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星降る世界で……  作者: 弓咲 岬
三章 旅をしてみよう(国内で)
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八十四話 うん。助かるよ……

遅れてすみません。

それと明後日の金曜日の投稿で今年の分は終了です。皆さん、私の作品を読んでくれてありがとうございます。


 ふと目が覚め、辺りを見渡す――までもなく、俺の傍でクロエがじ~っとこちらを見ていた。……妙に不機嫌そうな顔で。


「……ええと、おはよう?」

「はい。おはようございます」

「なんか怒ってる?」

「怒ってません」


 頬を膨らませてとてもご機嫌斜めなクロエさん。ただし、怖さは全くない。むしろ可愛いだけである。言ったら余計に怒るだろうけど。

 それで……なんで怒ってらっしゃるのでしょうか?


「……せっかくいい所でしたのに……」

「……いい所って?」

「!? ……何でもありません!」

「お、おう……」


 顔を明後日の方向に向けて拗ねてしまった。だけど……この距離じゃ小声でも聞こえるよ? 俺は難聴系じゃないからね。

 ただ耳が赤いので照れているのは丸分かりである。やっぱりクロエがステラたちの中で一番可愛いと思う。だって、一々反応が初心なんだもの。そりゃ誰でも可愛いと思うって。


 ……感想を言ってる場合ではないけれど。まぁ、機嫌なんてすぐに直るんだろうけどなぁ。


「クロエさん?」

「……」

「おーい」

「……知りません」


 耳が赤いまま取り合ってくれない。……仕方ない。一先ず起き上がろう――っとと。……ねぇ、ステラさん。人が起き上がる途中に引っ張るのはダメだと思うよ。三半規管が弱かったらどうするんだい?

 まぁ、会話が少し大きかったので多分起きてるだろうことは予想できてたけど……そのニヤリは何かな? 俺的にはミレナ的展開が予想できるんだけど。


「じゃあ……次も私とお兄ちゃんが一緒に寝るね」

「っ!? ……ダメです! ユート様とは私が一緒に寝るんです!」


 何やら強気なステラが俺の腕を引っ張り。心配かつ真剣な顔で取られまいとクロエが俺の腕を引っ張り。――そして、俺は両者から腕がもげそうなくらいに引っ張られてとても痛い。……ねぇ、痛いんだけど。


「……君たちは俺の腕を取りたいのかな?」

「「あっ……」」

「よし。落ち着いたところで……ステラ、撤収」

「はぁい……」


 不機嫌な声を隠さずにして起き上がるステラ。……全く、ステラもクロエも……おっとこれ以上言ったら不味い。


 取り敢えずステラに手招きをする。不機嫌さが一瞬で吹き飛んだステラは俺に飛び付いてきた。抱きしめて撫でてあげると気持ち良さそうに身を委ねた。離してあげると元気いっぱいに飛び出して行った。

 次はクロエだな……って待って。泣かないで、クロエ。


「クロエ、泣かないで」

「うぅ……」

「ほらほら。こっちおいで」


 優しく抱き寄せるとクロエは泣き始めてしまった。随分情緒不安定だが……何故だろうか? まぁ、今は泣き止ませるのが最善なんだけども。


 さらに優しく涙を拭きとりながらゆっくり甘えさせるとようやく落ち着いてきた。クロエは俺の手を自分の頬に固定させたまま、こちらを向く。涙目。すごく涙目。


「……ユート様」

「はいはい」

「……大好きです」

「俺もだよ」


 どうやら俺の答えはお気に召してくれたらしい。クロエは涙目ながらも抱きついて嬉しさを表現してくる。

 ぐりぐりと顔を押し付けてきて、顔を放す気配がない。抱きしめる力を強くすると……んふっと少し苦しめの声を上げながらも、より抱きついてきた。


 俺はクロエを抱きしめたまま身体を移動させ、横にさせる。クロエはさっきの泣きも含めて疲れているのか既に眠そうだ。

 髪を梳くようにして頭を撫でると目がとろんとしてきた。


「おやすみ。クロエ」

「……ぁ、その前に一つお願いが。……その、私も二人きりの時は呼び捨てで呼んでもいいですか?」

「いいよ」

「ユート……ユート……えへへ……」


 最終的に綻んだ顔を見せたクロエはゆっくりと目を閉じて――寝息を立てながら眠りについた。そう言えばステラたちって寝息も静かだよね。いびきとかしないし。まぁ、いびきを搔いてたら掻いてたで心配なんけども。

 それに四時間も寝れば大分眠気は取れる。俺は二時間……少し長い気もするが、クロエの寝顔でも見ながらゆっくりとしようか。








 さて、体感的にはそろそろ二時間。もうちょっとしたらステラかミレナ、もしくは両方がやって来るだろう。そろそろクロエを起こそうかな。


 安心した表情ですやすやと眠っているクロエ。あまり皆の寝顔を見ることなんて無いんだけどさ……まぁ可愛いこと可愛いこと。

 大抵は気持ち良さそうに安らかな表情を見せるんだけど、偶に少し不安そうな表情になるんだ。そこで頬とかに手を当てるとすぐに穏やかになるの。そこで軽く頬を掻いてみるとくすぐったそうにするんだ。それでも止めないで、と自分で俺の手を掴んでくる。

 あとは足を絡めてきたり、頭をぐりぐりと押し付けてきたり……起きてるんじゃないかと思わなくもなかったが、結論――可愛かった。


「クロエ。そろそろ時間。起きて」

「んぁ……んふっ……んにゃぁ……」


 寝ぼけているクロエは変な声を上げながら俺に頬を突かれている。それでもまだまだ覚醒には届いていないようで、突いている俺の手を両手で掴んで大切そうにしている。


 もう片方の手で軽く頭を揺さぶると寝ぼけていたクロエがようやく覚醒した。そして、自分の現状を見て顔を真っ赤にさせた。……まぁ、いつものことだな。

 ちなみに今のクロエは寝ている途中で服がズレたのか右肩が少し露出している。必死にそれを直そうとしながらも焦っている為、思うように直せないようだ。


「相変わらず可愛いな」

「ふえっ!?」


 おっと不味いつい本音が。

 俺の言葉を聞いたクロエは真っ赤な顔をさらに真っ赤にさせて、俺にくっ付いて顔を隠してしまった。余程恥ずかしいらしい。

 と思ったら急に上を向いて俺にキスしてきた。しっかりと首の後ろに手を回して。


「んぅ……んっ……んっ」


 吐息を漏らしながら一生懸命してくる。俺は背中を支えているのでそこまで苦しい体勢じゃないと思うが……何か他に思う所があるんだろう。

 一旦離したクロエは濡れた瞳で「……自分からして」と俺にそう伝えている。要望通りにこちらからすると首の後ろで組まれていた両手は胸の前で軽く添えられ、味わうように目を閉じた。

 ――とそこで。


「ユートくん、時間だ……あら?」

「むぅ……」

「!? んんっ! んんっ!」


 扉が開き、ステラとミレナが入ってきた。そしてキスをしている俺とクロエを見て――ミレナは面白そうにし、ステラは不機嫌な表情になった。クロエは二人に見られたからか必死に離そうとするが、俺が頭を固定させているので離せていない。

 ちなみに真っ先に動きそうな両手は全く動いておらず、抵抗自体も弱々しいものなのでむしろ続けてくれと言った所か。




 俺の息が苦しくなって来た所で唇を離すと既に真っ赤なクロエは目を回して気絶してしまった。……しまった。やり過ぎたか。

 クロエの前で手を振ってみるが全く反応がない。これはしばらく起きないな。ただし、片手はぎゅっと俺の服を掴んで離れる意思が無いことだけは分かった。


「それでユートくんこの状況は?」

「俺とクロエがキスしている所にミレナとステラが来て……クロエの恥ずかしさが許容を超えて……気絶、といった感じ?」

「でも、手だけは離さない、と」

「理性では恥ずかしくても、感情的な部分では……嬉しい的な?」

「ふうん……」


 気絶したクロエを横にさせて(勿論俺の手は掴んで離さないが)ミレナが怪しい視線を送ってくる。訝しげだ。

 歩み寄ってきたミレナは手前の所でベットに腰掛けるとそこから四つん這いになり、俺との距離が至近距離になるまで近づいてきた。


「……クロエちゃんとの関係はどうなった?」

「二人きりの時は呼び捨てで呼ぶってさ」

「ちゃんと言えたみたいね……。ステラちゃんもクロエちゃんも進んでいるようでなにより」

「むうううぅぅぅぅぅ」


 とうとう大きな声で自分の存在を主張してきた子が一人。アニメとかならワインレッドの髪が逆立っていそうだ。その子は自分の不満さを隠しもしない。

 ミレナは早々にステラと俺の間から離れた。……相変わらず早いね。それに狙ってたでしょ?


「ほら。ユートくん……」

「はいはい……ステラ、おいで?」

「………………えへへ」


 猫みたいに警戒しながら俺の所までやって来たステラは俺に抱きつくと笑みがこぼれた。二時間ほど前以上に甘えている。ついでにキスもせがまれた。






「それでねユートくん」

「何がそれで、なのか全く分からないけど……なに?」

「明日のことなんだけど……」

「ほう」

「私たち皆で特訓しようと思うの」

「俺が強くなりたいって言ったから?」

「うん。その為には適任でしょ。みんな」


 クロエは気絶から戻らず、ステラは眠ってしまい……日が暮れるのが分かる夕方ごろ。唐突にミレナから明日から訓練だ! と言われた。

 それにみんな、というのが少々引っかかるのだが。何故三人とは言わないのだろうか?


「まぁ、ミレナたちならありがたいけど……明日から?」

「うん。明日から。ダメ、だった?」

「いや、丁度いいよ。うん、ありがとう」

「だからね、その為に今日は早く寝ようと思って……」


 だから、今から寝ようってことか。俺、まだ眠くないんだけど……








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