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95億 「場味」と「絶対」

午後2時


「社長、ソニー売っておきましょう」


「もう売るのか?先週買ったばかりだぞ。しかもとその時にはもっと上がるって言ったじゃないか」


「はい。たしかにそう言いました。しかし相場全体の流れが変わりましたので利益が乗ってるうちに売っておきましょう!」


「どういう風に相場の流れが変わったんだ?」


「はい円高によって電気通信関連の株の『場味』(ばあじ)が悪くなってきたんです。ここはいったんキャッシュにして一時避難しましょう。下がったらまた同じ銘柄を買えばいいじゃないですか」


「場味が悪いか・・・よしわかった売ってくれ」


「わかりました。ありがとうございます」





日経新聞をはじめ多くの新聞に毎日のように株価がついているが、元来「株価がつく」ということは奇跡に近いものである。

なぜかといえば株価というものは同じ銘柄を「もうこれまでだと思って売る人」と「いやこれから株価が上がると思って買う人」がいて初めて商いが成立して値段がつくメカニズムであるからだ。


ということは証券マンは同じ銘柄を「売らせる」こともできて同時に「買わせること」もできる素晴らしい「二枚舌トーク」を持ち合わせていなければならない。


だから毎日が刹那的!


気分はもう刹那的一色でなければ証券マンなんて仕事はできない。

これは本当です!


もし確固とした自分の主張なんてあったら毎日のノルマ付の株の売買なんてできっこない。


よく「もっと儲けてから売ってもらいたい」などと顧客のことを考えた発言をしてたら必ず営業課長に叱られたものだった。


「その間にもし暴落がきたら結果として顧客のためにならんから早めに利益が乗ってるうちに売らせろ」

という論法である。


このときに活躍する言葉が前述の「場味」というやつである。


株価や出来高みたいな絶対的な数字は新聞でも確認できるが相場全体の盛り上がりやなんとなくイヤーな売りたくなるような雰囲気は現場にいる証券マンにしかわからない。


この雰囲気を称して我々は「場味」というのであるが顧客はとにかくこの場味の言葉に弱い。

90%は従ってくれた。


釣り船の船頭が言う

「ここは『魚っ気』がないからもっと釣れる場所に船を移動します」の「魚っ気」に近いものがある。


素人は「魚っ気」なんかわからないからである。

毎日海を仕事場にしているプロの漁師の言うことと勘に従わざるを得ないのと同じである。



あと「場味」でなびかない客がいたら「絶対」表現の登場である。


証券業法の中に「断定的表現の禁止」っていうのがあったが、断定的な表現こそが動かない客への最後の手段である。


「社長絶対です!絶対大丈夫!」

「間違いありません、私が保障します!」

「〇〇証券が絶対保障します!」


の連発こそがカブ屋さん商売繁盛の秘訣です。


「場味」と「絶対」の言葉に要注意!!








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