表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/133

喜ばれない登校

 僕が登校する事にアレスは不安を述べたが、何とか納得させた。そもそも学ぶために来たのだから、登校しないと意味がないだろう、と。

 本当の優等生である彼はその点については、理解してくれた。が、やっぱり再度何かされるのではないか、と気にしていた。




 教室で何気ない顔でアレスの横に、僕は座った。僕を見て嫌そうに陰口を言っているのが、一眼で分かる。

 流石にアレスさえ、不機嫌そうな表情が面に出ていた。それに気付いた数人は、やばいと気付いて止めていた。

 が、僕がアレスを()()させている、と言い出す者もいた。好き勝手言う人は、どこまでも言う。本当に彼らはそう言う人でしかない。



 時間になって現れた担任は名前を呼び始めた。が、不思議な事に僕の名前は呼ばれそうな所で呼ばれなかった。そこで劣等生は先生方から、いない存在と思われている事に気付いた。


 一人一人の顔色を確認していた担任が、僕を見つけると突如顔色を変えた。予想していない事に対する、反応は隠せないようだった。

 先生でしかも担任なら、劣等生であったとしても一生徒に、ちゃんとした対応をして欲しい。何故ならそれが先生のする事だから。


「っ…レイか。劣等のくせに来るとは、いい度胸だな」

 と、先生さえ劣等と呼ぶ事を躊躇しない。


 何か先生としてどうなのか、と言いたくなる。明らかに駄目だろう。先生もと言うか、学園全体で虐めるなど。外だと社会全体、だけど。



 僕はただ短く答えた。これほど酷いと担任に、何も感じなくなる。何も求めたくなくなる。そんな事をしても、意味がないから。

「学ぶために来ました」


 その言葉にアレス以外が笑い出した。僕を指しながら、ゲラゲラと笑う。

「本気か、レイ? 魔法が全然使えないお前が、だぞ?」

 と、担任もその輪に加わる。


 僕は彼らを切るように、一言言った。決して彼らなんかに巻き込まれるか、と思いながら。

「はい。本気です」


 それには笑えないと、担任の顔が変わった。僕が虐められているのを、見たいだけなのだろう。これまた、最悪な一面である。


「そうか…なら精々頑張る事だ。それだけは言おう」

 と、担任は溜め息を付きながら、言った。


 僕の真剣さから流石にこれ以上言っても、意味がないと大人として理解したのだろう。

 だけど他の生徒は、それが分かっていないようだった。口々に担任に不安を述べる。



 それに切れた担任が机を叩いて、静かに言った。あたかも首に噛み付こうとする、野蛮な狼である。その目は殺意を持った状態で、生徒を睨んだ。彼がどう思っているかは、それだけでよく分かった。


「黙れ……それ以上言うのなら、あいつと同じ扱いをするぞ」


 それは嫌な人が今度は口を一斉に閉じた。

 優等生としてのプライドが、劣等生に落ちるなど許さないのだろう。こんなに脅しに使える言葉とは、知らなかった。

 担任が虐めを深刻化しているのでは、と疑うほどだ。


 横でアレスは何も出来すにただ、拳を握り締めていた。それは隣に座る僕だけが、理解出来た。

 彼は他と違い葛藤している。


 それだけでもアレスが僕の事を考えてくれている、とよく分かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ