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星降る世界で……  作者: 弓咲 岬
三章 旅をしてみよう(国内で)
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五十四話 初迷宮……なんだけど(後編)

 ギルかよ……迷宮ってこんなに難易度高かったんだなぁ。いやぁ、勉強になったよ。本当に。もしこれが難易度の低い低いレベルだったとしたら、メルガスには化け物がいっぱいいるんだろう。化け物(にんげん)が。


 流石にギルを相手にするとなるとステラたちも気を引き締め、ステラは右、ミレナは左にそれぞれ展開していっている。俺は自分にひとまず三重の「耐久強化」をかけて、少しずつ前にでる。

 クロエは後ろから俺たちに「耐久強化」をかけてくれた。実質、俺は四重だ。これでもちょっと心配だけど。ただ、これ以上は魔力の無駄なので。


「グルルルルルゥゥゥ……」


 低い唸り声をあげて俺たちを警戒するギル。大狼やガルドもステラとミレナを警戒している。

 こんな高レベルを相手にするのはあの日以来だ。占魔も含めたゴブリン四体と向かい合った時。流石にあの時のように簡単にやられるほど弱くはないけど。それに今回は四人だし。

 ギルの金色に輝く二つの瞳が俺のみ(・・)を捉えた瞬間、俺に向かって物凄い速さで突進してきた。ホワイ!? 何故俺のみ!


 すぐに気を取り戻し、直観に従って左に避ける。同時にステラとミレナは取り巻きの大狼とガルドに襲い掛かった。

 攻撃を外したギルは手前に沈み込んで俺に後ろ脚で攻撃してくる。俺はギルの下に潜り込んで前足を斬り付ける。だが、思った以上に固く、あまり大きな傷はつけられていない。


「……やっぱり固い。俺じゃ傷をつけられそうにないなぁ」

「グルアァァッ!」


 傷をつけられたことにお怒りのギルは前足での連続攻撃、鋭く重そうな尖った爪が俺の目の前を過ぎる。おおぅ、あぶねぇ。模擬戦とかでステラと相手をしているお陰で、ギルの攻撃は思ったより見える。避ける事自体はそこまで難しくないみたいだ。ステラたちには本当、頭が上がらん。

 高速多考で状況を確認する。既にステラとミレナが大狼とガルドをニ十体近く殺っていて、残りはそんなに多くない。まぁ、少なくとも十体以上いるけど。ステラたちだから結構楽だけど、普通なら最悪だよね。

 とは言っても俺はギルの相手でいっぱいいっぱいなんだけどさ。


 クロエは主に俺を支援しており、時折避け損なった攻撃はクロエの「聖壁」が防いでくれている。もしこれがなかったら、今頃ボロボロなんじゃないだろうか。

 まぁそれでギルがステラたちに瞬殺される未来が鮮明に見える辺り、何とも言えない気持ちになる。


 次のギルの爪攻撃を避けようとしたら少しの異変に気付いた。……あれ? なんか爪の先がちょっとぼやけてない?


「はぁっ!?」


 即座にギルの懐に飛び込んで攻撃の軌道を見てみると地面が大きく削れていた。考えるよりも前にギルの追撃が来たのでさっと避けて一旦、距離を取る。

 普通に魔法を使ってきてるよ。しかも、厄介な風属性を。デモンズだし、予想済みではあるけど、俺には少しばかり荷が重いなぁ。早くステラたちと協力したい。


 ギルが魔法を使う前にチラッと取り巻きの方を見て、より力を入れているように見える。そろそろ本気を出すということなのか。まぁ、もうあと何体かしかいないし。本当強いよね、二人って。それに美人だし、俺には勿体ないくらいだ。

 そんなことを思っているとギルから風の球が飛んできた。それも威力マシマシの。避けた時には地面がごっそり抉れてたよ。当たったら体は細切れにされるね。


 「風の加護」を使ったようでギルの速さが一段と上がった。それでも日頃の訓練のお陰で何とか追いつけている。

 ステラとの模擬戦がここで生きてくるとは……全敗して、その度にいろいろと対策を考えた甲斐があったよ。悔しさとか一切を飲み込んだこともな。


 高速多考と超感覚でギルをこっちに引き付けていると取り巻きの数がもういない事に気が付いた。あれ? 数十秒前まではまだ残ってたよね? いくらステラたちでまだもう少しは掛かると思ってたんだけど、どうしたんだ?

 ……それとクロエからの支援が強くなっている感じが。なんでそうなった。何が引き金なんだろう。


「ユートくんっ!」

「お兄ちゃんっ!」


 ステラとミレナの二人の掛け声とともにギルの体勢がガクッと落ちた。見ると片方の後ろ脚に大きな傷が二か所ついている。あの一瞬でそこまでのダメージを与えるなんて流石だよな。俺なんか傷すらもつけられないのにさ。

 ギルは凄い形相で俺たちを見るが、傷が大きい為か、動けていない。唸り声すら発さずに静かに俺たちを見るのはなんだが、物凄い不安だ。


「流石ユートくん! ギルをあんなに相手取れるなんて!」

「あの時間で三十体以上を倒せるふたりの方がよっぽど凄いって。それよりさ、ちょっと気になったんだけど……」

「うん? なぁに?」

「さっき殆ど一瞬で十体以上倒してたよね? クロエもなんかやる気だったみたいだし……何があったの?」


 それを聞くとミレナがうふふと笑い、近付いてきて抱きついてくる。ステラやクロエは普通に抱きついていた。

 あのですね、お三方。今は戦闘中なんですよ? いくらなんでもここでいちゃつくのはダメだと思うんですが……。


「だってユートくんが私達を美人って……綺麗だって」

「……あぁ、うん。そう」


 この戦闘中でもあなたの心を読む能力は健在なのね。でも、そろそろ元に戻ってくれないかなぁ。俺としてはまだ気が気じゃないんだよ。いやな予感もするし。

 三人は抱きついた状態で幸せそうだ。この子たちには今が戦闘中だということを覚えていないんだろうか。


 そこでギルが両足に力を入れているのが分かった。それも物凄い力だ。ステラたち以外にも色々と強者とは戦ってきたので何となく、感覚として分かるんだ。

 俺はステラたちを離して、一歩前に。それと十重の「身体強化」、それと「聖壁」、怪我をしてもいいように回復系の魔法を発動し終わった直後にギルが来た。


「ぐうぅぅぅっ!!」


 恐らく今のギルの最大の攻撃だろう突進も耐えれたのは一瞬だけ。前もって準備したお陰かギリギリ対応できたけど、あり得ないくらいの突進力に俺は吹っ飛ばされる。

 覚悟はしてたけど結構いたい……。いや、それで済んでるのもおかしな話だけども。


 ギルの突進を真正面から受け止めたせいか、今持っている槍はバラバラに壊れている。ついでに俺も岩壁に強く衝突したので、そこから抜けるには時間を掛けるか、ステラたちに手伝って貰わないと無理だな。


「おーい。手伝っ―――」

「ガ、ガ、ガァ……」


 ステラたちに手伝ってもらおうと声をかける途中で、ギルの首が綺麗に斬られているのに気が付いた。前足と後ろ脚は黒い煙で覆われ、体のあちこちにも大小様々な傷がある。

 死体となったギルは迷宮に吸い込まれていき、手ぐらいの大きな欠片を残して消えた。それとステラたちの姿も消えている。どこに行った?


 ギルの死体を見た次には俺の体が壁から引っこ抜かれ、誰かに抱き締められる。うーん、これは……ステラだな。ははは、これで誰か分かるのも考えものだなぁ……

 ぎゅうぎゅうと強く抱き締められてちょっと息苦しい。ねぇ、毎回思うんだけどさ、そんなことになるなら油断するなよ。いや、俺が原因な事が大半だから責めるに責められないけどね。


 肩を軽く叩くとステラは俺を離してくれ、頬を掴んで目を覗き込んだ。相当に心配しているようだ。


「大丈夫、お兄ちゃん!? 怪我とかない?」

「大丈夫大丈夫。防御力は最大まで上げておいたから、重症はないよ。擦り傷とかならあるけど。それも直ぐに治るって」


 安心させるように頭を撫でると気持ち良さそうに目を閉じた。今度は抱き着いてきたので背中をさすると頬ずりしながら甘えてきた。ついでクロエも抱きついてきた。ミレナは身を寄せるだけだ。


「油断しちゃった」

「そうだな」

「ユートくんを危険な目に遭わせちゃった」

「はいはい」

「だから」

「えいっ」

「いたっ。何するの、ユートくん」


 何かいろいろと自虐に入りそうだったので、拳骨を食らわせた。拳骨が落ちたところをさすりながら涙目で抗議してくる。

 いろいろと言いたい事があるんだろうが、俺は知りません。聞く気もありません。


 ミレナを少し乱雑に撫でるとそれに合わせて体がぐらぐら動き、最終的に体を預けてきた。うん、ミレナならそれで良いと思うよ。三人から同時に甘えられるのはもう何年もやって来たからもう慣れたよ。


「皆、お疲れ様」


 言葉の代わりに三人は行動で示してきて、俺は寝転がる体勢になった。魔力を一気に使い、残量も少ないのであまり動けない。しばらくはこのままだな。ある程度は好きにさせておこう。




 俺の体力がある程度回復するまで皆でボス部屋の中で休憩を取った。途中、ミレナが欠片の回収をしてくれて、ここでは合計で三十七個になった。

 ギルも合わせてそれくらいとなるとあの時、ステラとミレナは十五体近くを瞬殺したわけだ。今の姿からはそんな風にはまったく見えないけど。


 ギルを倒し、少し経ったら、折れた体が来た道は反対方向に一つの道が現れた。恐らく、出口なんだろう。

 まぁ、焦る必要は無かったのでこうして暫く休憩してたわけだが。三人とも肌がつやつやしているように見える。俺とじゃれ合っただけでこうなるのもおかしな話だ。


 それは置いといて。出口から出るとここの入り口に繋がっていて、戻って来たのはあの大広間。そして、迎えたのは他の冒険者たちの驚きの視線だった。


「き、君たち、下層をクリアしたのか!?」

「……下層、ですか?」


 いきなり詰め寄られながら話しかけられてきたので、ステラたちは後ろに隠れてしまった。なので俺が応答することにしよう。若干、ステラが震えているのがちょっと申し訳なく思う。

 まぁ普通びっくりするよね。それにむさ苦しそうな男にいきなり詰め寄られるのは。


「おや、不屈の洞窟の事を知らないのかい?」

「えぇ、まぁ。初めて来ましたので」


 知らない事を伝えるとその男性は嬉々としてこの迷宮についての説明を始めた。他の奴らは怯えて小動物っぽくなっているステラたちに見惚れていた。


 その男性(後に名前はライナーというそうだ)から聞いた話によると、この迷宮、不屈の洞窟には上層、中層、下層と三つの難易度に別れており、合わせて百個ほどのステージがあるらしい。

 それで、下に行くほど難易度は高くなり、下層では運が悪いとデモンズクラスの占魔クラスの魔物も出てくるそうだ。

 また、ボスとそれまでの魔物の強さの違いも下層に行く毎に大きくなる。……確かにそうだった。ボスのレベルが一気に上がったのは何とも困った。


 知りたい情報は聞けたので退散しようとしたらボスを倒したのは、と聞かれステラとミレナだと答えると結構な暑苦しさで握手をせがんできた。

 まぁ情報もいただいた事だし、これをお礼に出来たらと思ったので、ミレナに目配せで了承してもらった。

 それでもあの暑苦しさには終始、苦笑いだったが。

 ステラたちと握手して満足したらしく、彼も自分のレベルに見合った所へと向かって行った。


「うぅ……あの人苦手」

「まぁ、悪い人じゃないみたいだからね……」

「うん……」


 少し激しめに頭を撫でるとすぐに表情を崩して、腕を組んでくる。ミレナも同様だ。クロエは後ろからついてきている。服を少し掴んで。

 ステラたち三人の美少女っぷりに周りの男たちは崩れていって、俺にさっきの視線も向けて来ない。……この方法、効果は保証済みなんだが、俺の精神的ダメージが半端じゃないんだよなぁ。恥ずかしさ方面で。それ以外の方法だと俺に殺気が集まるか、ステラたちの機嫌が凄く悪くなるかの二択だけど。


 あとはギルドに戻って欠片の換金をした後は宿に戻って今日はもう休もう。明日は俺の武器を買いにいかないといけないし。ぶっ壊れちゃったしな。








読んでくれてありがとうございます。

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