五十話 ……予想以上にマジだったぜ
今日オーバーラップ大賞に応募してみました。意見とかあったら色々下さい。
やぁ~初めて気づきましたよ。
戻って来たよ〈旅人の宴〉の俺たちが泊っている一室に。既に夕食等は終えていつもなら各々が自由に過ごしている時間。だが、今はテーブルに全員が座って俺の方に視線が集まっている。
そこで今の状況を作り出したミレナが口を開く。別にしなくても良いんじゃないか、と思うんだが完全に目が据わっており、とてもそんな事を言い出せる状態じゃない。
「ユートくん、ユートくんは昼間自分なんて、と言いました。何故ですか?」
「ミレナたちの方が強いし、俺はまだまだだなと思ったからなんですが」
「私たちの方が強いと言ってもそれは攻撃力の話でしょう? 防御力に関してはユートくんが一番強いじゃない」
まぁ、確かに。事実ミレナたちは主に攻撃力と言う面ではとても強い。それは昼間の決闘で分かるし、今まで一緒に生活して来たんだから分からないと言う方がおかしい。どちらかと言うとクロエは支援寄りだけど。それでも防御力だって十二分以上に強いと思うけど。
「それにユートくんの防御力の高さはバルガーさんも認めてる。ユートくんのお義父様やお義母様だって認めてる。違う?」
「……確かにそうだけど……だけどミレナたちも十分以上にあるだろう?」
「むぅ。そうやっていつも自分を下に見て……」
ミレナは腕を組んで悩み始めた。ステラとクロエは俺とミレナを交互に見ている。そんな心配そうにしなくても……。
少しの間ミレナは目を閉じて腕を組んだ状態で色々と考えてた。だが、目を開けた時は驚くほどの優しい、慈愛に満ちた様な表情でこちらを見ていた。
もうこの段階で俺が認めさせられる未来しか見えない。何を考えたのか、想像もしたくないが、考えたんだろう。俺に自信を付けさせる為に。……自分でも何を言ってるのか分からない。
ミレナは席を立ってこちらに向かって来る。俺には最初から逃げるなんて選択肢は無いので、それを眺めながら一体、何が起こるのかと想像しか出来ないのだが。
ミレナが丁度俺の真後ろ辺りに移動した所でステラとクロエが首を縦に動かしていた。……何を指示したんだい? ミレナさん。俺にも教えてくれないか?
「……長々に話すのは好きじゃないから手短に言うね」
「な、何をでしょう?」
ミレナはゆっくりと俺を抱きしめてきて、俺の耳の辺りで止まった。……あ、これ囁かれる奴だ。多分、クリティカルになるような奴を吹き込まれる。何となくこの後の展開も予想で来たなぁ。回避不可能だけど。寧ろ、クリティカルだけど。
「ユートくんは私たちを信じてくれないの? 私たちは信じられるよ。世界中の誰よりも。例え親でも。ユートくんが言ってくれる事なら。私や、ステラちゃん、クロエちゃんはユートくんを信じられるし、受け入れられるよ。それでもユートくんは自分を信じられない?」
予想通り、耳元で囁かれた。しかもかなりの大ダメージで。さらに今のミレナにはこれがダメだったら他の手を試すくらいの気概がその声だけで分かる。昼間に言った、「達成できるまで終わらない」はここまで来ると本物なんだろうなぁ。
ここは早く自分を信じる様に言った方が……そう思うのと同時にステラとクロエが立ち上がった。それでこっちまで来ると俺を抱え、三人でベットまで連れて行かれた。横に寝かせられ、ミレナが俺の上に、ステラとクロエは俺の腕を取って至近距離まで顔を近づけた。
「言ったよね? ユートくんが自分でちゃんと自信を持ってくれるまで終わらないって」
「へ? ちょ、ちょっとまっ――!」
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…………………………それから三日後。あれから三日も経ったんだぜ、凄くないか。この間俺はずっと部屋の中でミレナたちに世話をされながら自信を持つように促されたんだ。色んな方法で。
何をされたのかは言いたくないので割愛するが、かなり強引な方法だった。お陰で自分を認めるくらいは出来るようになったが。みんなにはそれで何とか納得して貰った。じゃなかったらどれくらい掛かっていた事か……ミレナの本気が予想以上に本気だった。
当の本人であるミレナを含めた三人は現在就寝中だ。俺にくっ付いた状態でな。今回はミレナが上で寝ており、ステラとクロエは俺の横で安らかな寝息を立てている。
俺が動けないのはいつもの事。だが、今日はもう一か所が動かせない。何を下品な、って? 考えてもみてくれ。ミレナはこの中で一番のモノを持っている。何がとは言わないがそれが目の前で潰れているのは凄く来るモノがある。
また、意図した誘惑は耐えられるのだが、意図しない誘惑はとてもキツイ。そこで反応しない奴を俺は男と思わない。恐らく、心が乙女なんだろう。
今の俺の状態をミレナにでもバレたら……回避するのに相当の労力を必要とする。それだけは避けたい。
その一心で心を無にし、ようやく落ち着いてきた所でミレナから声が聞こえた。あ、危ねぇ。
「ん……くあぁ……おはよぅ、ユートくん」
「おはよう」
のそのそと近づいて来たミレナは自分のおでこと俺のを軽く合わせる。何でもこうすると安心するし、一日の活力になるそうだ。ステラはキスして来るし、クロエは包む様に手を握る事が同じ事になるそうだが、原理が全く分からなかった。
だから、今では既にそういう物だと諦めている。彼女たちが喜んでくれるなら良いか、と正当化させながらな~。
「……もう一人で悩まないでね」
「それはこの三日間で十分すぎるくらいに知ったよ。これからはちゃんとミレナに相談するって。勿論、ステラやクロエにも」
俺の腕を枕にしているステラとクロエを撫でるとくすぐったそうに身を捩った。それをミレナも穏やかな表情で見ている。
「……それに正直、嬉しかった。あそこまで想ってくれてるなんて。久しぶりだよ、相手を信頼できたのは」
「……そう」
ミレナの言葉は物凄く淡白なんだが、表情がミレナの本心を表しており、凄く嬉しそうであった。再びミレナは顔を近づけて来て額を合わせる。
「……嬉しい。今すぐ結婚して」
「成人してからな~」
俺が軽くスルーしてもなお嬉しそうで、機嫌は良いままだ。そのミレナは起き上がり、朝食を持って来ると言って部屋を出て行った。
それから三十分後。ミレナが人数分の朝食を持って来て、俺たちを眺めているとステラとクロエが起き出して来た。
ステラはもう、習慣となっていると言ってもいいキスをしてきて、クロエは俺の手を自分の手に覆うようにする。二人の習慣に対応していると目が覚めてきたようでステラは無邪気に甘えて来て、クロエは恥ずかしさからかバッと飛びずさった。耳まで真っ赤である。
ステラをしっかり目覚ました後はミレナが持って来てくれた朝食を食べ、服を着替える。勿論、三人とも見ていない。もし見れば嬉々として襲われる可能性が十割ほどあるからね。後は最低限の荷物以外はミレナにお願いした。
〈旅人の宴〉を出たらこの都市の西側の門に向かう。既に迷宮国メルガスに一番近い都市、イシュテナへの足は確保してある。前回同様、護衛も兼ねてるが。
ただ、前回と違うのはこの都市にいる間にミレナたちのランクが上がったので俺たち一パーティだけでも出来るようになった。
「ねぇ、領主様に挨拶でもしておく?」
「止めとく。面倒事にしかならない気がする。それにお詫びならまた来た時にでもすればいいと思う」
ミレナもそんな感じだったようで今回の依頼主の所へと向かう。自分で言うのも何だが、領主の扱いが意外と雑だと思う。まぁそれだけ親しみやすいとも言うが。上がこうだと俺たちも自由に出来るので、ありがたい。
まぁ領主本人が駆けて来るなんて珍事も無事に起こらず、俺たちは平和的にサリレを後にした。
その道中、見張りをしながら景色でも眺めているとミレナがやって来た。場所は幌の上である。馬車の中じゃ、見張りどころではない。それでも問題無いのが問題なのだが。
「ユートくん、一つ聞いていい?」
「いきなり来て何だと思うけど……いいよ」
「私たちって欲情しない?」
…………あれ? 平和的な流れだったのに、いきなり特大級の爆弾が投下して来たぞ? 話の流れが全く分からない。分かりたくも無いが。何がどうなったら俺がミレナたちに欲情するしないになったんだろうか。
それと俺はあの質問に猛烈に答えたくない。と言うか、今すぐ思考を放棄したい。これすらもミレナには読まれたうえでな。
「の、ノーコメントで」
「却下。するか、しないかで答えて」
ミレナはいつになく真剣だ。もっと言えば昨日までの三日間よりも真剣だ。……それ以上に真剣ってどうよ。俺が自信を付ける事の方が重要じゃない?
「エッチな事、したい? したくない?」
至近距離まで真剣な顔を近づけられてるのに、いつもながら意識はミレナの胸の方に引き寄せられる。本人の意識か無意識かは置いといて、多少は意識が行ってしまう。……あ。
気づいた時には時すでに遅し。ミレナはホッとしたような安堵の笑みを浮かべていた。うん、これバレた。つい考えちゃった。だって、凶悪過ぎない? 別にミレナの胸だけでは無いけど。
「エッチな事はしたいんだよね?」
「……はい、したいです」
今の質問には選択肢が無かった。はいかイエスのどちらかだった。だが、その原因は俺なので何とも笑えない。墓穴を掘るなんて……
ミレナは嬉しそうにしなだれかかって来て、うっとりとした目で俺を見ている。
「そう言う気持ちになるのは私だけ?」
「……いえ、ステラやクロエもです」
「どうして?」
「……三人ともとても魅力的なので」
「いつから?」
「……三人ともに告白した時くらいから」
正確にはちょっと違うのだが、凡そそんな感じなので嘘は言ってない。まぁそこは良い。だがそれよりもミレナに完全に言わされた。卑怯だよ、今の俺の状態にあんな視線を向けられて……。
「じゃあ、なんでしてくれないの?」
「……けじめをつけたいんだ」
「何で?」
「ちゃんと責任は取るよ。だけど、その責任逃れが出来ないような状況に持って行っておきたいんだよね。……俺はミレナたちから逃げないけじめをつけたいんだ。だから、結婚してからじゃないとしない」
直後、俺の視界が変わって馬車の中へ。即座に俺はミレナとステラとクロエに囲まれた。ミレナは音が聞こえない様にして、二人に俺が言った事を話す。
すると三人が同時に俺に顔を向けた。それぞれに共通するのは全員の頬が上気して、傍から見ても物凄くエロい事が分かる。それと多分、発情しているんじゃないかな?
何故? と言う気持ちは俺にもあるが、そういうものなんだ、と割り切っているのでそこは問題じゃない。問題なのはそこからである。
「あ、あの……お三方?」
「お兄ぃちゃん……」
「ユートくぅん……」
「ユート様ぁ……」
「「「抱いて(下さい)」」」
美少女三人から襲われる。普通なら諸手を上げる場面ではあるが、俺は自分の掲げた事は守り通したい。
なので、この後の俺は滅茶苦茶頑張ったとだけ言っておく。
読んでくれてありがとうございます。




