コント:転生のタイミング
ボケ;勇者カルマ
ツッコミ;時の女神ファエル
場所;時空の狭間
カルマ「ここが、時空の狭間……」
ファエル「あら、時空の狭間にようこそ。私は時の女神、ファエルよ」
カルマ「噂には聞いていたけど、本当にいたんだ……!」
ファエル「ここに来たってことは、あなた、転生志願ってことね。自らの力でここに来る……、凄い実力ね」
カルマ「いえ、目を閉じて、本気で祈っただけですよ」
ファエル「そう、まぁいいわ。とりあえず、あなたのことを調べさせてもらうわ。あぁ、喋らなくて大丈夫よ。目を閉じるだけで大丈夫。私が手をかざすだけで、あなたのことは全てわかるから」
カルマ「わかりました。じゃあ……」
ファエル「えぇ、それでいいわ」
ファエル「……なるほど、あの世界で勇者をやっていて……、なかなかいい仲間達を連れているじゃない。それで、数多の苦難を乗り越えて、今まで関わって来た人達にエールをもらい、ついに最終決戦。闇を統べる魔王の手前まで来て……」
ファエル「……で、転生したい、と?」
カルマ「はい!」
ファエル「このタイミングで!?」
カルマ「はい!!」
ファエル「いやいやいやいや、絶対に今じゃないでしょ!! もう魔王手前よ!? もう少しであなたの力で世界に平和が訪れるのよ!? なんで今!?」
カルマ「いや、転生ってかっこいいなぁって思いまして」
ファエル「しかもそんな軽い理由で!? 駄目よ、絶対駄目!! だって、ここまで一緒に戦ってくれた仲間はどうなるの!?」
カルマ「それは大丈夫です、あいつらは所詮ワークパートナーなんで。自分、あいつらのノリ苦手なんすよ」
ファエル「じゃあ、応援してくれた村のみんなは!!」
カルマ「だってどうせ魔王倒したって言って帰っても、ちょっと村で飲み会やっておしまいっすよ。こっちは命を懸けてるのにその程度って、割に合わないなぁって」
ファエル「でも、あなたがここで転生したらこの世界は破滅してしまうのかもしれないのよ!?」
カルマ「でも、魔物側からしたら魔王倒されたらそれこそ破滅じゃないっすか。やってることは一緒だけど立場が違うだけっていうかぁ」
ファエル「なんで勇者やっているのよ!!」
ファエル「なんで、あなた勇者やっているのよ! そんな考えでよく今まで勇者やってこれたわね!」
カルマ「なんか、実力だけはあったんすよね。剣技も魔法も大体見ればわかるっていうか。即死魔法百発百中だったし」
ファエル「鬱陶しいわね、あなた!!」
ファエル「……ちょっと待って、もう一度目を閉じなさい」
カルマ「あぁ、はい」
ファエル「……よく見ると、あなた、これ、魔王の心臓に剣を刺す直前じゃない!! なんでこのタイミングでこの世界来れたの!?」
カルマ「いや、なんか魔王刺す瞬間、転生したいな~って思ったら、来れました」
ファエル「時の狭間、舐めてんじゃないわよ!! っていうか、本気で祈ったって、その程度なの!?」
カルマ「自分なりの、本気ですかね」
ファエル「あぁもう! ちなみに、転生したいって、どこに行きたいの!?」
カルマ「なんか、カジノの近くで遊び人あたり、いいな~って、思ってまして。あ、カジノで働きたくはないですね。なんか激務そうなんで」
ファエル「予想通りの解答ね!!」
ファエル「はぁ、もう何よこの勇者……」
カルマ「自分、遊ぶことへの熱意なら誰にも負けません!!」
ファエル「そんな熱意いらないわよ!!」
ファエル「わかったわ……、私の負けよ。転生させてあげる。ただし、ちゃんと魔王を倒して世界に平和をもたらすこと。いいわね?」
カルマ「えぇ、でも~」
ファエル「いいから行く!」
カルマ「わかりましたよ。血、苦手なんだよなぁ……」
スッ
ファエル「はぁ、あんな子、初めて見たわ……」
スッ
カルマ「戻ってきました~」
ファエル「魔王は?」
カルマ「倒しました!」
ファエル「平和は?」
カルマ「取り戻しました!」
ファエル「なんで、はつらつとしているのよ……。まぁ、いいわ。じゃあ、転生を始めるから目を閉じなさい」
カルマ「はい」
ファエル「……思い残すことは無いわね?」
カルマ「あぁ、そういえば僧侶のリリーに結婚を申し込まれましたね」
ファエル「……返事は?」
カルマ「まだしてないっす」
ファエル「中止!! 転生、中止!!!!」