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プロローグ

「知らない天井だ」


眼に映るのは白い天井に書かれた『知らない天井だ』の文字。

つい反射で読んでしまったけど、なんだこれ?


どうやら仰向けで寝ていたらしい。起き上がってみるが、しかし起き上がった実感がない。


白い。


あまりにも白すぎて、地面に立っているのか、浮いているかもわからない。

天井と書いてあったから、その向きが上と判断しただけで、本当にそれが正しいのか、自信を無くしそうだ。

奥行きも、どれだけ広い空間にいるのか分からない。


「どこだここ?」


こんな不思議空間知らないぞ。


「目が覚めましたか。ここは神域ですよ」


唐突に後ろから声がする。そこには何もなかったはずなのに。

慌てて振り返るとそこには、絶世の美女がいた。20代半ばぐらいに見える黒髪の日本人ぽい顔立ち。だけど、日本人離れしたスタイルの良さ。芸能界には詳しくないけど、そんなレベルで括ったら失礼なぐらい美しい。ボンキュッボンっていうエロい身体つきだよ。

あと、服がやばい。巫女服でいいのだろうか。袴ではなく赤いミニスカートである。

コスプレのような衣装なのに、妙な似合い方をしている。


「次にあなたがするのは、お前は誰だ、ですよね。皆同じような反応をするから面白くないですね」


神域?もし、それが本当なのは目の前にいるのは、超絶美人は神様?ってことは俺は


「俺は死んだのか?」

「ええ、死にました。だから、こうして今神である私とあっています」


そうか、死んでしまったのか。でも俺はなんで死んだんだっけ。思い出せないぞ。


「雨の日の学校帰り、突風が吹いたことによって前を歩く女性のスカートが捲れました。後ろのあなたはパンツをしっかり見ようとして、後ろから飛んできた傘に気がつかず、後頭部に刺さりました」

「え、間抜けすぎるんだけど」

「刺さった衝撃であなたは一度倒れるも、その後立ち上がり一言。『パンツがよく見えなかったッ』それはもう魂の叫びでしたね」


全く思い出せないけど、それが本当ならドン引きだわ。そして、美人の口から坦々と発せられるパンツ発言に興奮するのは、懺悔するべきだろうか。


「ふむ。記憶障害があるようですね。どうやら自分の名前も思い出せないようですし、やはり脳を破損したのは、あまり良くなかったのでしょうかね」

「生前のことは確かにあまり思い出せませんが、何か問題になりますか?あっ、もしかして生前の行いを神様に告白するための場所ですか、ここは」

「いいえ、天国も地獄もありませんので、別に罪の告白なんてしなくて良いです。それに見ればそんなことはわかります。もちろん、あなたが何を考えているのかも」


え、パンツのくだりもバレてるってこと


「ええ、パンツのくだりもバレています。普通の魂は、死んだらフォーマットして転生します。ですが、時折魂が変質してしまうことがあります。そうした魂は、このように転生させずに取り除きます」


バレているもの恥ずかしいけど、スルーして話進められたよ。死にたい。


「もう死んでますよ。昔は、取り除いた魂は消滅させていましたが、最近は方法を変えました。別の世界に転生させることにしています」

「転生!なんかもうおぼろげにしか記憶は残って無いけど、しかしヲタクだった気がする俺にとっては、テンションが上がりまくるッ。転生ってことは、かわいい幼馴染みつくって、そのあとハーレム作れますか?」

「あなたは、ゴミをゴミ箱に捨てるとき、その後どうなるか考えたことありますか?」

「え?」


ゴミ?


「あなたを転生させる世界は、私はゴミ箱と呼んでいる世界。魂を消滅させるのも、めんどくさい上に、神力を結構消費してしまうんですよ。それなら、ゴミ箱に捨てるように別の世界に送り込んだ方が安上がりなんです」

「それって不法投棄って言うんじゃないですかね」

「違います。私も管理に参加している世界ですから。元々は、私を含めた多くの神が力を合わせて作った世界で、今も共同で管理しています。ある神は、もともと管理している世界への介入が必要なくなったから、またある神は、善神ではなく邪神として活動したいからなどなど、色々ありますが」

「まともな理由で参加した神はいないんですかね。ゴミ箱の代わりだと宣言している神もひどいと思いますが」

「1番まともなのは、おそらく善神ぽいことがしたいと言う邪神ですかね」

「それはそれで、安心できないんですけど」

「その世界では、1、2を争う宗教の上位神として奉られていますよ」


転生する前に、その宗教の名前だけは絶対に聞いておかないと。怖すぎる。


「あなたが転生することになる世界ですが、いわゆる剣と魔法のある中世ヨーロッパのような世界ですね。獣人、エルフ、ドワーフなどの亜人、魔物に魔族もいます」

「はあ、魔王なんかもやっぱりいるんですか?いるなら倒さないと不味いんですか?」

「ええ、います。確か今は3人くらいだったと記憶しています。ですが、魔族は、人族とは別の大陸に住んでおり、基本的には、そこから出ることが出来ないように今はなっていますので、問題はないと私は判断しています」

「つまり、問題あると考える神もいるってことですか」

「まあ、管理に参加している神の中では、魔族を滅ぼすことようなことを言う神もいます。そうした神は、自身の世界から勇者を送り込んだり、自身を奉る信者たちに神託をしたりして、魔王討伐に力を入れていますね」


なるほど、少し分かって来たぞ。


「ところで、私はどのような形で転生されるのですか?やはり人間の赤ちゃんからやり直しですか」


これによっては、ちゃんと聞いておかなきゃいけないことも変わってくるからな。

差別を受けるような種族に生まれ変わるのは嫌だ。


「ランダムです」


は?ランダムって、あのランダム?無作為に抽出的な?


「そのランダムで間違いありません。あなたもゲームをやったことがあるならご存知かもしれませんが、キャラクターをランダム作成すると、通常よりも良いスペックのキャラが出来たり、安いコストで出来たりしますよね」

「なんとなくは、でもそれって結構無駄なスペックのキャラが出来たりもしますよね」


魔法使い職なのに知力が低いとか、サイコロに何度泣かされたことか。


「基本的には、あなたの生前のスペックに上乗せする形でのランダムですので、極端なスペックにはなりませんよ。それにそれとは別に、私の加護を授けて転生させますので、大抵の人は転生後の人生をそれなりに過ごしています」


来たッ。チートの匂いがしていたぞ。


「そんなに大したものではありませんよ。授ける加護の内容としては、転生前の死ぬ理由への耐性ですから」


微妙すぎる。後頭部が強化されても嬉しく無いぞ。


「いりませ

「ありがとうございます。素晴らしい加護ですっ」


食い気味に答えておく。何に生まれ変わるか分からないなら、持っていて損はないはず。


「まあ、聞きたいことはたくさんあるでしょうけど、基本的な知識は転生時に転写しておきますので問題ありませんよ。さっき気にしていた宗教の知識もおまけでつけておきます。それにランダムとは言え、スタートは最低でも1歳です。寝ておきて食べて寝る以外にも活動できるようになり始めるぐらいですから、暇を弄ぶことはあまり無いと、聞きます」


なら安心かな。

「そろそろ時間もなくなって来ましたし、もう質問も無ければ転生させますよ」


そんなに話したつもりも無かったが、神様だって忙しいのだろう。


「まだまだ聞きたいこと沢山あったのに、もう少しだけ良いでしょうか?」

「構いませんよ。神域の時間の流れは、自由に変えることが出来ますからね。さすがに止めることは出来ませんが、地球での1秒を何十倍にも引き延ばすことなど造作もないことです」


何それ、それをチートで欲しかったんですけど。

でも、今ので確信した。


「神様、私に隠していること有りませんか」


「そんなこと有りませんよ。あなたの質問には、全て答えていたじゃ無いですか」


全く動揺した素振りも見せない。さすが神様。

でも、畳み掛けるなら今だ。


「全てに答えていたけど、全てを答えてないじゃ無いですか。

地球以外の世界の管理?それって本当に、魂を消滅させるより安いコストで出来るんですか?世界を作るのにどれだけコストがかかったのか、知りません。でも、管理するのに継続的なコストだってかかるんじゃ無いですか。

それに、俺の死因についてだって、あやふやだ。本当に死んだんですか?あなたは、俺の最期の言葉を教えてはくれましたが、立ち上がった後、未だ倒れていないじゃ無いですか。本当に、ただの事故だったんですか?」


そう、ずっと気になっていたのだ。しかし、心を読めるなら、気になっていたことになぜ答えない。

さっきから、ちょいちょい心を読んで、それに反応しているのに、これには答えない。


そこで、もしかしてと思ったのだ。

実は、神様の手違いによって未だ寿命があるのに死んでしまったから転生。

よくあるテンプレの1つだ。

だいぶ賭けだけど、合っていれば追加で何かチートが貰えるかも。


「いい勘していますね。ですが、その勘を十分に活かせないようでは、転生しても直ぐに死にますよ」


うん?

褒められたのか?

でも、なんかこれ、合っている感じがしないぞ?


「ええ、残念ながら、ほとんどが間違いだらけです。全部説明したら、あなたは恥ずかしくなって、さっさと転生させてくれと言いたくなるでしょう。ですが、全てを正し終えるまで逃がしませんので、覚悟してください」


やばい。もしかしてめちゃくちゃ怒っているのではないか、これは。


「まずは、あなたが確信に至ったと言う、時間がないと言う件ですが、これは嘘では有りません。この後別の神に会う約束をしているで。時間は確かにある程度操作できますが、それは言うなれば管理世界を遅くしているからです。私たちが普段生活しているここでは、時間の流れは一定です。ですから、管理している世界の仕事を増やさないように、遅らせることはできても、ここでの約束の時間までを遅らせることは出来ません」


恥ずかしい


「次に、あなたの死因についてですが、そもそもあなたはそれを私に聞きましたか?あなたが私に聞いたのは、生死の確認だったじゃないですか。ですから私は、死にました。としっかりと答えましたよ。確かに、死ぬ直前のことについて、少し話しましたが、あなたが余計なことを言いだして、逸れていったんじゃ無かったでしたっけ?」


恥ずかしい、恥ずかしい


「それから、心が読めるのに無視したとか考えていたみたいですけど、それってマナーですからね。なんでも人の心が読めるからって、それに対して会話したら、大抵は引かれますので、多用するものでは有りません。心を読むと言うことは、全てを読むと言うことなんです。あなた自身が認識していないようなことも、例えば、あなたは私を見ながら、ずっと犯したいと思っていたのを認識していますか?他にも、あの口に突っ込みたいだとか、処女なのだろうか、などかなり失礼な考えもありましたからね」


恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい


「まだ続きますよ。そもそもあなただって、心が読まれるといって、全てをそれで行ったわけではないでしょう。口に出すのと、内心で思うだけのもの、それを全てを読めるのに読まなかった?隠そうとしているものまで何故答えないといけないのですか?」


恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい

恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい


「挙げ句の果てに、私のミスによる、失態隠しのための転生じゃないかって?調子に乗るのもいい加減にしないと、消滅させますよ。」


恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい。



「ですが、一部は惜しいところをついていました。ですので、時間の許す限り教えてあげましょう、あなたが行く世界について」

「すみませんでした。私のような勘違い人間には、転生するような価値は有りません。どうか消滅させて下さい」

「…幼馴染とハーレム作れるかもしれませんよ」

「さあ、早く異世界の説明をお願いします」



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