忍者狼宅配便
「ねえ知ってる。真夜中の0時、その時間にあるものを持って星に願いを送ると、一匹の忍者のような狼がそのあるものをどこかに運ぶんだって」
少女は楽しそうにそんな夢のような話をしていた。だがそれを聞いた少年は、机に腰かけて少女へと言う。
「何だその作り話は。どうせ嘘なんだからそんな話に夢や希望を抱くのはやめろ」
少年は少女の頭をチョップする。
「慎太郎。相変わらず君は夢がないな」
「作り話に規模を抱いている方がおかしいだろ」
「アホか。本当だったらどうする?」
「別に……俺は先に帰る」
「ちょ、待って」
少女は走って少年を追いかけた。
「なあ夢命。その話にでてきたあるものって結局何なんだ?」
「それは一説に言われてるのが人の思いが込められた物らしいよ。それを狼が届けたい人に運ぶんだって」
「まあ嘘だろうな」
そして夜になり、少年はふと少女が話していた内容を思い出していた。
「別に……嘘だって証明するためだし」
少年はそう言いつつも、机に向かって手紙を書いていた。
(思いを込めた物。なら……別に手紙でも構わないよな)
少年はペンを進め、思いを書いていた。
書いている途中で恥かしくなり手紙を破ろうとしたり、途中で躊躇いペンを止めるなど、悩みに悩んでいた。
それでも書き終えた少年は、少女の話通り夜空に咲く満点の星空を見て願いを送った。
(この思いが、彼女へと届きますように)
だが狼は来なかった。
落ち込む少年であったが、窓の方から物音がすることに気付き、少年は恐る恐る窓を開けた。するとそこには、一匹の狼がいた。
「お、狼!?」
狼は終始無言で少年を眺めている。視線を追うと、それは少年の持っている手紙へと向けられているようだ。
「渡せばいいのか?」
少年は手紙を狼へと差し出すと、それをくわえて狼は立ち去った。
「本当に届くのか。この手紙は」
午後0時過ぎ。
寝ている少女の枕元には、一枚の手紙が置かれていた。
「慎太郎の……あほ」
朝になり、少女は起きた。
そこで気付いた。
「手紙?」
少女は手紙を開くと、そこには見知った字でたった五文字の言葉が大きく書かれていた。
「まったく、本当にアホだな。そんなこと、伝えてくれなくても解っているというのに」
今日の彼女は機嫌が良い。
彼女は制服に着替え、鞄を背負ってそして足は一人の少年の家へと向かう。
扉は開き、少年は少女の前へと止まった。
「慎太郎。私もだよ」
「な、なんのことだよ」
ーー今日も狼は思いを運ぶ。