宮廷魔法師の団長
「あの…ご、ご無礼を働いたりしていませんでしたでしょうか」
と、ゴーシュが何とも堅苦しい敬語で僕に話して来た。
その様子は今にも土下座をしそうで、僕は驚いた。ここまで自分の立場が上にあるとは知らなかった。もしかしたら、アレスとジークが逆に異質だったのかもしれない。
僕は笑いそうなのを抑えながら、返事をした。
「そんなに硬くならなくてもいいよ。僕はただの少年である事は変わらないから」
「そ、そうですか……と、言う事でこのゴーシュ、了解です」
と、ゴーシュは飛び上がって、軽く敬礼した。
それぐらいの勢いの方が僕に取っても、接しやすいのだった。
セイスの方を見ると、まだ何かに困っている顔をしていた。
「どうしたのですか、セイス副団長?」
と、僕は更に近付いた。
すると、セイスが小さな声で呟いた。
「申し訳ないですが、証明するものを見せてくれますか?」
僕はそれを聞かれる事を理解していたので、頷いた。
「いいですよ」
と、収納魔法から騎士団長のバッジを取った。
そして、ローブの中側から宮廷魔法師の杖を取った。
セイスと同じ形のバッジと、宮廷魔法師の杖が掌で輝いていた。本当に人はキラキラするものが好きなのだった。僕は、少年兵のバッジを外して、第三騎士団長のバッジを代わりに付けた。
「これまでのご無礼、お許しください。宮廷魔法師レインフォード・ウィズアード第三騎士団長。セイス・ツーセルは今後も、第三騎士団副団長としてその職務を全うしたいと思います」
と、それを見た、セイスは納得したように跪きそうになった。
宮廷魔法師がそこまでされる人とは知らず、僕は焦った。そして、正式な自分の役職の読み方を今知った。誰も教えてくれないからだった。
「特に気にしていません。だから、今度もどうか皆さんよろしくお願いします。騎士団長や宮廷魔法師と言う役職がありますけど、ただの少年である事は変わりません」
と、僕は頭を下げた。
「あの…レインフォード様…いや、レイ。と読んでもいいのか?」
と、ザリファーが恐る恐る聞いて来た。
僕は笑顔で頷いた。
「うん。それでいいよ。そっちの方が僕も話しやすいから」
「「了解しました」」
と、他も一斉に返事をしてくれた。
「ですが、公式な場ではこのような口調では話しませんので、その時はお願いします」
と、セイスが呟いた。
僕は返事をした。
「うん。分かったよ」
「ここまで出来るのは、レイだけだよ」
と、アレスが呟いていたのが聞こえた。




