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星降る世界で……  作者: 弓咲 岬
三章 旅をしてみよう(国内で)
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七十話 ……なんか可哀そうだった

 ようやくミレナと迷宮の中に入る。迷宮内は思った以上に暗い。戦闘をしようものなら光源の二つや三つは欲しいところだ。

 ……普通ならな。だってミレナがいたらそんな心配はまったく必要ない。今だって初めて見た魔物を瞬殺してたし。入って早々表れた魔物は即退場となった。リューアの黒騎士以上に強そうだったんだけど。

 …………ここ何階層?


「……あったよ、百二十七階層」


 俺たちのすぐ横の壁にご丁寧にこの階層の層だと思われる。百二十七かぁ……最初の到達点が既に公式の歴代記録を抜いてるよ。バレたら絶対面倒なことになる。しかもここに来た原因は完全にミレナだし、それだけ強いってことなんだろう。

 俺のみだったら一体どこまでなのか……おおよそ想像できる。


「わぁ、この迷宮の新記録更新だね」

「……そうだね」


 そんなことを言うミレナは気づいてるのか? あなたが瞬殺できたってことはこの層は既に相手にならない訳で、恐らくこの層が一番下だってことに。要するにこの迷宮のあなたたちの適性よりも低いってことに。

 ミレナが気づいていないはずないんだけど……なんか三人に勝てない理由がなんとなく分かったよ。もし俺の考えてることが合ってたらな。間違ってる方の可能性が低いって考えてる時点でおかしな話でもある。


 ミレナと腕を組んで迷宮内を進む。やってくる魔物は全てミレナが瞬殺していって、俺はその欠片を集めることくらい。俺、完全に要らない子である。


「なぁ、ミレナさんや」

「なぁに、ユートくん?」


 あれ? 聞きたいことがあったのにそれ以上の脅威をこの子から感じる。……なんでそんなに声が甘いんでしょうか? ここ迷宮なのにミレナの表情に赤みがさしてるのが暗くても分かる。

 ……命の危機とは違う意味で俺の中の警鐘がガンガン鳴っている。


「この階層が一番下の階層だって可能性にお気づきで?」

「もちろん気づいてるよ。ユートくんの手を借りるまでもないもん。……二人っきり、楽しみましょ?」


 俺の右腕はミレナに取られ、逃げる事も出来ない。……これが詰みってやつか。ミレナから逃げることなんて不可能だし、仮に出来たとしてもこの階層じゃ、俺は手も足も出ない。

 まさかそれが目的だったんじゃ……


「気づかれちゃった」

「うわぁ……」


 この子、自分が今凄いことを言ってる自覚があるんだろうか? 暗に逃がさないというよりもずっと一緒にここで、って言ってるようなものなんだが。

 ここにきてヤンさん発動? なんてタイミングの悪い……


「流石にずっとここは嫌だな」

「今は心を読まないでくれ……」


 ずっとここは嫌だ、とは言っているが離れる気も逃がす気もないらしい。知ってはいるけど、改めて聞くと……一瞬恐怖を感じるよ。そこまで一途過ぎるとね。

 まぁ、受け入れちゃった以上それも覚悟の上だけどさ。世界超えてまでアピールとかもうそこで分かるからね。


 その当人はより腕にくっ付いたら俺に足払いをして、地面に倒した。そして、その上でマウントを取る。……あのさ、ここ迷宮。宿の一室じゃないんだよ。いや、どちらにしても問題なんだけどね。

 驚き? ははっ。こんなこと、され過ぎて最早驚きすらしないわ。


「ミレナ。ここ迷宮。流石に不味い」

「大丈夫。邪魔が入らないように空間で遮ってあるから」


 マウントの状態から倒れ掛かってきて、俺の至近距離で止まる。俺とミレナの顔の間は五センチもない。ミレナは蠱惑的な笑みで誘惑しに来ているらしい。俺の場合、耐性があるので平気ですが。

 平均的な男なら全員落ちてるんじゃなかろうか。


「こんな面倒くさい私でも見捨てたりしない?」

「しないって。そもそも嫌だったら二人で行く事にも了承してないだろ。俺以外の二人とか、一人で行く事も出来るし」


 恐らくミレナかステラなら一人で攻略できたと思う。なのに一緒にいること自体が答えだと思うが、どう思うかはそれぞれ。必要なら言ってもいいが……恥ずかしいので言いたくはない。


「……私ね、ユートくんが大好き。愛してる」

「そうかい」

「ユートくんは?」

「……」

「もぅ……」


 そう言いながらも普通にキスしてくる。実はちょっと身体が痛いんだが、そこは我慢しよう。男としては最低限必要なことだろうから。


 ミレナが一度離れて視線で何かを問いかけてくるのは分かり切っていたので、離す途中に抱きしめて押さえて続行させた。そこから少し離れたり合わせたりを繰り返すこと数分。

少し荒い息を吐きながらのミレナがやばい感じになったので解放した。それでもミレナは抱きついたままだ。


「さっきの返事としてはいかがでしょう?」

「んふふ、大満足。このまま」

「抱かないよ」

「ここを攻略し終えたら」

「早く眠りたいかな」


 口では文句を言ってるが表情は蕩けているので問題はないだろう。だけど、そろそろ離れてくれない? それとここ迷宮。速く攻略し終えたいんだけど。ミレナさん、あなたなら簡単にできるでしょ?


「せっかくの二人っきりなのに……」

「せめて迷宮外にしてください」

「後日、デートしてくれるもんね?」


 了承の代わりに頭を撫でると嬉しそうに目を細めて、ようやく離れた。ふぅ、これでようやく進める。

 立ち上がって周りを見てみても魔物一匹すら見えない。この人、相変わらずこういう所に全力を注ぐよね。無駄な努力だと思うんだ。俺としては。ミレナにとっては大事なんだろうけどね。


 ミレナは俺と腕を組んでしなだれかかってくる。傍から見れば単なるバカップルにしか見えないと思う。ただし、場所が迷宮内という時点で前提からおかしいが。




 さぁ、時は進んでこの階層も終盤だ。進んだと言っても二十分ほどだけどね。目の前には大きな扉。どうみてもボス部屋である。リューアの時でも見た。

 ここに来るまでには一分かからないペースで魔物が表れたんだが、ミレナが瞬殺。俺に至っては欠片を集める係みたいなのになっている。本当は壁役なんだけどね。最近は皆の火力が異常すぎて壁をする必要すらないのだ。

 証拠に相当数の魔物と連戦し続けたはずなのに、今のミレナはぴんぴんしている。魔力消費による疲労の影すら見えない。


「もうすぐ終わりだね……」

「そこ、残念そうにしない。普通は攻略が終わるのなら喜ぶところでしょうが」


 この子の価値観が相当ズレている。普通なら、そもそもこの階層に来た時点でテンションはダダ下がりのはずなのだ。出会う出会う魔物は今までの中でも最高クラスに強いし。範囲も無駄に広いし。

 なのにこの子、喜んでるからね? 一緒にいられる時間が増えた! って喜んでたからね? なんかね、違う意味で疲れてきてるんだ。


 まぁ、毎度のことながら考えてもしょうがないので、さっさと終わりにしよう。……言ってることが自分でもおかしいことくらいは分かる。

 扉を開けて大広場に入ると奥には大剣を携えた黒色の騎士と、大盾を構えた黒色の騎士が二人。その取り巻きに兵士が十人ほど。全員が勿論黒い。


「えいっ」


 ミレナのたった一言でその取り巻きが全員、真っ二つにされた。次には大きな欠片を残して身体は地面に消えていった。……迷宮感が台無しだ。流石にここまで来るとちょっと迷宮の方に憐れみを覚えてくる。

 しかも、二人の騎士はまだ何もしていない。叫ぶことすらさせて貰えなかったのだ。俺は魔物たちが不憫に思えてならない。本来ならこの難易度であの数は相当厄介な相手なはずだが、今までと同様瞬殺……流石にね。


 流石のボス騎士二人も戸惑ってらっしゃる。魔物とはいえ当たり前の反応だな。これは誰でも「へ?」の一言だよ。


 数秒の硬直のうち、それが解けた騎士たちは若干やけくそ感を出しながらもものすごい勢いで迫って来た。まずは大盾が攻撃を弾きながら圧死させてくる。例えそれを避けたとしても大剣が襲い掛かって来るので本来は厄介――なのだが、実際は。


「やぁ」


 再び一言。大盾が四つに切り裂かれ、それを持っていた騎士は再び硬直。その次では行動すらさせて貰えず絶命。大剣持ちは腕ごと剣を落とされ、やはりこちらも絶命。この迷宮の(恐らく)最後のボスとしては悲しすぎる最後であった。

 リューアの時でもこんな悲しいことはなかった。まぁ、俺たちが傷一つないことは素晴らしいことなんだが……


 騎士たちが絶命したところに取り巻き以上の大きさの欠片があり、それがすべてを物語っているように見える。


「終わったよ」

「そうだね……体調とか悪くなってない?」

「……流石にちょっと魔力を使いすぎたかな? 思ったよりも強くて」


 ミレナ曰く、前の迷宮での失態を繰り返さないための過剰火力だったそうだ。リューアで、俺が怪我したのがかなり応えたらしい。にしたってオーバーキル過ぎる気もしなくはないが……。

 少しふらつくミレナを抱きとめて腰を下ろす。そのミレナは俺の上に座って甘えている。とてもボスを倒したとは思えない疲労の少なさだ。


「なぁ、ミレナ」

「なに、ユートくん?」

「ミレナのステータスを見せてくれないか? どれくらい強くなったのか気になってさ」

「いいよ~」


 で見せて貰ったのだが――うん、やっぱり相当あがってるね。レベルも能力値も。この間にどれくらい頑張ったのか聞くはないけど、相当頑張ったんだろうなぁ。ま、そこは良しとしよう。出来るならばこれからは是非、俺にもその機会が欲しいものだ。

 だが、一つとても気になる文字があった。スキルに記入されているんだが、本能が理解したくないと警鐘を鳴らしているその名前は――


「ミレナさんよ、この『愛情増幅』ってなに?」


 愛情増幅ってなによ!? 愛情でなにが増幅すんの? というかそんなスキル存在してたの? それとどうやって手に入れたのさ! 知っても手に入れる気はないけども!


 この意味不明のスキルのせいで内心驚きまくりだが、話を聞かないと事の解決はしない。なので落ち着きを取り戻してから聞いてみた。

 ミレナが言うには、


 リューアにいた時にいつの間にか得ていたらしい。なのでどうやって習得したのかは分からない。効果は自分の好きな相手と愛情を交換することで自身の一割から二割の能力値を現在のに上乗せするそうだ。

 効果は半日。それと上乗せの制限とかはなく、一つの愛情交換につき、適用されるそうだ。また、上乗せがすべて切れた状態で大きな時間が空くとその時間に応じて能力値が下がっていく。



 ―――控えめに言ってチートすぎるスキルだ。上乗せができるのでも今のミレナじゃ、規格外なのにその制限がない。ということは何重にも掛けることで自身の何倍ものステータスにもなる。

 一つ辺りの効果時間も半日と長いのがこれまたおかしい。つまり、ミレナは常時化け物じみた強さを持っているのと同じことである。

 唯一の救いはスキルのデメリットが大きい、ということだろうか。デメリットに救いを求めてる時点で大概を過ぎてるんだが……


「チートすぎない?」

「お陰でユートくんを守れるんだよ? それにステラちゃんとクロエちゃんも同じスキルを持ってるからね」


 予想してたんだがチートな子たちがさらにチートになった。もう、何がなんだが滅茶苦茶だ。集めちゃダメでしょ、強大すぎる力を一か所に集めちゃ。


「ミレナたちなら心配はないけど……悪用しないでくれよ?」

「ユートくんを守る以外で使わないよ。ユートくん第一なのを忘れた?」


 まぁ一応、ね。それにしても……俺、もっと要らない子になったじゃん。俺自身にはそんなチート一つもないのに。








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