第1話-転生してまず初めに出会うのって大体女だよね-
この世界には2種類の人種が存在している。
基礎知識が高く魔法・魔術に長けている「ハイデア族」と呼ばれる人種と
ハイデアに棄てられた者達「ローデア族」
彼らは元々敵対関係にあった。
しかし敵対関係と言ってもここ数百年の間、戦争が起こったという経歴は無い。
理由は単純明快。力関係がハッキリしているためだ。
全てにおいて劣っているローデアに勝ち目は皆無である。
過去を振り返えれば挑んでは惨敗、挑んでは大敗の
目を背けたくなるような結果しか残っていない。
歴史上最後の戦争ではローデアが過去初めての投降をし、自らの牙を捨てることを誓った。
「ローデア族も学ぶことができたのか」
ハイデアの王が残した言葉である。
屈辱的ではあったが平穏を望んだ末に投降したローデアにはどうしようもなかった。
それからというものハイデアとローデアは分断され、お互いに不干渉を誓った。
しかしハイデアの一部がそれを許さなかった
「何故力のある我々がローデアと対等なのだ」
と、ローデアの民を拉致し奴隷にしたり、人身売買などが行われるようになった。
実験に利用する者。玩具として利用する者。
絶対的な力関係を示すことで互いの格差をローデア族に再認識させたのだ。
いつしかローデアはハイデアの干渉に怯えながら暮らす日々を逃れるために
自国を離れ個々で村を作っていった。
「なーるほどね…はぁ…」
12歳になった俺は感嘆を交えたため息を漏らしながら本を戻した。
俺が育ったこの村は人口30人と満たない小さな村で殆どが大人だ。
自給自足の生活を送っており、俺は畑仕事を任されている。
「カナタ。飯だぞ」
ドア越しに聞こえる父親の声にはーいと空返事をし、自室を出た。
「今日はカナタが12歳の誕生日で成人を迎えたのでー、お母さん頑張っちゃいました~」
この世界では12歳で成人を迎えるそうだ。結婚も12歳から可能となっている。
俺の母、アイミさんは13で結婚し、14で俺を産んで今26歳。どーなってんだこりゃ
前世の記憶を引き継いでいるため当初はドギマギしたもんだ。年齢では年上だが
主観的に見れば年下だ。ましてや女の経験がない俺にとって美人であるアイミさんは
最早恋愛対象と言っても過言ではない。
「おお、こんな飯は久々だな。早く食べよう」
こっちは夫のキーラさん。女だ。いや、誤植ではないぞ。間違えようの無い女だ。
家庭環境が複雑だって?いやいや、人口30人の村だぜ?そんな状況複雑すぎるだろ。
何でもこの世界、男は存在しているが(現に俺が男だし)女にも生殖機能があるため女同士の婚約が可能となっている。女同士から生まれる男の俺。遺伝子よ、自由すぎないか。
キーラさんは筋肉隆々なガテン系の人だ。それでも美人なんだけど。恋愛対象である。
しかし残念だが私は純愛こそが正義だと謳っているため、手は出せない。だから精一杯子供を演じている。
「カナタ、誕生日おめでとう。立派に育って父さん嬉しいぞ」
「カナタちゃんお誕生日おめでとう~。お母さんも嬉しいわ~」
「うわぁ~!ありがとう~!」
謝辞を述べ、食事にありついた。
その夜…
皆が寝静まった頃、コンコンとノックをする音が部屋に響いた。
誰だ…?
視線を音の方に向けると、ヒッと小さな悲鳴をあげてしまった。
女がこちらを見ている。目が合うと「あ、け、て」と口パクで伝えてきた。
怖いが俺は躊躇無くあけた。何故なら可愛いからだ。可愛いやつに悪いやつはいない。
「こうも普通に開けるとは…危機感がないのかねキミは」
「えへへ…あ、誰ですか?この村の人じゃないけど」
女は此方を見据えると「やっぱり…」と呟やき
「キミ、転生したでしょ」
と続けたのだ。