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星降る世界で……  作者: 弓咲 岬
三章 旅をしてみよう(国内で)
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四十七話 嵐の前の静けさ……ほらやっぱりね

 さて、決闘が終わって俺は少しだけあの子に同情している。何故なら現在目の前でステラたちが俺の勝利を喜んでくれているからである。

 喜んでくれるなら良いじゃないか。……確かに俺の場合はそれで構わん。寧ろ俺としては嬉しい限りである。だが、よく考えて欲しい。

 つい昨日それも勝手とは言え自分の嫁だ何だと言い、翌日の決闘で本人に無様に負け、挙句の果てには目の前でそのイチャつき振りを見せられる……はっきり言って拷問以外の何物でもない。その前にも様々な爆弾を落とされ、ライフはゼロを通り越して既にマイナスを突き進んでいるだろう。

 そう思うとちょっとだけ……少しくらいは同情してしまう。まぁ結果に関しては後悔も反省も無い。それ以前にざまぁ、ではあるが。


 だが俺も俺もキツイ場面ではある。嬉しいと言う感情のバラメーターが振り切ってしまったのか、ステラが頬ずりしながら抱き着いて来ているのだ。……そこ、死ねとか思わない様に。それは兎も角。

 俺はステラが好きだ。それは違いない。だが、その所為で不意に抱き着かれると余計に意識するのだ。女子特有の甘い香りとか、本人の感触とかがな。本人は絶対に言わない。言ったら余計にヒートアップする。

 まぁ俺の葛藤を見ている人もいる訳で……ちょっとその顔は止めてくれませんかミレナさん?


「ふふふ……私との初めての時みたいだね。可愛いっ」

「おぅっ!? ちょ、ちょっと待ってミレナ。ミレナさん!?」


 俺の真後ろに来て耳元でミレナは俺が少しだけ思い出した事をピタリと当てられ、身体を押し付けられた。くそっ。む、胸の感触が……流石は三人の中で一番成長してるだけある。

 クロエも恥ずかしそうにしながらもステラの隣に来てそっと抱き着いて来る。前門のステラとクロエ、後門のミレナ。大変素晴らしい状況ではあるが、今の現状が現状なので遠慮して欲しい。

 一名羨ましそうに見てる人や、完全に崩れ落ちてる人とかいるから……


「あの皆さん、そろそろ離れてくれませんか?」

「やっ」

「嫌よ」

「……嫌です」


 クロエだけ若干のタイムラグはあったものの、全員に物の見事に拒否された。そして、より強く抱き締められた為、色々と不味い状態になりつつある。俺も周囲も……


「ここで押し倒してくれても良いのよ?」

「それはダメだろ!?」

「おにいちゃ~ん!」


 三人の美少女に囲まれている少年、それを羨ましそうに見る領主、崩れ落ちる貴族の嫡男、さらにそれぞれを見守る部下の方々……客観的に見なくてもかなりのカオスである。

 結果的にこうなるとは何とも締まらないものだ。



 ♈♉♊♋♌♍♎♏♐♑♒♓



 あの貴族様は若干泣きべそを掻きながら自分の国へと帰っていった。決闘が終わってからも三人がずっと甘えて来ているので限界が来たのだろう。元凶が帰ってくれるのはありがたいが、ちょっと可哀そうな最後だった。

 それで現在は応接室、ではなく領主さんの私室にお邪魔している。俺は拒否したのだが、それ以外が全員賛成でね、俺の意見は聞いて貰えなかったよ……。


「ありがとうユートくん。これで私もようやく相手が探せるよ」

「あはは……頑張って下さい」

「そうだね。頑張るよ。っとそれはそれで良いとして……はいこれ。決闘の賞金と私からのお礼」

「あぁ、ありがとうござい……あの、量が多くないですか?」


 決闘での件は金貨三枚なのでそれは良しとしよう。だが領主さんからのお礼と言うには金額が多すぎない? 金貨三枚を抜いても……大金貨が三枚、金貨が数枚程あるんですが。四千万ルーツくらいあるんだけど……。


「いやいやこれはほんの感謝の気持ちだよ。それにこれだけ私が苦労していたって事さ。領主の立場に免じて受け取って貰えるかな?」

「ま、まぁそういう事なら受け取っておきますけど……大変でしたね」

「ありがとう。でもね、言っただろう? ほんの気持ちだって。本当はもっとお礼がしたい所ではあるんだけど、ユートくんは遠慮するだろう? これくらいがちょうどいいと思ってね」


 しっかり俺の考えも見た上でこれか……この軽い感じで忘れそうになるけど流石は国にとって重要な都市を一つ預かるだけあるな。会って会話したのなんて数回程度なのにさ。洞察力が半端ないよ。これなら良い相手は直ぐに見つかりそうだけどな~。

 それでも四千万がほんのお礼と言う辺り、全然違うなぁと思うけどね。


 少し雑談したら領主さんの方で仕事が発生したらしく、お開きとなった。また来てくれても良いと言うが、流石にそれは遠慮しておこう。それに俺の方でも色々と予定は入ってるしな。目下はクロエのやり直しも含めたデートの三連続だろう。

 それが分かっているのかミレナは意味深な表情でずっとこちらに向けている。


「ユートくん、私ちょっと用事があるからステラちゃんたちと一緒に先に帰ってて」

「……あぁ。気を付けてな」

「心配しないでも浮気なんてしないから。もう三人もお嫁さんがいて浮気し放題のユートくん」

「いや、そうじゃなくて」

「じゃあステラちゃん、クロエちゃんよろしくね」


 俺はステラとクロエから両腕を掴まれて強制的に部屋を退出された。別に俺はミレナが他人に靡くなんてこれっぽっちも思ってない。あのゾッコンさんがそうそう対象が変わるなんて余程の異常がない限りあり得ない。言っちゃあ何だが、あの人俺の事を既に二十年以上好きだと言ってるんだぜ? 真実かは置いといて。

 それ以上に気になるのは意味深な表情の方だ。普通に考えたらデートの事で色々と作戦でも考えてる、というのに至る。だが、今回のは何と言うかそれ以上に嫌な予感しかしない。証拠の一つに最後は少し強引だったし。いつもならそんな事は無いので、俺が知る限りあれ以来である。




 俺たちが〈旅人の宴〉に戻って来て少しした頃にミレナが帰って来た。とは言え、俺は帰って来て速攻来た野次馬の相手をステラたちに任せていた。

 任せていたのはちょっと違うか、彼女たちが積極的に女性を中心として如何に自分たちが愛されているか等の話をするので恥ずかしくなったのだ。

 その結果、俺は部屋に戻ってゆっくりとしていたんだ。恐らくこの後起きるであろう面倒事に立ち向かう為に。


 いつもなら面倒な事が何回か続くはずなのだが、今回は無かった。という事はしばらく経ってから起きるんだ、と思う。ほら、嵐の前の静けさって奴だよ。特にミレナがこのまま終わるはずが無い。


「ただいま~。ユートく~んっ」


 帰って来て直ぐに俺の所に飛び込んで来た。しかも珍しく正面から。さらにステラとクロエが左右にスタンバイ。もうこの段階で面倒事が起きる、という予想は的中だろう。だって、ミレナの機嫌が物凄く良いんだ。

 彼女が機嫌がいい時は確実と言って良い程に俺は面倒事に巻き込まれている。じゃあ、今回は一体何なのか……あまり予想したく無いな。するだけでも怖いし。


 ステラとクロエは左右でそれぞれ俺の腕を抱き締めていて、ミレナは俺の脚の上に座っている。それも間違えようの無いほどの笑顔。

 普通なら可愛い、の一言でも出るのだが、今は何が出て来るのか内心ビクビクである。


「いきなりですがユートくんに朗報です」

「……朗報とは?」

「私たちのデートは取り消しで良いです」

「ふむふむ」

「だけどその代わりに……今日決闘した訓練場で明日、私達とも決闘して貰います!」

「ふむ?」

「私たちが勝ったら見てる人たちの前で思う存分甘えます」


 するよね? するよね? と何か最初から否定する選択肢が無いんだが……。まぁよく考えなくてもいきなりだし、俺やる意味ないよね?

 目線でミレナに訴えるとミレナは首を横に振り、やって? と上目遣いで懇願して来た。ステラとクロエもこちらを上目遣いで見ている。これ、もしかしなくても三人ともグルだね。どんな段取りしたのさ?


「……何でそんな話になったの?」

「領主様がね、私たちの実力が知りたいらしくて。ほら、仕事が入ったでしょ? あの時に色々と聞いたみたいで……」

「それで一番分かりやすいのが決闘、と。だけどそれなら部下を使えばいいよな。領主さんからしても分かりやすし」


 途端にちょっと恥ずかしそうにするステラさん。クロエさん。ミレナも何かは少し言いづらい様子だ。


「ちなみに俺が勝ったら?」

「思う存分甘えて来て良いよ」

「なるほどよしやらない」

「やってくれたって良いじゃない!」

「そもそも俺がやる意味が全くない。今日してるから実力は分かると思うし」


 ミレナは半泣き、左右からはちょっと腕を極められ始めている。極めようとしている本人たちも不満顔。ミレナは俺の服を掴んで来て涙目。……ちょっとそれは卑怯じゃないですかね? 俺がそれに弱いの、知ってるよね?

 と思ったらミレナの口から飛んでもない事が飛び出した。


「決闘をしないなら今ここでユートくんを()的に襲います。ユートくんと愛し合ってる事を他の皆さんにも聞こえる様に大音量でしちゃいます」

「よし、分かった。明日だな。その為にも今日は早く寝るとしようか。後、条件はどちらが勝っても甘えて来て貰って良いぞ」


 つい反射的に言葉に出してしまった……。ねぇミレナさんや、俺はミレナたち自身が自分の体を大切にして欲しい、貶めないで欲しいと日頃言ってるよね? どれだけ俺の心労を増やせば気が済むのかな?

 ニッコリと笑ってミレナにそう問い掛ける。それとステラたちには手を放して……と思ったら既に離れており、俺と同じく少しミレナに避難の視線を浴びせている。お陰でミレナは居心地が悪そうだ。


「……ごめんなさい」

「そうなるくらいなら最初から抑えずに素直にしてろよ。……このバカ」


 ミレナを抱き締める。本人は違うと反論してるんだろうが、身体は言う事を聞いておらずしがみついて来ている。

 この馬鹿は普段抑えてるくせに定期的にこんな事をしないと不安になって人の忠告を平気で破る。そうなるくらいなら最初からするな、とも言ってるのに頑なにそうしないので俺だけじゃなくステラやクロエも若干、辟易してるのだ。

 何回も経験してるのでステラとクロエはさっと動いた。座っていた状態から横になると即座に両足を絡ませてきた。本人は顔を赤くして違う! 違う! と強い反論していてもこうなったらなぁ…………以前クロエにしたみたいに可愛いを連呼すると余計にミレナの顔が赤くなった。

 ステラとクロエにはお礼を言って……後はミレナが満足するまでこのままでいようか。








読んでくれてありがとうございます。

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