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アレスとの再会

 僕は魔法で魔物の動きを真似た黒色の影を、作り出した。一見黒猫のように見えるのは、それを参考にしたからだった。が、動きはちゃんと魔物らしい動きを取り入れていた。魔力で動くので、魔物よりも早く動く事さえ可能だった。


「可愛いな…」

 と、ザリファーが一匹の影猫を手で触った。


 まだ戦闘モードには入っていないので、影猫は本当の黒猫のようにザリファーの手に頭を擦り付けた。そして、今度は足に体を絡ませて、尻尾で主張をしていた。微かに魔力を盗み取っていたのだが、当のザリファーは気付いていないようだった。ザリファーの魔力が美味しい事もあり、影猫は上機嫌のようであった。ここまでリアルにする必要はないが、黒猫の事を思って作ると何か予想通りの事をしていた。失敗かどうかは分からないけど。


 他の団員も同じように触っていた。もしからしたら、全員実は猫好きかもしれない。それは黒猫を連れて来た時から、思っていたけど。


 僕は彼らの腰から吊るされた剣を指差した。

「で、その影猫に剣を下ろす」


「え、嫌だ。こんな可愛いのを、自らの手で殺めるなどは出来ない」

 と、何故かザリファーが涙目で訴えて来た。


「分かったよ」

 と、僕が言うとザリファーは嬉しそうな顔をした。


 が、僕は止める訳ではなかった。ただ戦闘モードをオンにするために言ったのだった。そうすれば可愛いなどと言う暇さえなくなる。実際に魔物に襲われている気になるので、可愛かった影猫はただの敵となる。正確には一匹だけをそのモードにした。何故ならいきなり攻撃すれば、誰も一秒も持たないと見て分かったからだった。


 ザリファーの側の影猫が、黒いオーラを発しながら飛び掛かった。が、当然ザリファーは何とも無防備な状態だった。まだしゃがんでいる人が、襲って来るものに対応するのは、大変だった。


「わっ」

 と、ザリファーは顔を手で覆いながら、横に転がった。


 流石、少年兵と言うだけあってその動きに無駄はなかった。だが、影猫は再度、飛び掛かろうとした。


 すると、セイスが手を伸ばして魔法を発動するのが、横目で見えた。

「全てよ静まれ。何者も、この先に行くことは出来ない。動けない。【氷の世界(アシス・ワルド)】」

 と、ザリファー諸共影猫を凍らせようとしていた。


 セイスが使える上級魔法は広範囲の場合には役立つが、極めて狭い範囲で行おうとする場合は二次被害を生む可能性があるものだった。僕はザリファーに氷が迫っているのを見て、瞬時に打ち消した。僕の魔力を横から打つける事で、セイスの魔法は維持し続ける事が出来なかった。ガラスの破片のように氷が、粉々に散った。


 辺りには僕の濃度の高い魔力が立ち籠っていた。嫌でも威圧を放つそれは、魔法師の一人である団員達が気を悪くするほどだった。セイスはその気持ち悪さから、膝を付いていた。僕はやり過ぎたと思い、これもすぐに薄めた。風の魔法で外に、送り出した。今回は威力に気を付けたため、誰かが吹き飛ぶ事はなかった。風の魔法で僕の魔力を包んでから、運ばせたからだった。彼らには微風が吹いたようにしか、感じられないようにしていた。


 何かが変わったと、彼らは僕を見た。詠唱は聞こえないとしても、何かを行ったのは明らかに僕と分かったからだった。それは、以前のブラック・ライオキャットの時のように言い逃れ出来る事ではなかった。


 最初にセイスが口を開いた。

「レイはもしかしたら…騎」



「ーーレイっ。久しぶり」

 と、大きな声がした。


 そこに振り向くと、何とも眩しい笑顔のアレスが立っていた。僕の親友の一人で、かつては寮の隣人だった。

 だが、何故今来たのかは分からなかった。週末になら、行こうと考えていたが…実は忘れていたとは言えない。僕はジークから送られて来た、刺客かと気をハラハラさせていた。が、その顔を見るとそうとも言えなかった。



 アレスは走りながら、腰の剣を抜くとそれは見る見る内に彼の手に収まりやすいサイズへと、変形した。白い長剣を手に、彼は笑いながら攻撃を打つけて来た。僕はどこも傷付きたくないので、すぐに体を横にずらした。魔力を体中に巡らせながら。それをしないと、危ないと分かっていたから。


 知らない間に彼は変な方向に過激化しているようだった。


 僕は急いで収納魔法から自分の剣を取り出すと、強力な盾の魔法を発動させた。流石にダンジョンで得た白の剣を間違って切ったりするのは、嫌だったから。その分、僕は前に出れないのだったが、そこにアレスはよく知っているようだった。本当に僕がいない間に彼はどうしてしまったのだろうか。


 アレスの白い剣と、僕の剣の魔法が打つかる時に、白い花火が散った。双方の強力な力はどちらかを壊す事なく。ただ押し相撲のようになっていた。このままではなくないと分かった様子のアレスの方から、剣を一度打つけるのを止めた。

 が、攻撃を止める気にはならないようだった。


 アレスはジークらしい悪戯顔を思い浮かべながら、再度僕に接近して来た。その顔の割には、一切容赦しない。ふと横目で団員の顔を見ると、誰もが唖然としていた。それはそうだ。僕も同じ状況なら、そんな顔を作るだろう。


 僕とアレスの間に言葉は必要なかった。あったのはただ、剣で語ると言う事だった。

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