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星降る世界で……  作者: 弓咲 岬
三章 旅をしてみよう(国内で)
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七十九話 ……ようやく、かな

 さぁ、やって来ましたヘルセテギルド支部。俺の隣にはミレナとクロエがくっ付いており、ステラはリアナと近くを歩いている。

 冒険者は女性もいるが、多くは男性――現れた美少女(ステラ)たちに目を奪われると同時に、俺の方に殺気を含んだ嫉妬を向けてくる。


「……なんかいつもより殺気強くない?」

「そう? ユートくんに夢中だからわかんない」


 腕に抱きついているミレナは笑みを浮かべて隣を歩き、反対のクロエは指を絡めて繋いでいる手を顔を赤くしながらも嬉しそうに見ている。

 傍から見れば、見せつけやがってとやさぐれるのも仕方ない。だが、と期待がない訳ではなかったらしい。


 残りのステラとリアナに視線を向けてみると――


 ステラは頻繁に俺たちを見ながら何を待っている。多分、交代の合図を狙っているんだろう。リアナはリアナで男の視線は気付いてないフリだ。


 ――巡って結果、その中心であろう俺に白羽の矢が立ったということみたいだ。


 はた迷惑極まりない。嫉妬の嵐に巻き込まれる俺も考えて欲しい。こんな中で用事を済まさないといけないんだ。精神的疲労が溜まる溜まる。

 まぁ、男衆の気持ちも分からなくはない。……だが、早く自分も恋人でも作れ! 俺はそう思う。

 出来ないという言い訳は聞かないぞ。それは単にリスクを恐れているだけだからな。


 やっとの思いでカウンターまで着くと、予め移しておいた袋からミレナたちの素材を出す。確認はステラたちだけで、俺は後ろからそれを眺めている。

 あれからね、いろいろと話し合った結果今回はなし、と言う方向に決まった。ただし、次回からは全員で山分けになった。……何でだろうね?


「……あぁ、俺たちのステラちゃんが」

「……くそっ。なんであんな男にミレナさんがっ」

「……クロエ様もダメか!」

「……リアナさんは……一切の反応がないなぁ」


 ――…………。


 何でだろう。周りの冒険者(男)どもからステラたちの名前が聞こえてくるぞ。ステラたちの名前なんて知る機会なんてなかっただろうに……。


 ――っと、危ない。ミレナ。すぐにあっちに向かおうとしない。殺気も消して。小さいからまだいいけど、君の殺気は結構怖いからね?


「……だってユートくんを」

「はいはい。落ち着こうな~」

「うぅ…………えへへ~」


 俺の悪口を言った冒険者に向かおうとしたミレナを引き寄せて頭を撫で続けると、ようやく大人しくなった。猫みたいに目を閉じて幸せそうだ。


 男たちはミレナを見て見惚れ、俺を舌打ちをするのに忙しいご様子。……依頼を受けるなり、迷宮に行くか、それとも家に戻るかしたらどう? 暇でしょ?

 別にだべってても良いと思うけど……それで俺にそう言う視線を送るのは止めて欲しい。いたたまれないから。


「お兄ちゃん! 私も私も!」

「はいよ……」


 ステラもミレナと一緒に撫でると嬉しそうに身を任せてくる。それにほこっりする男子面々。分かる。こういうステラは特に可愛い。


 ステラとミレナを構いながら嫉妬の睨みつけを耐えていると終わったらしいリアナとクロエが戻ってきた。

 来た瞬間にリアナはミレナを軽く退けてステラの反対側で腕を組んだ。……あのさ、君たちこの状況を楽しんでない?


「帰りは私とステラさんですよ?」

「仕方ない……」

「ねぇ、二人とも。周りの状況を分かった上で遊んでるよね? さらに殺気が強くなってきてるんだけど?」


 無視だ。圧倒的な無視である。二人ともこんな距離じゃ聞こえないはずがないのに聞こえていないフリをしている。そして、リアナに若干強引に連れられ俺はギルドを出て行く。最後まで殺気は消えなかったけど……。


「……ねぇ、クロエ。二人同時にユートくんに抱きつかない?」


 おいこら待て。後ろでなんでそんな物騒な話をしてるんです? 君はさらに場を混沌にしたいのかな? ん、そこのところどうかな?

 ミレナに振り向いてそう投げかけるとミレナはちょっと焦りながらも冗談よ、と返す。


 冗談でもやったらいけないだろ……俺が死ぬよ? 物理的か、精神的かどちらかは知らないけど。

 これ以上何かしてくることはないだろう、と安堵してしまったのが運の尽きだったんだろう。再び歩き始めると背中が重くなった。

 ……さっき冗談だって言ったじゃねぇか……。


「だって……」

「だって?」

「ん~内緒!」


 ニッコリ笑顔を浮かべるミレナ。その後ろの男性陣も全員が笑顔だ。ただし、額に青筋浮かべてるが。

 いや、本当今回はすいません。完全に見せつけでした。皆さんのお怒りはご尤もです。……だが、甘んじて受ける訳にはいかないのでさようなら!


 気配を消してすすすっとギルドを後にした。最後にチラリと後ろを見てみたんだが、物凄い怖い顔をした人たちが数人、ギロリと音がしそうなくらいで辺りを睨んでいた。






 それで俺たちは宿部屋まで戻ってきた。今はステラたちによってベットに横にさせられている。リアナはベットの端で腰掛けて寛いでいた。

 ステラたちはと言うと少し眠たそうだ。ステラなんて半分目を閉じて俺の上でとろんとしている。


「……ミレナ寝るのは良いんけどさ、その前に装備一式を置いといてくれない?」

「ん~? 分かった~」


 俺も手伝うために一度ステラを降ろす。少し抵抗してきたが、説明して納得してもらった。クロエも同様だ。


 俺の槍などの武器や防具を出してもらって壁に立て掛けておく。回復薬系は……後で買えばいいし。一応はこれでいいかな。

 ミレナにお礼を言って、ベットに連れて行く。数分程度だが大分目が閉じていて、終わると同時にふらっと身体を預けてきたのだ。


 ベットにミレナを横にさせると三人川の字になった。少し面倒を見ているとすぅすぅと三人から寝息が聞こえてくる。そこでリアナから声をかけられた。


「それでユートさんは何を企みで?」

「何も企んでないけど」


 ふふっと不敵に笑うリアナはまるで「分かっていますよ?」と言っているようだ。さてさて……一体何を分かっているんだろうか?


「このあと恒常の試練に行くおつもりでしょう?」

「……なぜ分かったし」

「いえ……武器や防具を取り出したら誰でも気付きますよ、普通。皆さんは信じ切って、眠そうなのでそこまで行ってなかったみたいですが」


 まぁね。この中じゃ気付かない方がおかしいかも? ……勿論、一人で行くよ? 誰かに支援されて、なんて意味がないからね。それ以前にステラたちの誰か一人とでも一緒だと、俺が行く意味が無いんだよね……。

 ステラたちのやる気……とかではなく、俺が成長できないという意味で。この町にはバルガーなんていないんだし。……彼はステラたちにもいい相手だけどね。

 ミレナ、ステラ、クロエの順に髪を撫でると三人はくすぐったそうに身を捩る。


「皆さんがまた大変なことになりますよ?」

「それは……リアナの方で説明しといて。暴走しないように」

「これはまた大変な仕事を頼まれましたね……」


 言いながら実にいい笑顔を見せるリアナ。まぁ、仕方ない。俺が一人で行く以上誰かに説明役は頼むしかないし、それがリアナなら対価を払え、なんて分かり切っていることだし。

 で、なにを要求するのか聞いてみる。リアナはちょっと驚いているが、時間は有限なんだよ? その中で出来るだけ頑張りたいし。


「じゃあ……こちらへ」


 リアナはそう言って自分の隣を指定した。俺がそこに座ると膝の上に乗ってきて、後ろから抱きしめる様に、との指令が出た。

 リアナの要望通り、腕の外から抱きしめるとリアナは身体を丸くして体重を預けてくる。主にステラが良くやることだな。リアナの手は俺の腕を掴んでいる。


「ふふっ。……やはりいいですね。抱きしめてもらうのは。なんだか温かくなってきます」

「そうですか。満足なら何よりだ」

「こういう事ってあまり経験がなくて……」

「恋人的な感じ?」

「そうです。心がぽかぽかしてくる感覚……皆さんが病みつきなのも分かります」


 病みつきかどうかは置いといて……確かによく求められたりするな。その度に全員でローテーションを組んでるのをよく見る。で、抱きしめると満足そうにするんだ。離れる時も名残惜しそうにしてるし。

 数分ほどやっていると満足したようでリアナは自主的に離れた。


「では、お一人で頑張ってくださいね」

「じゃあ、ステラたちの事は頼んだ。説明よろしく」


 手早く装備を整え、俺は部屋を出て行く。……さぁて、どれくらい潜っていられるかな? 時間的には昼過ぎだし、最悪陽が落ちるくらいには帰ってこようか。遅すぎれば前回の二の舞になりかねないしな。

 その前にステラたちが介入してくる可能性もなくはないが……




 まぁ、ヘルセテにいる限りは誰かの介入はそうないだろう。ヘルセテにある恒常の試練は実力によって入る階層が違うからな。ステラたちが来たくても来れまい。

 問題はその前に止められる可能性があることだが……楽観的にいこう。そうしよう。邪魔は入らない。


 楽観的になったお陰(?)かどうかは知らないが、無事迷宮内に入ることが出来た。階層は……十八。ま、こんなものだろう。

 多少防御に自信はあるけど、総合的に見ればおおよそ間違ってない。いやぁ、実力以上の階層に行くなくて良かった。


 道に沿って歩き始めるとすぐにガシャンッガシャンッ! と煩い音が聞こえてきた。音の方向にはリューアで見た時のような全身が黒い兵士っぽい魔物、黒兵だ。

 ……ミレナと来た時にも似たような奴がいたんだけど、雰囲気がね全然違うんだ。殺気とかがさ、強いの。こいつよりも圧倒的に。


 改めてミレナたちの非常識を頭の隅で再理解しながら槍を構える。黒兵も剣と盾を構え――斬りかかってきた。

 槍の範囲を意識しながら穂先を動かして剣を受け流す。次に横凪に振ると黒兵は盾で防御して受け流された。……本能でしか動いてないらしいけどしっかりしてるよね。彼女たちが相手ならそれすら出来ないけど。


 二度目の上段斬りを避けて、攻撃を与える。次は当たったが、少し狙いが悪く浅く斬りつけるだけだった。そして、三度目の黒兵の斬撃……どうやら動きは単調みたいだ。斬るか、受け流すか、の二択だけらしい。

 三度目は刃先を籠手の部分に強く当て剣を弾く。そこから一歩踏み出して黒兵の首を斬り落とした。


「……ふぅ」


 思ったよりは弱かったかな。まぁ、ステラたちとか高難度の魔物を相手取ればこれくらいなら誰でも出来るか。

 さっきの攻撃なら余裕で避けて、隙があったら抱きついて来るからね。……ステラの場合。


 黒兵から欠片を取って、道の端に退けておく。……さて、難度はそこそこのようですし、十八階層なら確かボスはいなかった。取り敢えず一層クリアしてみるか。








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