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アレスの過去

「ーーー、レイ! レイ、ーーー!! 起きろ、レイ。レイ、起きろ!!」

 と、誰かの耳元の叫びで、僕は目を開けた。


 不安そうで今にも泣きそうな顔をした、アレスが僕の体を揺すっていた。

「…アレス?」


 僕が目覚めた事に、アレスは笑顔を見せた。

「よかった。起きてくれて、レイ。このまま死ぬかと思ったよ」


 僕は起き上がると、まだ自室にいると気付いた。寝る前と変わらず、何もかも破壊された状態である。辺りの暗さからまだ日が開けていない、と分かった。


「ん? 何でアレスが来たの?」


「何かが壊れる音がして、気になって覗いてみたら、レイが倒れていたのだよ…」


 それは目覚めとして最悪だろう、と感じた。


 怪我をしていないとしても、爆破した部屋で一人倒れているのだから。これはアレスを凄く心配させたな、と僕は思い知った。


「ごめん…でも、大丈夫だよ」


「本当によかったっ。本当に……あの時のようにならなくて…」


 ーーあの時?


「あの時って、アレスと僕は会った事ある?」


 アレスははっとしたような顔をした。何か悪い事を言ったのだろうか。と僕は心配した。が、アレスは僕の心配を否定するように、頭を振った。


「直接はないかもしれないけど、僕はレイを見た事があるよ」

 と、アレスは言った。


 僕はアレスとの認識はなかったから、少し驚いた。

「そうなんだ。僕の故郷で?」


「うん。僕は…君が虐められているのを何度も見て来たけど、助ける事が出来なかったのだよ」

 と、アレスは僕に過去を教えて来た。




 昔、故郷で僕が虐められているのを見た時に、何も出来なくて困ったのだろう。そして、僕と再会して悔やんでいる事を、思い出したのだろう。


 だけど僕からしたら、アレスの事は何も悪くないと思う。それが普通な行為だから。逆に僕にそれを告白する彼の方が、何倍も他より偉いと言える。そこまで、出来る人は中々いないから。


「アレス。君は何も悪くないよ…わざわざ僕に教えてくれて、ありがとう。そこまでしてくれるアレスは、本当に優しいよ。他の人なら僕に教えもしないと思うから」


 そう言われるとは思わなくて、アレスが僕を見た。

「本当?」


「うん。だから、今はもう寝よう…アレス。夜も遅いはずだから」


 アレスは頷いた。

「分かったよ。僕の部屋に来る?」


 僕は部屋を見回してから、アレスに笑い掛けた。

「頼もうかな。流石にここでは寝れないから」


「なら、歓迎するよ。少しベッドが狭いかもしれないけど…」


 僕は軽く頭を振った。

「ベッドじゃなくて、僕は床で寝るから大丈夫だよ。夜風が当たらない室内にいればいいだけだから」


「本当に大丈夫?」


「うん」


「分かったよ、レイ」

 と、僕はアレスに案内されて、彼の部屋に入った。




 僕が先程までいた部屋とは違い、暖かい感じがした。それに、アレスらしい部屋だった。

 子供らしいものが壁や、机に置かれている。最初から置かれている物以外にも、彼が持って来た物があるようだった。

 だけど、それらについて何かを言うより先に、僕は早々と転がった。


「おやすみ」


 いつの間にかシーツを取り出して寝ている僕に、アレスが驚いているのが感じ取れた。

「これもレイの特技の一つとしとくよ…」

 と、呟くのが聞こえた。



 が、最後には彼も僕に二度目の言葉を、言ってくれた。

「おやすみ、レイ。今度は、いい夢を」


「あぁ。ありがとう。本当にそう願いたいよ」


 物音で僕はアレスが、ベッドで寝たのを感じた。


 そして、僕が眠りに着くのも早かった。

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