表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星降る世界で……  作者: 弓咲 岬
三章 旅をしてみよう(国内で)
66/86

六十五話 んー……どうしよっか?

最後の方、少し残酷な描写があります。

 朝日が差したことで目が覚めたのはいいんだが、毎度いつものことながらミレナが俺をのぞき込んでいた。目が合うとにっこり微笑まれる。


「おはようユートくん」

「おはよう」


 挨拶を返すとミレナはまた微笑んで自らの綺麗な銀髪をこっちに押し付けてくる。……あのねぇ、あなた寝ぐせとかないじゃん。ステラと違ってさ。既に整えて来てるよね? 朝日に反射してキラキラしてるし。直すところはないよね? 普通に綺麗だよ。


「いいじゃない。どうせステラちゃんとクロエちゃんには後でするんでしょ?」

「……ならせめて整えてない状態でいてくれないか? もう直すところはないよね? それにこれって手櫛だから、髪へのダメージは大きいと思うよ」

「いいのいいの。ユートくんにされるの気持ちいいんだから」


 俺の手を自分の頭の上に乗せて早く早く、とせがんでくる。仕方なく髪を梳くとミレナは気持ち良さそうにしてリラックスする。だが、俺は知っている。髪を整えてない時にするとこれ以上の反応になるのを。……まぁそれも数回程度だけど。

 それにこれの理由の大半もスキンシップとかそんなところだろう。ミレナなら口実としてたった今使ったところだし。


「だってユートくん自分から触ってくれることってあんまりないじゃない。これはその大事な機会の一つなの」


 梳き終わったくらいにミレナがすこし膨れた顔でそう言った。私的な部屋ではちゃんと答えてあげてるんだからそれでいいだろう? 自分からするのは恥ずかしいんだよ。


「ユートくんから、して欲しいの。私たちが、じゃなくて」

「ふぅん……こういう感じで?」

「んぅっ!?」


 至近距離にあったミレナにキスすると一瞬驚いた後、顔が赤くなっていった。唇を放すと余計に赤くなっていったので続けてする。ミレナが恥ずかしがるのも中々ないのでこの際に見ておこう。

 逃げようとするミレナの頭を押さえて二度、三度とキスを続ける。それが十回、二十回となるとだんだんミレナの顔が蕩けてきて、甘えるようにおねだりしてきた。

 それも終わらせて、唇を放すとちょっとぼーっと空中を見つめるミレナ。頭を撫でるとすりすりとすり寄ってきた。


「どうだった?」

「……これがいい。毎日して」

「それはちょっと……」


 ミレナは逃げようと思えば最初から逃げれたので未だ照れているとは言っても表情自体は満足そうだ。だけど毎日は勘弁してほしい。俺が持たない。

 ……それでいい加減後ろの人はどうしようかな?


「……ふふん、どう?」

「煽るな煽るな」


 勝ち誇った顔でリアナを見るミレナ。軽くチョップをすると全く反省してない顔でリアナに謝ったあと、今度は口には出さず同じことをしている。

 対するリアナは羨ましそうな目を向けて、首を振る、を何回か繰り返してようやく落ち着いた。……そこまで誘惑される内容なのか、俺には全く理解できない。


「………………今回はこれで我慢します。一緒に寝れただけでも収穫ですから」

「少しは元気になったようね。いつでも待ってるわ」

「それ、多分俺のセリフだよな……」


 何故かミレナとリアナがバチバチと火花を飛ばしてるんだが、違うような気がする。リアナの要件って俺だからね。ミレナじゃないからね。

 なんかライバル感を出してるけど当事者の一人が空気っていうのもおかしな話である。


 リアナは一度自分の家に帰るため最後に俺にウィンクして部屋を出ていった。ミレナはリアナが出ていったあと、俺を膝枕して眺めている。ステラとクロエは相変わらず寝たままだ。そろそろ起きてくると思うけど。


「……んぅ」

「お、起きたかな」


 両側がもぞもぞと動いた。左側から誰かが昇ってくると俺の顔の手前で目が合った。


「おはよう、お兄ちゃん」

「……うん、おはよう。ところで何で頭を固定してるのかな?」

「えへへ~」


 起きてきたステラが俺の頭を両手で掴んで笑う。俺にはなぜ頭を掴んだのか、そしてなぜえへへ~と笑っているのか分からない。

 結局俺の質問には答えてもらえず寝起きのキスをされた。頭を固定していた手も首の後ろで結ばれている。満足したあとは抱きついてきて離れない。

 ステラを抱えた状態で起き上がるとクロエが待ての状態で座っていた。


「おはよう、クロエ」

「おはよう、ございます」


 挨拶を交わすとちょっと顔を赤くしながらも寄って来て、俺の手を自分の頭に置いた。髪を梳くと気持ち良さそうに目を細めている。

 ステラは抱きついて離れないのでそのまま梳いている。時々声が漏れているが……聞こえない。俺は聞こえない。


 髪を梳き終わると二人とも少し名残惜しそうにしながらも離れた。ベットから降りて二人とも着替えに行く。俺も反対側の自分の荷物があるところに行きたいのだが……そろそろ離れてくれませんかね、ミレナさん? 私ね、彼女らの着替えを見たいわけじゃないんだ。

 二人の髪を梳いてる間に後ろから抱きついてきたミレナが離れてくれないので方向転換すらできない。このままじゃ、ステラとクロエの着替えを見てしまう。見る気さらさらないのに……。


「この際に二人の成長を見ておくのもいいんじゃない?」

「いやいや結構です。というか普通、嫌がるところだよね? ミレナもステラたちもさ」


 ミレナの言葉を聞いてステラがばっと振り向いて、期待した目を送ってくるが立場、普通反対だからね。男子が女子にお願いするならありえるけどさ。逆はないでしょ。たとえ恋人でも。よっぽどのバカップルじゃなきゃ。

 クロエもクロエで顔を赤くさせながらも振り返る。……恥ずかしいなら、止めておきなさい。


 俺の胸の前で結ばれている手をタップすると渋々ながらもミレナが放してくれた。……あれ、おかしいな。自分の言ってることに違和感を感じる。というか何故俺が感謝せねばならんのだ。


 悶々としながらも取り敢えず外出用の服に着替える。といっても動きやすいやつだけど。ちなみに今日は迷宮に行かない。昨日行ったから、ではなく、ミレナたち全員から「デート!」と無言で迫られているからだ。

 理由はなんとなくわかる。昨日はリアナがいたからだろうと思う。ステラとクロエなんて夕食の後は俺の側から一切離れなかったしな。


 着替えを終えて朝食を食べたら一度部屋に戻ってきて、順番はどうするかを三人で決める。俺は窓から晴れた青空を見ている。

 どうせ、この後は三連続で色々と嫉妬の視線やら殺気の視線、好奇の視線を向けられるのだ。慣れてきたからとはいえ、出来ればそんな視線を受けたくはない。心を落ち着かせるという意味もあるが、殆どは恒例の現実逃避だ。

 でもね、逃避っていいんだ。今ある問題を隅に置けるから。一時的にでもそうしないとね、疲れちゃうの。本人たちが知ったら絶対遠慮するようになるのでそんな素振りは見せないけど。


「……で、順番はどうなった?」

「……私です」

「私よ」

「私っ!」


 順番にクロエ、ミレナ、ステラ。皆言ってることが同じなので文章にしたらはぁ? って感じになるな。


 一番手のクロエが手を握ってくると遠慮がちに行こう、と言ってくる。その前にルールを聞いておく。今日一日で三人とするのでどういう感じなのか知っておかないといけない。

 え~っと、午前中、午後、昼ご飯の三つで進んでいく、と。昼ご飯の場所はリアナと行った憩いの空間。


 あそこで食事をするのが一番良かったらしく、その言葉が出てきた時にミレナは嬉しそうに、ステラとクロエはちょっと悔しそうだった。クロエとは手を握っているために余計にその心情が手の震えで伝わってくる。

 クロエとのデートが終わったら憩いの空間に行くことを確認したら出発だ。珍しくクロエが積極的に進んでいる。まぁ……今の時間を精一杯楽しもう、ってことなんだろうな。


 宿を出ると早速腕を組んできて、ぐいぐい引っ張ってくる。……そんなに焦ってもしょうがないだろう、というかなんでそんなに急いでるんだ?


「おーい、クロエ」

「なんでしょうか?」

「なにか急ぐことでもあるのか?」

「っ!?」


 ようやく自分が急いでいたことに気づいたらしい。立ち止まったクロエは恥ずかしそうに顔を赤くさせた。

 ちなみにクロエが驚いてから顔を赤くさせるまでの流れを一部でも見た男性は固まっていた。俺に気づいてないところからすると見惚れてたんだろう。


「で、どうした?」

「うぅ…………」


 顔を隠してしまうくらいに恥ずかしいようで答えてくれない。正常に戻った奴らから殺気をぶつけられるのも困るので比較的ゆっくりとした足取りで先を進む。クロエは引っ付きながらもちゃんと付いてきた。




 しばらく歩き、落ち着いて調子を取り戻したクロエは少し照れ笑いを浮かべた。そんなクロエといろいろな種類の店、屋台がある通りまでやって来た。

 もともとゆっくりだった歩調がさらにゆっくりになったのでここに決めたようだ。


 わいわいとうるさい店員と客の交渉を聞きながらウィンドウショッピングをする。アクセサリーや古着を見ながらクロエは楽しそうだ。

 その光景に笑みがこぼれるのは俺だけじゃない。だが……でれぇ、といった感じの奴は即刻退席してもらいたい。クロエが怖がるだろ?


 ウィンドウショッピングを続けていると小腹が空いてきた。丁度広場の前まで来たので、クロエの分も含めて買ってくることにした。……おお、普通のデートっぽいぞ。今までは非常に人目を集めたり、絡まれたりして大変だったし。


 軽くつまめそうな物を買ってクロエがいる広場に戻ってみると…………絡まれてた。うん、自分で建てたなこの野郎! と怒りたい気分だ。まぁ、実際はそんな場合じゃなく、数人の男に囲まれたクロエが迷惑そうにしている。

 しかも、その男達は下品な感じじゃなく、上品な感じで顔の造りも良い部類だろう。つまり一般的なイケメンという奴だ。

 こういう時には切実に火属性の魔法が使えればと思う。顔面を火傷させてやるのに。


「はいはーい、どいてどいて」

「……なんですか、あなたは?」

「彼女の連れですかなにか?」


 気障っぽい感じの男を退けてクロエのところまで来る。持ってきた食べ物はバックの中に入れて、向けられた質問に答える。

 クロエが俺の後ろに来るが……普通に考えても俺が割って入る必要はないんだけどね。クロエ一人で倒せるから。この町じゃ、クロエ以上はいないんじゃないかな。同じくらいはいたとしても。


「あなたが? 冗談でしょう?」

「今の状況を考えれば一目瞭然だと思いますが?」


 俺の後ろにいるクロエを囲むように数人の男がいて、俺はクロエからそれを阻止してるこの状態……誰がどう見ても悪は男達の方である。

 ただ、周りはそれを面白がるように野次馬化してるだけで、助ける気はないらしい。まぁ、必要ないけどね。


「君も自分の立場を考えたらどうですか? 分不相応だと気が付かないのでしょうか?」


 ……おおぅ、ダメだ。話が通じねぇ。今の状況をどう解釈したら……そもそも話が通じてないんだ。俺の言葉なんて聞いてないんだろうな。

 じゃ、俺も俺で好きにさせてもらおう。どうせ、好きにさせてもらうことになるんだけど。


「……ごめんな」

「ユート様が謝ることでは……いえ、ハグしてください」

「了解」


 クロエは図太くもハグを要求してきた。……クロエも成長してきているようで、俺は心強いよ。


 後ろからさっきの男の声が聞こえるがそっちが話を聞いてないので俺も話を聞かない。クロエを抱きしめるとクロエも返してきた。更に後ろから囃し立てる声が聞こえるがまぁ……今は無視しよう。


 クロエを放すとさっきまでの迷惑そうな顔じゃなく、笑顔でニコニコしている。機嫌が直ったようでなによ――ザクッ。


「……んん?」


 感覚に従って下を見ると俺の左胸辺りに細剣のような形の剣が突き刺さっていた。……ふんふん。なるほどぅ? 俺を刺したというわけか。俺が話を無視し続けるし、目の前でいちゃつかれてキレたのかな?

 はっはっはっ。それ、一番の悪手なんだが指摘しない俺って嫌な奴だなぁ。まぁ、イケメン、それも性格が悪い奴に慈悲はない。


 俺が彼らに慈悲がない、のではなく、クロエがである。それが抜き取られるとクロエの表情がマイナスまで一気に落ちた。

 肺を貫かれたせいで血を吐きそうだが、今吐けばクロエに直撃なので意地でねじ伏せる。


「全く、身の程を弁えないから――」

「私の大事な人を刺しましたね?」

「ひっ!!」


 表情以上に冷たい声が彼らに降りかかる。まだ俺と顔を合わせているだけマシだが、直で見たらどうなるんだろうか? クロエは怒りに任せて激情するタイプじゃなく、冷静に罪を償わせるタイプなので俺も結構怖いんだ。


「まぁ、待てって。クロエは俺の治療に専念してもらえないか?」

「――え? ……ユート様が言うなら」

「ありがと」


 クロエに手伝ってもらって振り返るとガチガチと歯を鳴らす数人のイケメンども。さっきまでいた野次馬たちはさっと消えている。流石は野次馬。危機管理はしっかりしているみたいだ。


「『楔雪(くさびゆき)』」


 俺の血がついた細剣が白く染まっていく。それを持っている男1は離せないみたいで次第に手が白く染まり、肘まで来たところで止まった。周りの男たちは汗をかいた場所が白く染まっている。

 楔雪は液状の物質が冷たくなっていく魔法だ。通常は自分のを媒介にしないとできないが、俺の場合魔力操作系はかなり高いので他人のも使うことができる。ただ、猛烈に魔力を消費するけど。今の身体じゃ、結構キツイね。

 あ、勿論殺してないよ。そのまま細胞が壊死してしまえばいい。死ぬよりも嫌なことだと思うよ。日常生活に支障が出るし。


 クロエに支えてもらいながら宿の方向に向かう。このままじゃ、ステラたちから追撃を食らいかねん。それはなんとなく罪悪感。それに俺は満足したし、クロエには黙ってもらうので問題はない。

 それとね、クロエもすごいよ。もう傷が塞がれてるし。流れた血は戻らないけどさ。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ