喜ばれない登校
僕が登校する事にアレスは不安を述べたが、何とか納得させた。そもそも学ぶために来たのだから、登校しないと意味がないだろう、と。
本当の優等生である彼はその点については、理解してくれた。が、やっぱり再度何かされるのではないか、と気にしていた。
教室で何気ない顔でアレスの横に、僕は座った。僕を見て嫌そうに陰口を言っているのが、一眼で分かる。
流石にアレスさえ、不機嫌そうな表情が面に出ていた。それに気付いた数人は、やばいと気付いて止めていた。
が、僕がアレスを汚染させている、と言い出す者もいた。好き勝手言う人は、どこまでも言う。本当に彼らはそう言う人でしかない。
時間になって現れた担任は名前を呼び始めた。が、不思議な事に僕の名前は呼ばれそうな所で呼ばれなかった。そこで劣等生は先生方から、いない存在と思われている事に気付いた。
一人一人の顔色を確認していた担任が、僕を見つけると突如顔色を変えた。予想していない事に対する、反応は隠せないようだった。
先生でしかも担任なら、劣等生であったとしても一生徒に、ちゃんとした対応をして欲しい。何故ならそれが先生のする事だから。
「っ…レイか。劣等のくせに来るとは、いい度胸だな」
と、先生さえ劣等と呼ぶ事を躊躇しない。
何か先生としてどうなのか、と言いたくなる。明らかに駄目だろう。先生もと言うか、学園全体で虐めるなど。外だと社会全体、だけど。
僕はただ短く答えた。これほど酷いと担任に、何も感じなくなる。何も求めたくなくなる。そんな事をしても、意味がないから。
「学ぶために来ました」
その言葉にアレス以外が笑い出した。僕を指しながら、ゲラゲラと笑う。
「本気か、レイ? 魔法が全然使えないお前が、だぞ?」
と、担任もその輪に加わる。
僕は彼らを切るように、一言言った。決して彼らなんかに巻き込まれるか、と思いながら。
「はい。本気です」
それには笑えないと、担任の顔が変わった。僕が虐められているのを、見たいだけなのだろう。これまた、最悪な一面である。
「そうか…なら精々頑張る事だ。それだけは言おう」
と、担任は溜め息を付きながら、言った。
僕の真剣さから流石にこれ以上言っても、意味がないと大人として理解したのだろう。
だけど他の生徒は、それが分かっていないようだった。口々に担任に不安を述べる。
それに切れた担任が机を叩いて、静かに言った。あたかも首に噛み付こうとする、野蛮な狼である。その目は殺意を持った状態で、生徒を睨んだ。彼がどう思っているかは、それだけでよく分かった。
「黙れ……それ以上言うのなら、あいつと同じ扱いをするぞ」
それは嫌な人が今度は口を一斉に閉じた。
優等生としてのプライドが、劣等生に落ちるなど許さないのだろう。こんなに脅しに使える言葉とは、知らなかった。
担任が虐めを深刻化しているのでは、と疑うほどだ。
横でアレスは何も出来すにただ、拳を握り締めていた。それは隣に座る僕だけが、理解出来た。
彼は他と違い葛藤している。
それだけでもアレスが僕の事を考えてくれている、とよく分かった。




