表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/103

30億  北京ダッグ養鶏所

30億  北京ダッグ養鶏所


6月10日 午後7時


「よーし全員集合、今日はなんとしても投資信託を終わらせよう。食堂に頑張るために天丼を取ってあるので、みんなで食べて来い、15分で戻ってこいよ。そしてその後元気を出して客に電話だ!いいな!!」


「わかりました!!」

天丼とは大きなエビの天ぷらが乗った本来うまい食物であるはずだが、この時の天丼はまったく味もそっけもなかった。


ただ物理的に、ドンブリの中のものを胃袋に運ぶ作業を繰り返すだけである。


しかも十五分の時間制限つきとくるから、みんなもくもくと食べてるだけでそこには、食事中特有の微笑ましい会話もなければ、世間話もない。


ただカチャカチャと食べる音とお茶を飲む音だけが虚しく食堂に響き、たまに話すとしたら

「おい、お前んとこの課はあといくら残っている?」


「ほとんど旗です」とか、泣きたくなるような会話のみ。


刑務所の囚人でも、もっと人間味のある食事タイムが与えられているのではないかと思った。


まさに「北京ダック」と同じである。


だいたい証券マンは早飯が多い。


理由は相場という足枷があるために筆者も在籍中、まともにゆっくりと昼飯を食べた記憶がまるでない。


昼に訪問先の会社で社員がゆっくり昼ごはんを食べている風景を見て

「あー、これが普通の人間の生活なんだな」

と思ったものである。


食事の話が出たついでに、ある年配の課長がいて常々


「今の若いヤツはなっとらん!かならず昼飯を食べたがる。オレ等の年代の証券マンはいつも昼飯抜きでやらされていたんだぞ!」


と言うのが口癖で


「その証拠にオレが食堂で昼飯喰っているのを見た事ないだろう」


と豪語していた。


たしかにそう言われてみればその課長が昼飯を食っている風景は見たことがなかった。

 

こいつの人間性はともかく半分だけその意気込みだけは尊敬しようとおもっていた矢先の昼、会社の近所の喫茶店でサボッていた時になんとその課長が焼きソバ定食を食べているのを目撃してしまったのである。


さすがに俺と出くわしてしまって食事風景も見られてしまったわけであるからいつもの元気はどこへやら。


俺と目があった時の課長の一言


「さすがのわしも腹が減っては戦ができんからなあ・・・」


「ハイハイ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ