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星降る世界で……  作者: 弓咲 岬
三章 旅をしてみよう(国内で)
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五十七話 ……はぁ、疲れた

こっちは二本目です。もし見てない方がいたら前の話にどうぞ。

 宿まで戻ってくるとステラたちがその前でスタンバイしており、デジャヴを感じる。……絶対見てただろ、これ。まぁ、予想通りっちゃあ、予想通りなんだけども。


「おかえり、ユートくん。どうだった?」

「どうだったって……別に何もなかったよ」

「ふぅん。ま、いいや。それより出かけましょ? 勿論、四人で」

「……はいはい」


 帰って来て早々休む暇もないまま、今度はステラたちと出かけることになった。今日の予定としては確かにあるので否定はしないんだが……せめて多少は休ませてほしかった。思った以上にリアナとの食事は疲れたので。




 三人に引っ張られるまま最初に連れていかれたのは武器屋。なんでも自分たちの武器もそろそろ寿命なので買い変えたいそうだ。

 ……一応は俺の予定通りに進めてくれるのね。


 店内に入るとクロエが店番をしている男性の方に向かっていき、なにかを軽く話すと奥から槍、片手剣、短剣、杖を持って男性がやって来た。

 ……あのさ、ミレナさん。何故クロエが少し話しただけでこうなるのかな? 俺、すごい気になるよ。


「あのね、ユートくんがあの人とご飯を食べてる間、私たちはここでどんな武器が良いか、見てたの。それでいいのがあったから、ユートくんの分も含めて買っちゃった」

「買っちゃったって……いくらだったんだ? 返すよ」

「遠慮しなくていいの。いつもお世話になってるんだから。私だってわがまま言ってる自覚はあるんだよ? それでも遠慮するなら……今すぐ帰って、ね? それでいい?」

「……ありがたく、皆の気持ちを受け取っておきます」


 ちなみに三人からもらった槍は相当高性能のもので、値段は八百万ルーツだったそうだ。金貨八枚か……そこまでした覚えはないんだけどなぁ。……愛が重い? ははっ、既に慣れたよ。


 どうやらミレナは俺がいない間にいろいろと考えてたようで、辺りを軽く見て回ったと思ったら公園のような場所に連れていかれた。

 人自体はある程度いるのだが、それほど煩くなく、穏やかな場所だった。ミレナと言い、リアナと言い、今日はそんな場所ばっかりだな。普通に嬉しいが。


「ユートくんも疲れてるでしょ? ちょっと休憩していかない?」


 とはミレナの弁だ。確かに昨日の件や今日ので疲れたのはあるんだが、別にそれ程でもないし、多少休めば抜ける。あとは戦って発散させるとか。

 遠慮するなよ、と言いかけたところでステラから指で口を塞がれた。次は腕に抱きついてきて、引っ張っていく。少し先には数人くらいなら座れるほどの草むらがある。


 その草むらまで連れて来られると先にクロエが動く。次にステラに引かれて寝転がされる。俺の頭はクロエの膝の上だ。ステラは一緒に寝転んで、抱きついている。ミレナはというと、最後に座って穏やかに見ている。


「ふふっ。ユートくん、ステラちゃんもクロエちゃんも成長してるでしょ?」

「ベクトルが違う気もするがな……」


 ステラがあんなことをしたのは今回が初めてだし、クロエは中々積極的に膝枕などはしようとしない。恥ずかしいから。成長はしてるけどベクトルがなぁ……違う気がする。

 今でもクロエは顔が赤いが、前よりはそうでもないし、ちょっとだけ母性というものを感じそうな気がする。ちなみにミレナはステラとクロエの両方が上手く出来る。この人は完璧超人なんじゃないかと、時々思う。


「もう、そんなわけないでしょ。そうだったらユートくんに泣き付くなんてすると思う?」

「そうなんだけどな。ミレナって結構何でもできるからさ、つい思っちゃうんだよ。それに頼れるし」


 ちょっとむくれたミレナも次の瞬間には機嫌がいい。そして、俺の方に近づいてきて手を握った。握る力を強くしたり弱くしたりしながら遊んでいる。クロエは俺の頭を撫でながら満足そうだし、ステラに至っては軽く船を漕いでいる。

 ……なんとも自由な光景だが、それに慣れてきている俺もなぁ。大概か。


「ねぇねぇユートくん」

「はいはい何でしょうか」

「この後はアルトネアと王都に行くんだよね?」

「そうだね」

「結婚の時期を早くに、だよね?」

「そうだね」


 思い出したように聞いてきたミレナに気分を合わせながら答える。ミレナは自分の握っていた俺の手を胸の所まで持ってきて、目を閉じる。その姿は何かを祈っているよう。


「……ようやくなんだ。ユートくんと結婚できるの。……ずっとずっと待ってた」


 言葉に物凄い思いが籠ってる。万感の思い……まさにそんな感じだ。未来の頃からずっと夢に見てたって、言ってたもんなぁ。それがあと少し。まぁ、二年くらいあるけど、それで叶うというんだ。楽しみでしょうがないんだろう。

 ミレナにちょっと手を離して貰って頭を撫でる。目を閉じて嬉しそうにする姿は年相応の少女のように感じられた。


「……俺にとって十年ちょっとだけど、ミレナにとってはその倍くらいの時間だもんなぁ。待たせて悪かった、のかな?」

「ううん。意識させたのがあの時からだもん、しょうがないよ。でも、小さい頃からの夢が叶うのは嬉しいな」

「…………ユート様ぁ」


 頭上からクロエが寂しそうな声を上げる。……あぁ、うん。二人の世界に入らないでね、と。私もいるんだよと、そういうことだね。ミレナもやっちゃった、的な感じで少し恥ずかしそうだ。

 ステラも軽く寝ているはずなのにふくれている。クロエには撫でてている手に手を重ねて、ステラは軽く頭を撫でる。


「はいはい。二人とも出会えて俺は嬉しいよ。ステラのお陰でミレナに会えたし、クロエも結構お世話になってる。本当に嬉しいよ、ホントに……なぁ……」

「ユートくん!?」

「ユート様!?」

「ん? ……あぁ、大丈夫大丈夫。ちょっと昔を思い出しただけだから」


 両親が死んだ時のことを思い出した。俺は一人っ子だったから、兄弟と呼べるものがいなくて天涯孤独だった。親戚といっても殆ど面識なんてないし不安も掛けられない。それに友人と呼べるものもいなかったから、寂しかったなぁ。

 本当、懐かしい記憶だよ。十年以上も前のことなのに、よく覚えてる。あの時の絶望感も虚無感も。そのお陰で周りとも接点を持とうとしなかったなぁ。


「もう大丈夫だよ。吹っ切れてるし、今は皆がいる。それがすごく嬉しいんだ。そういう意味では毎日感謝だよ」


 少し照れ臭かったので、早口で言ったのだが、しっかりと聞き取れてたみたいだ。二人とも顔を朱に染めてニヨニヨとしている。ステラも頬が少し赤い。……実は起きてるだろ。


「……ステラ、実は起きてるだろ」

「ええ、というか最初から寝てなかったよ。狸寝入りはしてたけどね」

「……バレちゃったぁ」

「でも、良かったねステラちゃん。ユートくんステラちゃんに会えて幸せだって」

「うんっ!」


 目をパチリと開けたステラはより強く俺に抱きついてくる。その表情は笑顔に溢れていて、幸せなんだということが一目でわかった。


 ステラが起きてる事も分かった後はウィンドウショッピングなどを主にステラたちが楽しみ、次第に今日最後の時間は近づいてきた。



 ♈♉♊♋♌♍♎♏♐♑♒♓



 すっかり日は落ち、俺たちも夕食などの事は終えた。これからあるのは今日最後の予定である、報告だ。言ってしまったことは仕方ないし、言わなかったとしてもその一年後にはどうせ同じ結果になってた。ただ、期間が早まっただけだ。


「じゃ、行ってくる」

「行ってらっしゃいお兄ちゃん、ミレナ」

「ユート様をお願いします」


 一緒に行くのはミレナなんだがクロエはちょっと心配性な所がある。ミレナといえども完璧ではないのでそこら辺は心配なようだ。それだけ好かれていると解釈しよう。俺もミレナも。


 ミレナの空間転移でまずはアルトネアの俺とステラの部屋に移動する。部屋は真っ暗だが、綺麗にされている。なんか嬉しくなってくる。


 その気持ちはひとまず仕舞って、俺はミレナを連れて二人がいると思われるリビングが寝室に向かった。二人はリビングで普通にイチャイチャしていた。その辺はまったく変わりようがない。


「あら、ユートくんにミレナちゃん。どうしたのいきなり来て」

「実は母さんと父さんに伝える事があって」

「やっとエッチなことをしたのね!」

「違うけど!?」


 相変わらずこの人の考え方は突き抜けている。そして、イチャつかせることを第一にしている。リュートさんもなんとも言えない表情だ。

 二人がやってる事も知ってるし、実は前の世界で経験してきました~なんて、今も昔も口が裂けても言えなかったけどな。


「……はぁ。まぁ、いいや。結婚の時期を一年早くする事の報告と、その準備のお願いに来たんだ」

「あぁ……それなら大丈夫。一年後でもいけるように準備はしてあるから」


 うん、この人の予想はやっぱりおかしい。普通そこまでする親はいないよ。圧倒的な資金と人脈があるからこそできる芸当だよね。


「じゃあ……エッチなことはまだしてないのね。残念だわ」

「お義母さま! 実はユートくんはですね、ある程度拠点ができたら、という前提付きではありますが、ようやく認めてくれたんです! もう嬉しくって」

「あら、そうなの! じゃあ、四人が戻ってくる頃は皆、大人の階段を上っているということね!」

「そうです!」


 ミアさんがしゅんとしたところにミレナが要らぬ爆弾を投下しやがった。この人、ごく稀にそういうのを無意識でするのだが、今回は意図してやったな。

 ミレナとミアさんがきゃあきゃあ盛り上がっている。話の内容は将来の子供の数はとか、初体験はどうだったかなどを話している。俺としては赤面ものの内容である。

 そこでリュートさんがやって来て、俺の肩を軽く叩いてくれた。俺も成長したもので、リュートさんにサムズアップで返すと互いに無言で手を握り合った。……ある意味、リュートさんと通じ合った気がした。


「じゃあ、そういうことで。他にもいかないといけない場所があるから」

「ええ。今度は結婚式で会いましょ」

「……頑張れよ」


 二人に別れを告げて今度はアルトネア伯爵の屋敷へと向かう……。


 伯爵の屋敷でも、王都の王城でも似たようなことがあったとだけ言っておこう。……くそ、面倒な事しか起こらなった。確信していたとはいえ、多少は、ナノ単位で期待はしてたのに……現実は非情であった。

 まぁ、実際は喜ばれただけなんだけどね。ただ、精神的に疲れたということで。


 ステラたちのところに戻っても甘えられっぱなしで疲労は留まるところを知らない。








読んでくれてありがとうございます。

誤字脱字、ブックマークなどよろです。

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