は競技場の中央まで行くと、こちらを振り返った。

「なら、劣等のレイ。お前の魔法を見せてくれ。劣等生たる実力を全員が、この目に焼き付けたいのだ」

 と、コセール先生は自分の実力を疑わない言葉を言った。


 他の生徒が一斉に小さく笑い出した。僕がコセール先生に嫌味を言われていると知った、アレスが一歩前に出た。


「…コセール先生。それは集団での劣等生への虐めではないですか?」


 コセール先生は何も動じずに、アレスを直視した。

「何の事だい、賢者のアレス君。これが虐め? そんな事ないだろう。ただ、実力を皆が見たいと言っているだけだ。わざわざ君が何か、気にする事もない」

 と、アレスの言葉を切り捨てた。



 僕は代わりにアレスより、前に出た。それをコセール先生は何とも嬉しそうに見ていた。

「レイ。お前なら、この誘いを受けると思ったぞ」


 僕は自分以外が巻き込まれると、対応が難しくなる。そのため、全てを自分が被った後に、全てを消し去るとする。だが、コセール先生はただ僕がアレスを虐められるのが嫌いな、弱者の劣等生と見えるのだろう。何も争う力がないにも関わらず、前に出ようとする。格好の標的にしか。


「見せますよ、コセール先生」

 と、僕は静かに述べた。


 一切恐れを見せない姿は、僕を虐めたいコセール先生から取ったら何とも耐えれないだろう。自分が常に上であると思っている、ジーク(誰か)のような人は。案の定、何とも赤い顔をしたコセール先生が、荒い呼吸をしていた。今にも爆発しそうな、爆弾を抱えながら。


「いいだろう、劣等生。お前の実力を精々、我々に見せる事だな…安心しろ、ちゃんと()()はあげるぞ」

 と、競技場の奥から、入学式の実力試験に使われていた的が現れた。


 以前とは距離は同じである。そこの点に関しては、何も悪い事を向こうはしていない。劣等生だからと、どうせ当てれないと思っているのだろう。本当にその思い込みには、僕も驚かされる。




 僕は指定された場所に立つと、片手を突き出した。

「【火玉(フレマ・マブル)】」


 予想通り、掌にしか火が現れない。誰が見ても、劣等と呼ばれる実力である。


 見ていたコセール先生が笑い声を上げ始めた。

「これだけかい、劣等生? 入学式の時と一切変わらないじゃないか……先程までの勢いはどうしたのだ? 怖くなって、ママの所に帰りたくなったか?」

 と、コセール先生は僕を名前でさえ呼ばなくなった。


 それ以外の言葉は、僕をむかつかせるための無意味な言葉だった。僕がコセール先生に怒り狂った所で、二度と授業を受けさせない気なのだろうか。僕は彼が何をしたいかは、分からない。



「大丈夫だよ、レイ」


 近くに立っていたアレスが、僕を励ます言葉を掛けてくれた。当然、他の人は聞こえないような、囁きだけど。


 僕はアレスのために、小さく合図をした。ありがとう、と。


「こんな事を、まだ続ける気なのか…劣等のレイよ。俺達の授業時間を削って、ただで済むと思うなよ」

 と、遂に一人の生徒が怒り出した。


 だが、全ての発端はコセール先生なので僕に何かを言っても、意味がないとしか返せない。その生徒へと、コセール先生が代わりに言った。


「そんなに気にするな。中々見れない事である。劣等生の魔法など。だから、後一回ぐらいは我慢しろ」


 そう言われると、その生徒は大人しく引き下がった。それで気をよくした、コセール先生がこちらを見た。

「でだ、劣等生。後一回だけ、許してやろう。その()を我々に見せてくれ」




 何か反応を返すより先に、僕は再度片手を伸ばした。

「【火玉(フレマ・マブル)】」


 だが、今回は無詠唱魔法(自分の魔法)の強化を勝手に付与させる。小さかった火玉は見る見る内に、大きくなった。


 そして、次に飛行を付与させる。強化と合わさる事で一瞬にして、的へと当たった。少しずるいようにも見えるかもしれないが、使える手は使わないと損をする。誰も使ってはいけないと、言っていない。


 後ろを見ると、全員が固まっているのがよく見えた。

 数日振りに僕の心は、何ともすっきりした。

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