表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/103

77億 法人攻略作戦 2

社長室内に入ったらもうこっちのものである。

まずは女子社員がお茶を2つ持ってやってくる。軽くお礼と挨拶をして社長室内に一人きりになる。


この瞬間こそが我々の出番である。


おそらく今から1、 2分の間に社長が入ってくるだろう。


その間に社長室を隅から隅まで凝視する。


そしてその社長の趣味や考え方、広く言えば人生感そのものを読み取るのである。


いつもはふざけたような証券マンであるがこの瞬間だけはレーダー全開である。


レーダーの対象物となるのは壁にかかってある掛け軸であったり絵画、本棚に並べてある本などである。


そのほか将棋盤とか囲碁盤、ゴルフバック、置いてある新聞や四季報。


こういったもの全てを総合して一緒に判断するのが技だ。


そしておもむろに社長が入ってくる。


「社長、はじめまして!○○証券の太田です」と名刺を渡す。


大体否定的な意見を言われる。


「何とか証券でなあ昔損したんだ」

「○○証券はあまり評判良くないよ」


などと後ろ向きの話が出ることが多い。


最初から「いらつしやい、よく来たなぁ」と言われることまずない。


しかしそこはひるむことなく

「社長、お忙しいところお時間取らせて申し訳ありません。5分だけ私にください!」と言い切る。


すると向こうは

「あー、俺はこの男の話を5分間聞くだけでいいんだな」

と地図を書かせる。


さあ、そしてその言い切った5分が大事である。


商売の話はせずに(本当はしたいのだが)早速先程のレーダーで確認した内容を質問する。


俺の場合は本棚の中に海軍関係の本(例えばミッドウェイ海戦とかガダルカナル戦記)とかの本があればもう勝ちである。


俺は海軍の歴史がプロ並みに詳しい。

であるから

「社長このミッドウェー海戦の本は何ですか?さっきから気になってました」


「お前たち若いもんに言ってもわからんだろうが、私は昔は駆逐艦高波に乗ったんだ。ミッドウェイでは赤城の護衛をやっていた」

と顔を綻ばせながら昔話を語る。


「駆逐艦高波と言えばたしか○○艦長でしたよね。確か操艦がうまいことで引き抜かれた艦長でしたよね」

と言うオタク話をする。


すると「なんでそんなことを、お前が知ってるんだ?」

と言うから

「はい、私は海軍に興味があります。特に兵学校での教育に関心があります。今日はその勉強をさせてもらいに行きました!」


と言い切る。

もちろん商売の話は一切しない。


そして時計を見て5分たったらきっちり帰る。

だいたい海軍の話に持ちこんだら向こうが勝手に30分くらい語る。


問題なのは次である。


必ず次につながる口実を必ず約束して帰る。


例えばこの場合であれば


「社長、すいませんがあの本をお借りできませんか。必ず次回返しにきます」

などとやる。


何もネタがない場合はわざと折り畳み傘を社長室に忘れていって電話して次回取りに行く。


しかも念入りに黒い傘の内側には白いペンキで大きく「〇〇証券太田」と名前を書いておく。


そして次の日にでもまた取りに行く。


このようにして一旦出会った相手は必ず懐に入れる鍛練をしていたのである。


いかに他社の証券マンと比べて「面白い奴」と思われるかどうかがポイントである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ