第一騎士団長との再会
僕はそのまま第三騎士団に帰る事なく、他の場所へと案内された。扉を開けた外に王都使長専属の護衛が待ち構えていた時は、一瞬驚いた。が、何か捕まる事もなく、僕は丁寧に案内された。当の王国代理王都使長は僕とはもう、顔を合わせたくないようだった。僕はそれでよかった。
でも、最後ぐらい彼らと会いたかった気もした。一年の遠足など、面白そうだが面倒な気も少しした。が、どんな事になろうと乗り越えそうな気はした。
ここです、と扉を開けられるとそこには見覚えのある人がいた。ほんの数時間ぶりのようだった。相手の第一騎士団長は僕を見ると、驚きを見せていた。
「ーーレイ…が、新たに入る少年兵なのか? これまでの役職はどうしたのだ…」
と、困惑しているようだった。
僕はただ小さく頷いた。
すると、近くの護衛が口を開けた。
「レインフォードは、たった今からただの平民の少年となった。だから、第一騎士団に少年兵として配属する事になった。王国代理王都使長様からの一年間の従軍命令は絶対である」
と、言い放った。
すると、団長は更に口を開けた状態にしていた。
「王都使長様っ?」
僕はその質問には答えずに、頭を下げた。
「と、言う事でこれから一年間お願いします。第一騎士団長様」
「いや、お前がこっちを様付けするのはおかしいだろう…」
と、呟いた。
彼からしたらそう思うのは当然だが、今はもうそうではないと僕は頭を横に振った。
何かこんな状態に陥ると今となって少し、虚しいそうな気持ちに襲われた。僕は自分の心が更に揺さぶらなように、何とか抑えた。魔法で自身に鎮痛剤とも言えるものを何重にも掛けた。すると、頭も視界もすっきりした。それは狩りをする時と同じようだった。
「騎士団長様。私はもうそのような身分ではありません。今はただの少年兵です。なので、何も気にしないでください」
「そうか……なら、帰ろうか。いや、レイに取ったら初めて直接顔を合わせる人々だろう」
と、団長がこの場にはもういたくないような仕草をして、早々と僕らは部屋から出た。
僕は去り際に、王都使長の護衛の呟きが聞こえた。
「ここまで宮廷魔法師様が落ちるとは、見ていて嫌なものだな」
「だが、生きているだけでも幸運なのかもしれないな」
「本当に俺らには関係のない、世界だ」
彼らがいない廊下の奥に行くと、団長が僕に振り返った。そして、頭を下げて来た。
「本当に済まない、レイ。君がこのような状況に陥っていいはずがないのだ。このような才能のある人が、ここで終わっては国にとって誰に取ってもよくないのだ」
と、僕の肩を硬く掴んだ。
僕は団長に笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。ですが、本当にそのお気持ちだけでも嬉しいです。いつか、こうなるとは思っていましたので」
出る杭は打たれる。それはいつか来ると思っていた。僕は力があったとしても、それは大人の世界では容易く潰せるほどである。S級冒険者、宮廷魔法師や第三騎士団長だろうと、悪評が広がれば辞めさせられる。濡れ衣だろうと、罪を犯したと思われば終わりである。それほど、裏の力と言うのは怖い。
あの時、目を付けられた時から僕はそれを予想していた。ただその時が来るのが早かっただけである。
「君にそんな事を言わせる大人は本当に悪いな…」
と、団長はどこかを見ながら呟いた。




