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星降る世界で……  作者: 弓咲 岬
三章 旅をしてみよう(国内で)
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五十六話 ……な、なんということだ

今日は二本投稿します。これは一本目です。

二本目はいつも通り21時に出します。

 目が覚めると俺の左右と上にはステラたちがくっ付いている。それはいい。何時ものことなので。だが、些か直視しづらい。何故なら全員がもれなく半裸だからである。

 下着はちゃんとつけているのだが、如何せんそれ以外はステラとミレナは着ていない。クロエですらパジャマ的なものの殆どをだけているという状態。昨夜は今日についての予定を立てたあと、三人がこの状態で迫って来たのだ。勿論性的な意味で。


 こんな美少女たちから迫られるなど普通に考えれば諸手を上げる状態……いや、俺も普通に嬉しいのだが、その前に自分で掲げたことを破り捨てることはできないので、なんとか凌いだ。

 冷静に考えてみると単なるヘタレだ、ということは何も言わないでほしい。自分でも分かっている。


 まぁ、それは置いといて。今日の予定としては昼ごろにギルド前でリアナと会って、彼女が勧める店で食事だ(デートだということはひとまずスルー)。そのあとはステラたちと俺の武器を買いにいったり、ステラたちのウィンドウショッピングに付き合ったりする(これもデートだということはスルー)。最後にアルトネアに戻って、昨日の件についてを報告。時間があれば王都にも行って報告。

 ……改めて並べてみると今日の予定、単純化した場合、全てデートであるということが分かる。ただ、その副次結果がいろいろと大変なので素直に楽しめるかどうかは脇に退けておくが。


「……おはようミレナ」

「おはよう。ユートくん」


 今日の予定を復習していると、横からチラチラと視線を感じる。視線を感じた方向を見てみると起きてたミレナが俺を見ていた。それも今の自分の姿を隠そうともせずに。むしろ、見せつけてくる。

 一つ違えば朝チュン的なシーンとなりえそうな中、ミレナは人の腕を枕にして、飽きもせずにじっと俺を見ている。実は俺が目覚めた原因もこの視線だ。いつも思うんだが、飽きないのだろうか?


「飽きないよ。というかもう習慣とか趣味みたいなものだし。ユートくんの寝顔を見るの」

「あぁ、さいですか」

「うん。さいですよ」


 ミレナは朝から大変機嫌がよろしい。原因はなんとなくわかるが言わないでおこう。

 次に俺の上とミレナの反対側から服を引っ張られる。ステラとクロエも起きてたらしい。そっちを見ると、ステラは少しむすっとしており、クロエははにかんで、自分の状態に気付いて慌てて直した。

 なんともほっこりする。ステラのも可愛いの域を出ていない。


「おはよう」

「……」

「おはよう」

「お、おはよう、ございます」


 起き上がって挨拶をするとステラは無言のまま、くっついている。クロエからは恥ずかしそうにしながらも挨拶は返してもらった。

 ステラは俺の服を掴んでコアラの子供か、と思うほどくっ付いている。このまま立ったら、本当にくっ付いていそうだ。


 ささっとミレナとクロエが離れて、俺の両手が自由になった。その両手でステラの頬を掴み、持ち上げると依然としてステラの顔はむすっとしたまま。

 俺は掴んだ頬を撫でたり、頭を撫でたりしているとふにゃぁ、と表情が崩れてだらしない顔になる。それに気付いたステラははっとして表情を戻す。が、俺もミレナたちもそれを見ているので何の意味もない。


 予想通り、拗ねてただけらしい。昨日の今日なのでまだ甘えん坊なところが抜けきれていないようだ。昨夜は三人の中で一番甘えてたのが、ステラだったからね。しかもそうなる原因が過去にあったのはステラだけだし。……ミレナ? 彼女は強いので例外。


 久しぶりに寝癖のついている髪を梳いて整えると、ステラは気持ち良さそうに目を閉じて力を抜いた。若干、声まで出ている。


「はい、綺麗になった。おはよう、ステラ」

「えへへ~。おはよ、お兄ちゃん」


 機嫌が良くなったステラはすりすりと身体を寄せてくる。十歳くらいまでは毎朝のようにしていた習慣だったが、あれ以降慌ただしくなっていたのですっかり忘れていた。

 ただ、ステラの方は覚えてたみたいですごい気持ち良さそうに、懐かしむ感じだった。ここ数年間は自分か、ミレナに直してもらってたからね。


「ユートくん今のは?」

「あぁ。アルトネアで魔物の襲撃がある前までは毎朝、こうしてステラの寝癖を直してたんだよ。日課というか習慣みたいなものでさ。だけど、あの日以降いろいろあって俺もすっかり忘れてたんだよ」

「それで今思い出したと」

「そういうこと」


 なるほど、と頷いたミレナは無言で俺に頭を向けてきた。反対側からはクロエも頭を向けている。

 話の流れを考えるまでもなく自分たちにもしろ、ということだろう。まぁ、ステラが気持ち良さそうにしていたので、興味が湧いたのかな。

 ミレナに至っては寝癖を意図的につけてるし。この人、起きた時には髪はちゃんと綺麗に整ってたからね。どんな執念だよと思う。


 二人にもさっきステラにしたように水を手に少し纏わせて髪を優しく梳く。本当は両手でした方が良いのだが、今回は面倒なので片手でやらせてもらう。

 それでも時折、二人はぴくんっと身体を震わせている。それとへなへなと身体を預けてきた。ぐでぇ~といった感じの少女があっという間に三つ出来上がった。


「はい。終わったよ。そろそろしっかりして」

「……はぁい。それにしてもユートくん、今のすっごい気持ちよかった。今度からは毎朝これをしてね」

「はいはい。仰せのままに」


 それからは服を着替えて、朝食を食べた。それで時間になるまで四人で時間を潰した。……主に三人の要望に応える感じだったが。




 そろそろ昼頃かな、という時間になりギルドへ出かけた。皆には好きにしてていい、と伝えてある。俺の予想としては監視か、三人で仲良く過ごしているの二択だ。今の状態じゃ、それ以外はあまり手を付けないと思う。


 ギルドまで来ると扉の手前でいつもと装いは違うがとても見覚えのある女性が待っていた。言うまでもなくリアナだ。

 いつもは受付嬢、という感じの服装にポニーテールなのだが、現在はその髪を一つに束ね、肩から前に出している。服もシャツにロングスカートで、上にカーディガンっぽいものを羽織っている。彼女の髪や瞳が空色なのでそれに合わせて、全体的にそれっぽい色合いでもあるのだが……気合いが入っているような気がする。


「こんにちは、リアナさん」

「ええ、こんにちは。ところでユートさん、この服似合いますか?」

「似合ってますよ。落ち着きのある大人っぽい感じがします」

「ふふっ。ありがとうございます」


 口ではそう言っているが、表情からはそこまで喜んでいるように見えない。リアナにとってはそう言われる事は当たり前か、ステラたちがいるから当たり前なのか……まぁ、どちらでもいいか。

 あくまで目標は昨日の原因を知り、その対策を取ること。少し踏み込んだら、あとが大変だ。

リアナとは軽く雑談でもしながら今回のお店へと向かう。


 そのお店は通りから少し離れて、静かな場所にあった。今日は晴れなこともあり、日の入りからリラックスできそうな雰囲気を醸し出している。客はそれほど多くは無いが、全員が一様に笑みが柔らかい。


「へぇ。とても素敵なところですね。雰囲気が気に入りました」

「そう言って貰えると誘った甲斐がありました。実は私も休日の際にはかなりの頻度で来ているんですよ。この落ち着いた空間が好きで」


 この店の名前は憩いの空間(へや)、というらしい。なんとも名前通りの店だ。今度はステラたちと来ようか。


 店内に入り、テラス席に移動した。俺とリアナが座ったところでウェイトレスらしき男性がやって来て、注文を聞きに来た。

 俺がシチューとパンのセットを頼むとリアナも同じメニューと頼んだ。なんでもこの店のイチ押しらしい。……まぁ、確かに書いてたからな。イチ押しって。選んだのもそれが理由だし。


「では、料理が来るまで軽いお話でもしましょうか」

「そうですね」

「それでは……昨日、三人の少女と一緒にいましたよね。彼女達との関係性はいかがなのでしょう」

「簡単ですよ。彼女たちとは婚約者同士です」

「三人とですか。中々にモテるのですね」

「ええ。運が良いですよ。彼女たちから好意を持たれて私も幸せです」


 といった感じでしばらく話をしていると料理がやって来た。シチューはスープの色が綺麗で、具もいろんな種類があり、美味しそうだ。パンや一緒にあるサラダも全体的に優しそうで流石は名前に“憩い”とつけるだけある。


 それで実際に食べてみると見た目通りに美味い。シチューもパンも、サラダも優しい味がして、流石の一言だ。そして、これが銅貨七枚、七百ルーツだというのだから、大変リーズナブルである。

 俺もリアナも料理に一通り舌鼓を打ったら、本題に入る。


「私はこの街で働いて三年ほどですが、ユートさんのように初日で下層をクリアしたのはユートさんも含めて五組ほどです。その中で最年少なのはユート様です。どうしてそこまでお強いのでしょうか?」

「そうですね……もぐ……別に……んぐっ……私は……はむはむ……強く」

「食べるか話すかどちらかにしてください」

「この店の料理がおいしいので、つい。……あ、すいませーん。シチューのおかわりを頼めますか」


 少しリアナがプルプルと震えているのだが、まぁ大目に見てほしい。本当に美味しいのだから。確かにイラつくとは思うが、俺も飲み込まれる訳にはいかない。そういう意味では敢えてしている面もある。

 ステラたちとリアナで言えば、ステラたち>リアナなのである。


「失礼しました。……簡単な話ですよ。あの場所を攻略できたのは私の婚約者たちのお陰です。彼女たちの強さは圧倒的ですから」

「ということは貴方は弱い、と?」

「そうですよ。私はリアナさんが思うような強さは持ち合わせていません」


 そこで何故か腕を組んで長考に入るリアナ。なんとも不思議なことだ。俺に抱いた興味もこれを機になくなってくれるとありがたい。

 俺の方はやってきたシチューを楽しみながらリアナの行動を確認している。傍から見ればおかしな構造になっていると思うけど。


「では……なぜ、私と婚約者さん達とでは口調が全然違うのでしょうか?」

「リアナさんに礼を欠いては失礼でしょう? それに彼女たちとは気楽に付き合える友人としても見ていますので」

「ということは私もその中に入ればその口調も正して頂けると」

「いえいえ、まだ会って数回程度なのにそれはおかしな話ですよ。それにリアナさんにはもっと素敵な相手がいるでしょう?」


 長考から抜けたリアナの雰囲気がちょっと面倒なことになりそうだったので、即座に彼女の言葉には否定させてもらった。まぁ、天然も多少は入っているので、俺の遠回しの拒否を受け入れてくれるかどうか……。


「残念ながらそういう相手はいないのですよ。狙ったとしても既にお相手がいる状態の方ばかりで」

「それは私も含めて、という意味ですよね?」

「いえ、ユートさんを含めずにという意味ですよ」

「私にも相手がいることはご存知でしょう?」

「そろそろ私も相手を見つけないと……二十になろうかという年なので」

「では、年下の私をからかっているのでしょうか?」

「いえ、結構真面目ですよ」


 ギルド職員として三年も勤めているお陰で全くと言って良い程、表情が崩れない。もしかしたらあの雰囲気も意図的なものかも知れないな……だとしたら掌で踊らされている気しかしないが。

 何故そこまでして俺を狙うのか。会ってまだ三回で、歳も下だというのに。それに怒られるのは俺なんだ。


「では、私からも聞いていいでしょうか?」

「ええ、構いませんよ」

「……昨日、敢えて私にああいう事を言いましたよね? あの雰囲気になることを確信して」

「はい。鋭いですね」

「その前にも私を恨みの籠もった目で見ていましたよね。何故ですか?」

「婚約者さん達が羨ましくて……嫉妬してしまいました」


 ……この先は自爆にしかならないので言わないが……嫉妬ですか、そうですか。たんなる個人的感情で俺は昨日をあんな目に遭ったと。はた迷惑な話である。


「ということで私とも結婚を前提に付き合てくれませんか?」

「遠慮します」

「ええっ!?」


 ……あれ? さっきよりも明らかに表情が崩れてる。そこまで驚くことか? まぁ、遠慮する理由としては話の脈絡がない、俺にその気がない、あとでステラたちに説教を受ける、俺には役不足である、の主に四つの点だが。それだけでも十分だろう?

 あぁ、最後にもう一つ。これ以上男から殺気の視線を増やしたくない。


「……その理由をお聞きしても?」

「良いですよ。まず、話の脈絡がありません。次に私にその気がない、三つ目にあとで彼女たちにお叱りを受けてしまいます。四つとして私には役不足だ、最後に……同性からこれ以上殺気が増えて欲しくないんですよ」

「……そうですか」


 なんかしゅん、となったリアナはすぐにどよーんという感じで、傍から見ても落ち込んでいるのが丸分かりだ。

 この店ではリアナだけがそれを与えているので周りからは俺が非難の目で見られている気がしなくもない。


「あの、今日はこの辺で解散にしませんか?」

「……そう、ですね。その方がよさそうです」

「今日はありがとうございました。それに私の急なことにもちゃんと答えてくれて嬉しかったですよ」

「いえいえ。それには断ることになりましたが、勇気自体は尊敬する点なので、こちらもしっかりと応えた方が良いと思っただけです」


 という会話で締めくくって、憩いの空間へやをあとにした。……なんだか、嫌な予感がずっと付きまとっているが。

 なんとなく直観的に諦めてくれそうにない感じが……止めとこう。本当にそうなってしまいそうだ。








読んでくれてありがとうございます。

誤字脱字、ブックマークなどよろです。

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