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星降る世界で……  作者: 弓咲 岬
三章 旅をしてみよう(国内で)
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五十二話 ……なんかもう、疲れた。色んな意味で。

 ……やっと、着いた。たった数時間の道のりのはずが何日にも感じられたのは俺だけだろう。だってさ、周りの男からの殺気が恐ろしいわ、ステラたちが控えめながらも甘えてくるわで大変だったんだよ。主に心が。

 だがそれももうすぐ終わる。何故なら街の壁が見えてきたからである。距離的には一時間も掛からないだろう。それだけなら何とか……いける、と思う。


 さて、俺が苦悩している間のステラたちはというと何ともご満悦の表情を浮かべている。それぞれが好きなようにやっていた点は変わらないのだが、俺が頼んだ時よりも少し激しかった。


 いや、ミレナだけは俺に頭を預けているだけで特にはない。言ってくれた事を守ってくれるのありがたいが、目先の街に着いたら何をしよう……。

 まぁそれは置いといて。ステラとクロエは俺の両腕で自らを抱きしめる様にして軽く寝入っており、傍から見れば相当羨ましいことになっている。それに加えてミレナのもあるので殺気は最初のときよりも幾分か強くなっている。今なら魔物の一体くらいは倒せそうだ。




 それから四十分ほど周りからの殺気に耐え、リベルターレに最も近いメルガスの街、リューアに辿り着いた。やぁ、長かった。二人ともを起こした時にステラがいつもの癖をしようとしてきたのをミレナに手伝ってもらって止めた。お陰でまた一つ借りが増えてしまったよ。

 それと寝起き直後のクロエが物凄く可愛く、寝ぼけ眼のステラを除いて全員が見惚れていた。それからいち早く抜け出した俺はもの寂しそうにしていたステラの頬にキスをして機嫌を直させた。


 意識を取り戻したクロエは周りから見られていることで恥ずかしくなったらしく、俺のほうを向いて顔を埋めてしまった。その時の男たちからの殺気は瞬間的に今までで最高潮だったよ。

 ……かなり怖かった。マジで。


 街の中にある定期馬車の待合所みたいな所で俺たちは馬車を降りた。その際は気を遣って最後に出たんだが、すれ違う瞬間小さめな声で「……死んでしまえ。羨ましい」という声が聞こえて三人が飛び出すのを抑えるのに苦労した。

 それが何回か続いてようやく降りたんだが、もう既に疲れた。何にって? そりゃ、今までの行程全てに。もう早く寝たい。


「……もう宿に泊まりたい」

「えっと、お疲れ様ユートくん。あとはギルドで迷宮証を発行するだけだから頑張って」

「……おう」


 いつもはもう一つくらい爆弾を持って来そうなミレナも流石の状態に心配してくれた。……嬉しいけど、出来れば毎回そのフォローが欲しいです。切実に。




 メルガスという国は都市と言う物が存在しておらず、基本的には街とその周りの村になっている。で、街には最低でも一つは迷宮があり、場所によっては複数あるそうだ。

 ちなみに便宜上として迷宮が五つ存在するメルドという街が都市とされている。


 それでこれらの迷宮には迷宮探索許可証というものが存在する。……まぁ別にそれが無くても入れるんだけどね。ついで素材の換金もしてくれる。

 国としては農業や畜産などもあるんだが、迷宮も大事な収入源なのでそこら辺は無料である。勿論、基本的に素材を売るかどうかは取った本人次第だ。

 まぁ直接売りにいくのが面倒な者が殆どなので大体は換金される。何とこの国の四割以上が迷宮だというので驚いた。それを教えてくれた父さんにも驚いたが。


 で、その時に役立つのがこの迷宮探索許可証だ。許可証、だなんて仰々しい名前ではあるが、一言で言えば買取金額を増加してくれる。

 例えばフレアウルフという魔狼がいるんだが、この魔物は文字通り火に強いので火耐性の防具が作れる。その為、普通その毛皮は一枚銀貨五枚で買い取って貰える。だが、この許可証があると一割ほど増加し、大銅貨五枚がプラスされ、銀貨一枚と大銅貨五枚、合計五万五千ルーツとなるんだ。


 モノによっては買取額増加の割合は上下するが……まぁ、プラスされるのであれば、と大体全員がこれを発行する。一ルーツでも増えた方が普通は嬉しいと思うだろう?

 俺も早く借金を返済したいので、一ルーツでも上がればいいと思っている。目標は再び王都に戻ってくるまでにここで殆どを返済する事だ。


 では、何故こんな感じなのか。最近なら先ほどの馬車の中でもあった現実逃避である。原因は一つ、迷宮証(迷宮探索許可証なんて面倒くさいので)を発行する為にギルド内に入った時、漏れなく全員(男のみ)が殺気を俺に放ったからである。

 流石に二、三十人の屈強な男からの殺気はきつい。それとこっちを凝視されるのは別の意味でも辛い。ステラとかだったら和めるのに……


 支えてくれているミレナを少し抱き寄せて桃色空間を作って貰おうと思う。抱き寄せられた本人は戸惑いながら嬉しそうにしているけど。


「ユートくんどうしたの?」

「……周りの殺気がきつい」

「あぁ」


 一瞬で色々と察したミレナは即座に桃色空間を発生させた。クロエがすぐに気付いて寄って来たため、両手に花だ。ステラも来たそうだが、前方を歩いてくれている。




 それからはサクッと迷宮証を発行してギルドを出た。緊急で頭が働かない状況だったとはいえ、確実に抹殺リスト的なものに俺の名前が記入されているだろう。出て行った時の殺気がそう言っていた。

 職員の女性からはちょっとだけ同情を貰った。何と言うか女性陣からは温かい視線だったのが救いだったか……そう言っている時点で大分毒されてきたなぁ。何がって? 三人と婚約者として生きているって事にだな。

 最初の頃は恥ずかしかったし、むしろちょっと嫌な感覚があったんだけど……。


 もう俺は精神的な疲労が大きいので三人に宿は探して貰った。しばらくこの街で迷宮の感覚とかを覚えていくので一種の拠点だな。数日で終わるようなものではないので少し良い所を条件に出した。

 本当は俺がしたいんだが、ヘトヘトで誰かに軽くでも支えて貰わないとその場に崩れそうなので任せた。


「大丈夫?」

「……何とか。まぁ、女性陣からの温かい視線に少しほっこりするくらいには慣れて来たし」


 心配してくれたミレナにそう返すと少し見開いて、華のような笑顔を見せた。所々で何かにぶつかる音が聞こえたが、きっと空耳だ。

 ……ここで感情を一つでも吐露しようものなら心読まれるのがオチなので俺は何も思わない。

 取り敢えずちょっとだけ体を預けるとミレナの笑顔がより増した。


 そうして数分ほどで一泊で銀貨六枚するまぁまぁいい値段の宿に泊まることになった。ミレナに言った事をステラとクロエも聞くとそのクラスの宿を一分も経たずに見つけてきた。

 さっきまでのやる気とは明らかに違う。三、四倍ぐらい出てた。


 理由は分かるけど。俺は自分でも他人に心を簡単に許すなんてことはしないと自覚しているので、それを感じたことで舞い上がったんだと思う。

 マジでダメな男だと思うよ。自分でも。だって、ここまで女の子が慕ってくれてまだ完全に心を開いてないんだぜ? 一般男性からは血涙の嵐を貰うこと間違いない。


 部屋などの手続き諸々も任せて泊まる部屋のベットに横になる。四人一部屋らしいが、正直疲れてるし、今更どうでも良くなってきているので構わない。

 まだ日が昇ってる時間だが夕方くらいまで二、三時間は寝よう。皆にはそう伝えて束の間の休息をやっと手に入れた。



 ♈♉♊♋♌♍♎♏♐♑♒♓



 目が覚めた時にはステラたち三人も寝ていた。馬車での旅は唯でさえ疲れるのにテンション高ったし、俺がする事を代わりに全てしてくれたので、かなり疲れてたんだろう。しばらくは寝かせておこう。

 しっかりと熟睡できたお陰か、精神的な疲れは結構抜けている。これなら明日からも頑張れる。


 ミレナですらも寝入っているのでやっぱり疲れてたんだよな。ステラとクロエは色々と動いてくれたし、ミレナも俺をずっと支えてくれていた。それにリューアに着いてからは常に心配してくれていたので俺と同様、精神的にも疲れがあったんだろう。

 三人に感謝しつつ、そのあどけない寝顔をしっかりと拝見させて貰おう。ミレナに至っては相当にレアだし。俺が起きる頃には既にスタンバイしてるからね。中々見られない。


 ステラたちの寝顔を見たり、明日以降について暗くなっていく外を見ながら色々と考えてるとミレナが目を覚ました。大体、俺が起きてから三十分くらい経ったかな。


「おはようミレナ」

「……んぁ、ぉはようユートくん」


 少し寝ぼけているミレナを優しく撫でると心底嬉しそうにする。ミレナもこれで中々こんな表情を見せないので何か、笑みがこぼれる。


「ユートくん」

「ん?」

「だ~い好きっ」

「……俺も」


 最後のはつい小声で出てしまったものだが、ミレナはしっかり聞いていたようだ。起き上がってイスに座っている俺の所までやって来て、キスされた。

 俺の上に身体を置き、おでこを合わせて至近距離で見つめ合う。


 ミレナは俺の目を数秒見る事を何回も続け、その度に何度もキスをする。ミレナが落ちないように背中を支えると抱きついてくる。これだとまるで甘えたがりのステラみたいだ。そう思うくらいにはいつものミレナと違う。


「どうした?」


 そう問い掛けると俺の首に顔を埋めていたミレナは再び俺と見つめ合う状態に戻った。


「……嬉しかったの」

「嬉しかった?」

「ユートくんが私たちのことを大事に思ってて、好きなのは分かるよ。じゃないとユートくんなら私たちと一緒にいないから。いくら私たちがユートくんを好きでも。でも、今日ので分かった。ユートくんが私たちを受け入れようとしてくれてるんだって。ユートくんにとっては辛いはずなのに……だから、嬉しかったの」


 咄嗟に俺はミレナを抱きしめた。顔を見られないようにして。多分、今の俺の顔は赤いんだと思う。心臓も早くなっているが、恐らく両方ともミレナにはバレている。それでも身体が勝手に動いた。

 何だろう……嬉しいとか、困惑しているとか、恥ずかしいとか色んな感情が混ざって何とも言えない。何となくあの時のミレナの気持ちが分かるような気がする。

まぁ、俺の場合は不安が付き纏うんだが。俺としてはしょうがない。これは治すのに本当に時間が掛かる。それにようやくその目途が立った感じなんだ。今の表情は誰にも見られたくない。


 気分が落ち着いてきたのでミレナを離す。当の本人は虚空を見ており、顔の前で何度か手を振っても反応がない。

 ひとまずミレナをベットまで移動させて……待つことにしよう。流石にこうなった理由は分からない。


 意識がこっちに戻ってきたと思ったら、俺を見てミレナは身体中を真っ赤にして目を逸らした。そっちにむかうと反対側を向き、反対に向かうとその反対側を向く。

 しばらくそんな攻防をしてたらステラとクロエが起きてきて、ミレナが恥ずかしそうにしてるのを教えてくれた。

 ……やっぱり恥ずかしかったのね。何が原因かまでは分からないけど。正確には俺の行動のどこがどういう意味でミレナを恥ずかしくさせたのか、だが。


 それとちゃっかりミレナから話を聞いていたらしい二人にも同じ事をする羽目になった。……俺も恥ずかしいからあまりしたく無いんだよ。二人とも喜んでくれたのは良いんだけどね。




 あれからミレナが元に戻るまでニ十分ほど掛かった。その後は夕食を食べ、汗などを拭いて、眠くなるくらいまで雑談を交わしたりして、寝た。

 いつも以上に三人が近くに来て、一段階上の鍛錬が出来た。精神力という名の鋼のな。いやほんと、きついよ。自分で枷を付けたから仕方ないんだけど。もし枷を付けなかったら……うん、危ない。考えたらその枷すらも壊してしまいそうだ。








ありがとうございます。

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