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星降る世界で……  作者: 弓咲 岬
一章 始まり
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三話 模擬戦……だと?

前回に続けて見に来てくれてありがとうございます。

 ミアさんから魔力での身体強化を教えて貰ってはや一ヶ月。最初の数日こそ手間取っていたステラも七日程で扱えるようになり、身体強化に至っては十日と経たず使えるようになってしまった。

 では、誰が一ヶ月も掛かったのかと言うと……俺である。ミアさん曰く、最悪一年掛かるが平均的には半年程度なのでひと月で出来るのは割と凄いらしいが、どうしてもステラを見るとなぁ……こう、劣等感が沸き上がるんだよなぁ。気にしても仕方ないんだけどね。


「はぁ……今日、からか……はぁ」

「やっとお兄ちゃんと一緒に出来るねっ。ずっと待ってたんだから」


 現在行っているのは一か月前にやった街一周である。今回は身体強化しているので半分を過ぎても軽い息切れ程度だ。ステラはこの一ヶ月でより体力をつけているので余裕というか、そもそも先ほど言っている事からテンションが高い。当然身体強化は使っていない。

 ちなみに身体強化を習い始めた時にどの属性が強いか調べたところ、ステラは四属性とも軒並み強い事が分かった。この時は流石の二人も少し唖然としていたが。ちなみに俺は水属性。


 街一周を終えて家に帰り、朝食を終えたらリュートさんから戦い方を教えて貰う。実は素手での格闘術は少し前から教えて貰っていたので今日からするのは剣術とかだ。


「取り敢えず一通り使ってみるか。最終的にどの武器が使いやすいかユートが決めれば良いしな」

「……お願いします」


 とは言っても元日本人である俺にとって生き物を殺す武器となると……やっぱり忌避感は否めないな。まぁ、それを気にしていられないのも事実だし頑張ってみようか。




 まずは定番の剣。とは言っても俺たち子どもだと小剣(ショートソード)で、練習だから全ての武器は木製だけど。

 振り下ろしたり、横薙ぎにしたり、切り上げたりと色々やってみる。ステラもリュートさんも剣を主に使う。リュートさんはともかく、ステラも扱い方が凄かった。はてさて、ステラはどれ程の才能があるのか……。扱いについてはリュートさんに悪くないと言われた事は僥倖(ぎょうこう)かな。


 剣の後も短剣、槍、短槍、槌、短弓など色々やってみた。どれも身体的に難しい事を除いたらある程度以上は使えるくらいだったのでステラからキラキラした視線を貰った。リュートさんからも「多才だなぁ……」と微妙な顔ながらも褒めて(?)貰った。個人的にも臨機応変に対応できるのは良かったと思う。


 そんな中で一番使いやすい武器は槍系の武器だった。何と言うかしっくり来たのだ。戦術的に見れば近接武器の中で攻撃範囲が最も広く、安定した戦い方が出来るのも理由の一つではある。


「ユートの武器も決まった事だし、始めるぞ」

「「は~い」」


 それから休憩を挟みながら基礎的な使い方を教わる。攻撃方法や力の入れ方、体勢などを繰り返し行う。何事も繰り返して覚える事は大事で、リュートさんも何回もそう言っていた。


 ステラは少し前からやってるお陰か、基礎練習を終えるとリュートさんと模擬試合みたいなのをやっていた。攻撃や防御、攻撃された際の対処から反撃等をかなりの速さで。

 俺は基礎である型の練習をしつつそれを眺める。一秒の間に攻撃と防御が繰り返される光景は……まぁ、具体的には全然見えないけど。何となくそんな感じだと思う。一体どうやってステラとリュートさんは目で追って対応しているんだろうねぇ。

 今まで生活してきた中で初めてだろう(俺が見る中で)、ステラが疲れるまで続き、今日は終わりになった。


 俺もステラも汗を落とし(勿論別々で)、時間的にも昼頃なので昼食となる。昼食を終え、少し休憩したら今度は魔法の練習だ。

 と言っても魔力を操る事自体は身体強化の時にある程度やっているので、今日からは属性魔法の練習である。俺で言えば水と光、ステラなら基本属性だな。

 基本属性とは火、水、風、土の事で簡単に言うとエレメンタルというヤツだ。ほら、占いなんかだとよく使われるだろう? これと似た属性で対局属性がある。対局属性と言っても光と闇の二つしかない訳だが。他にも様々な属性があるらしいが……詳しくは教えて貰ってない。


「さぁて、始めるわよ」


 まずは属性の役割について説明される。まずは基本属性。火は殺傷力が高く、主に攻撃に使われる。水も攻撃用途はあるのだが、傷を治したり回復を早める支援としての役割が大きい。風は情報収集が主で土は防御としての役割がある。

 次に対局属性。これはある意味、基本属性の上位版だ。光は支援と防御に優れ、闇は攻撃と情報を得る事に優れている。

 ただし、基本属性にのみ、それぞれの上位版を使えるようになる事もある。火だと青火(せいか)、水は氷、風は雷、土は金剛だ。ステラの場合、才能が才能なので全て使えそうな気もするけどな……冗談じゃなく。


 将来的に、の話なので現在初心者である俺たちはまず、魔法の現象を生み出せる必要がある。要は魔力で火や水を作ったり、風を起こしたりするのだ。

 ここら辺はイメージの世界らしく、いかにリアルにイメージできるかが鍵となるそうだ。


「……こんなものかな」

「………………出来た」


 俺の少し後でステラも成功する。俺は水を、ステラは火だ。次はそれを維持する事。十分維持できれば成功だ。

 ……始めてから一時間弱。ようやくステラも十分の維持に成功した。俺は早々に終え、最後の方はこっそりと水を固くしたり粘度を持たせたりと遊んでいた。

 ステラはまたキラキラな視線でこちらを見るが魔法の基盤が早く出来た所で尊敬されるのはちょっと違うと思う。


 ステラの残りの三つも終えたら基本の魔法になる。まぁ、属性の球や矢などの簡単なものを打ち出したり、生活に活かせるように制御したりするだけだ。本格的な物は初級以上からだそうだ。

 あと、光属性はミアさんが対局属性を使えないのでまた後日という事になった。


 体力的な面でも精神力的な面でもかなり疲れているステラの為に今日はこれくらいで終わらせ、明日からは街の外で練習する事になった。






 昨夜はいつも以上に甘えられ、俺は(精神的に)回復よりも疲労した状態で翌日を迎えた。今日は武術も魔法も外でやるとの事で現在、街の外にある平原に来ている。大体、街から出て三十分くらいの場所だ。

 そう言えば街の外に出たのはこれで二度目かぁ。最初の時は森の中で死ぬかと思ったもんな……。


「体をほぐしたら型の練習だ。その後はステラとユートで模擬戦をやって貰う。実力をつけるならやっぱ実践が一番いいからな」


 リュートさんの指示で最初はストレッチ。身体が温まって来たら俺は槍、ステラは剣の基本動作を行う。突きや払い、腕の捻りを意識したりと昨日やっていた事を繰り返す。ステラも同じ様な事をしながら連続技みたいなのも時折加えている。


 それを三十分ほどやったら少し休憩。その後にステラとの模擬戦がある。たったこれだけで掻く汗の量が凄い。いくら木製とは言え、武器は武器だ。それも加えて余計に疲労しているのだと思う。平和な世界から五年以上離れても簡単には消えないらしい。……にしても鉄だと物凄く重いんだろうなぁ。



  ♈♉♊♋♌♍♎♐♏♑♒♓



「それじゃあ、準備は良いな? ……始めっ!」

「ふっ!!」


 リュートさんの合図とともにステラが物凄い速さで向かって来る。昨日の試合を見ていたお陰か多少は対処できるが反撃のはの字も出来ない。まぁ、防戦一方ってやつだ。そもそも頭が追いついても体が付いて行かないのでどうしようもないんだけどさ……。

 前後左右、あらゆる角度から様々な攻撃をしてくるし、身体強化まで使って来てはこちらも身体強化を使っても防御するのが精一杯だ。


 そんなステラの怒涛(どとう)の攻撃を何とか対処しつつ頭の片隅では先ほどの内容を思い出していた。何故ステラがここまでやる気を出しているのかを……




  ――――――――――



 木陰で休憩しているとリュートさんがこの後行う模擬戦について説明を始めた。


「ステラは知ってると思うが、ルールはどちらかが降参するまでだ。もしくは決定的な一撃を食らった時だな。後は……賭けとしての場合もある」


 見なくても分かった。ステラがリュートさんの言葉に反応したのを。そして、実際に見ると案の定、ステラは反応していた。それを見たからなのかリュートさんも微妙な顔をしている。

 そんな事は知らないとばかりにステラは元気よく手を挙げる。


「はいっ。お兄ちゃん、負けた方が勝った方の言う事を聞くって言うのはどう?」


 さっきまではリュートさんから離しを聞くために前を向いていたのに今はこちらを向き、近づけて来る。キラッキラッした目とお願いするような表情を繰り出すステラから一度目を逸らし、リュートさん達に視線を飛ばす。

 リュートさんからは『諦めろ』、ミアさんからは『やってみたら?』と返され、しかも特に否定する必要も無い。


「…………分かったよ。だけど限度はあるからな」

「は~い!」



  ――――――――――




 今回のを賭けにするのは物騒なので勝った方のご褒美という事になり、始まったのだが……よくよく考えると俺もステラもその内容を言って無いのでステラが勝った時に何をされるのか少し不安だ。

 そんな事もあり、目の前の事に上手く集中できてないからこその現状だ。集中していれば今よりかは少しマシになっていただろう。反撃の一つくらいは……。


 まぁ、どうやってもステラに勝つ事なんて無理なので最初から引き分けにしようと思っている訳だ。

 引き分けにするのも簡単だ。両者が戦闘続行できないか、戦闘の意志を捨てるかどちらか片方を両者が満たせば引き分けとなる。今回だとステラの体力切れだな。


「ふふふっ。お兄ちゃん降参しても良いんだよ」

「……兄としても負ける訳にはいかないな」


 完全なハッタリであるがステラには普通に見破られている。表情にもそんな感じが表れている。ちらっと二人を見るとリュートさんは特に変化はないが、ミアさんがちょっとニッコリしている。

 ……途轍(とてつ)もなく嫌な予感がする。そう、前に一度感じた……未来が屋上に来た時からあった感じである。ロクな事が起こらないのは体験済みなのでこれは余計に引き分けにするしかあるまい。




 ……思った以上にステラの体力が多く、先に力尽きた俺は剣の切っ先を向けられ降参する羽目になった。結果は惨敗である。








お読みいただきありがとうございました。明日、続きを出すので是非。

何か間違いがあったらご指摘してくれると助かります。

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