表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

盆の中からアレやコレ(短編集)

謹慎世界

作者: 八刀皿 日音


 最近、色々なところで規制というのが増えているのは僕も知っている。

 やれ差別表現だの、不適切だの、不謹慎だの……ほんの数十年、もっと言えば数年前まで普通だったものが、どんどんと消えていっている。

 そうして言葉や映像を消せばいいというものでもないんじゃないかとは思いつつ、特に不具合を被らなかった僕は、実のところさして気にしていなかった。


 ――そんなある日のことだ。

 大好きなコメディ映画がリバイバル上映されるとのことで、僕は映画館に足を運んだ。

 そして驚いた。

 映画からは、一切の音声が消えていた。

 初めは機械の故障でもあったのかと思いきや、後で聞くと、言葉遣いが下品だとか、差別用語を含むだとか、こんな理由で笑わせようとするのは不謹慎だとか、さらには、大丈夫かどうか怪しいから自主的にやめよう、なんて理由で削っていくうち、音声がすっかりなくなってしまったということらしい。

 馬鹿馬鹿しいと呆れかえった僕だが、だからどうできるわけでもない。


 それから、しばらくして。

 今度は恋愛映画を見に行ったという友人からさらにとんでもない話を聞いた。

 なんと、音声のみならず映像すらなくなってしまったという。

 その理由についていわく、『愛すること、愛されることの無い人たちにとっては不愉快であり、不謹慎だから』だそうだ。


 さらに後には、何と音楽までも世の中から排斥された。

 生まれついて耳の聞こえない人のことを想うと不適切な表現だから、だそうだ。


 ――そして、今日に至っては。


 街頭モニターで、人類全体の不謹慎を正そうというメッセージが流されている。

 生まれなかった、生きられなかった命に対して不謹慎であるから、生きるという行為そのものを辞めるべきである――と。


 ……なるほど、では。

 死にたがっている命に対して不謹慎だろうから、僕は今しばらく生きるのがいいんだろう。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] まったくけしからんことですね! 言い出したらキリがないですよね! まったく!
[一言] 配慮しろって言ってる方が、配慮したくない人の気持ちに配慮するっていう配慮は無いんでしょうかね。(以下、配慮が回ってエンドレス) いやー。 こんな肩の凝りそうな世界では暮らしたくないですわ。
[良い点] おもしろかったです。 [一言] 個人的に思うこととして、いろんなことが発言禁止ですよね (;'∀') それがいいかどうかは別として…… 今の時代なら言っていいのか (。´・ω・)? ……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ