第十二話 家族 Ⅲ
ヴァスティナ帝国新宰相リリカは、就任と同時に下の者たちを完璧に掌握し、帝国内の混乱を瞬く間に解決した。
女王不在で溜まっていた政務は、誰もが驚く早さで片付け、今も別の政務を続けている。今頃彼女は宰相の執務室にて、椅子に座りながら優雅に紅茶を楽しみ、政務を片付けている事だろう。
確かに彼女は優秀で、天才と言っても過言ではない。最初からリリカがこの国の政務をやっていればと、彼女の働き振りを見て、誰もが思っただろう。
だが、如何に天才の彼女であっても、帝国に訪れたあの時から、この国の政務を担当する事などできなかった。一国の宰相職など、彼女は経験した事がないのだから、そんなものは当たり前だ。
この数か月間、リリカはユリーシアやマストールなど、帝国の多くの者たちと話をし、ヴァスティナ帝国というものを知った。宰相に就任したあの日まで、彼女はずっと帝国について勉強していたのである。
この国の治め方や、友好国との関係。国民の信頼などに至るまで、あらゆる事を知ったからこそ、宰相という職務を問題なく行なえるのだ。
「リリカさん・・・・・・、いえ、リリカ宰相には感謝しています。国が大きく乱れなかったのは、彼女の御力あってこそです」
「その言葉、見舞いにあいつが来たら直接言ってやって下さい。多分喜びますから」
あのリリカが、他人に褒められて喜ぶというのが、何となく想像できない。そう思ってしまう。
「リリカはマストール宰相を手伝いながら、何度か世話になったと言っていました。そのお礼・・・・、じゃなくて借りを返したいって事だと思います、あいつの場合」
マストールが宰相として、帝国とユリーシアを支え続けた日々。
彼女は思い出す。物心ついた時から傍にいた、今は亡きあの老人との日々を。
「私にとって・・・・・、マストールは家族同然の存在でした。父も母もいない私には、マストールだけが最後の家族です。ですが、彼はもう・・・・・・」
亡き老人の死は、また一つ、彼女から大切なものを奪った。彼女は失うものが多すぎる。
「俺じゃだめですか・・・・・・」
「えっ?」
「俺が・・・・・陛下の家族になっちゃ、駄目ですか?」
話に聞き耳を立てていたメイドたちが、その場に立ち尽くす。
ユリーシアは一瞬で頬が朱に染まり、リックの言葉に耳を疑った。
「いっ、今・・・・何て・・・・・?」
「俺が陛下の家族になれば、貴女はもう一人じゃない。そしたら陛下は、もう悲しまなくて済むはずです」
「リック様・・・・でも私は・・・・・・」
「俺は貴女が好きなんです。だから、どんな形でも良いので家族になりませんか?」
メイドたちからすれば、今まさにリックはユリーシアに、愛の告白をしたと言える。
目の前で起こったラブストーリー展開に、メイド一同黄色い悲鳴を出したいのをぐっと堪え、ユリーシアの返事を待つ。
「急にそんな事を言われても・・・・・・恥ずかしいです」
「どんな形でも良いんですよ?夫役でも、兄でも弟でも、何ならペットでも良いですけど」
「・・・・・・忠犬リック様ですか?」
「そうです。忠犬にして女王陛下のペットな家族。俺は別に構わないですよ、わんわん!」
犬の鳴き真似をして見せて、犬アピールを披露して見せるリック。
盲目の彼女は見る事が叶わないが、それでも彼の可笑しさについ笑ってしまう。
リックはユリーシアを元気付けようとしている。マストールの死で悲しみに暮れている彼女だが、普段は、周りにそれを悟られないよう振る舞っている。その心情を察している彼は、何とかして彼女を笑顔にしたいのだ。
何故なら彼女は、悲しみの表情よりも、笑顔の方が似合うのだから・・・・・・。
「そう言う事なんで陛下、俺はいつでもペットになる用意が・・・・・」
言いかけて止める。彼女は泣いていたのだ。
瞼を閉じているにも係わらず、涙が少しずつ零れている。
彼女を悲しませるような事を言ってしまったのかと、状況が理解できずに慌てるリック。
「すみません陛下!無礼が過ぎました!」
「謝る必要はありません。私は、とても嬉しいんです」
彼女は涙を零しながら、微笑みを浮かべる。
儚き少女の涙の微笑み。その微笑みの美しさに、リックは目を奪われた。
「私の家族になってくれるという言葉が、本当に・・・・・・嬉しいんです」
まさか泣くほど嬉しがるとは思わず、どう反応して良いかわからないリックは、あたふたして非常に困った様子である。
メイドたちも嬉し泣き状態の彼女に驚き、同様にあたふたして、ともかく彼女の涙をハンカチで拭く。
彼女は二度も家族を失い、三度目は家族と呼べる大切な存在を失った。
家族という存在は彼女にとって、悲しい記憶を呼び起こす存在であると同時に、もう一度取り戻したい存在であるのだ。だから彼女は泣いたのだ。リックが自分の家族となって、失ってしまったものを取り戻してくれる事が、どうしようもなく嬉しくて・・・・・・。
「ほっ、本当に俺が家族になっても良いんですか・・・・・?」
「貴方が言い出した事です。撤回は許しませんよ?」
涙を拭かれた彼女は、小悪魔的な笑顔を浮かべて、前言撤回を許さなかった。
己の主である女王に、家族になろうと愛の告白をしたとして、この話は瞬く間にメイドたちにより、ヴァスティナ帝国城内に広まってしまう。
この後リックは、「女王と結婚するってほんとか、おい!!」とか、「正妻はユリユリでも良いけど、僕を側室にしてくれなきゃ駄目だからね!」などと(主に雷剣士と天才狙撃手)に言われる事になる。
まあ、これはまた別の話で、この話の詳しい内容は、いつの日かに語られる事もないだろう。
それから十日後。
「エステラン国の動き。これは間違いなく、南ローミリアへの侵攻と見ていい」
帝国軍専用会議室。
ここに集まっているのは、参謀長配下の主だった面々である。
軍師エミリオ・メンフィスがいつも通り、現在の状況について説明を始める。説明を聞かなければならない、この場の面々は皆一様に溜息。理由は簡単で、彼の説明は長いのである。
「現在帝国国内は、リリカ宰相の活躍もあり安定している。しかし、国外は別だ」
「ふふ、説明を頼むよ」
「また居眠りしないで下さいね。周辺諸国の動きについては、この前話した通りだよ。その中で最も怪しい動きを見せているのが、例のエステラン国さ」
ヴァスティナ帝国の周辺国家。帝国の周辺にはチャルコ、ネルス、へスカル、ハーロン、ケルディウス、ビオーレと言う、六つの友好国が存在する。
友好国とはこれまで通り、安定した関係を継続させている。問題は南ローミリアを狙う、チャルコ国の隣国エステラン国だ。
先の大戦で戦ったジエーデル国も、エステラン国と同様に危険な存在である。だが、旧オーデル王国を占領している、ジエーデル国侵攻軍は現在、エステラン軍相手に防衛線を展開して、両軍何度も激突している。
ジエーデル軍の指揮官は名将ドレビン。彼の指揮によって、エステラン軍は防衛線の突破ができず、戦線は膠着状態に陥っているのだ。
そのエステラン国に、ジエーデル軍攻撃以外の別の動きがあると、エミリオ旗下の諜報部隊の活躍でわかった。
チャルコ国との国境線付近に、密かにエステラン国軍が集結しているという。軍団の規模は約三千。この軍団が侵攻すれば、少なくとも軍事力の少ないチャルコ国は、簡単に蹂躙されてしまう事だろう。
友好国が攻撃を受けた場合、帝国はすぐさま援軍を出さなければならない。まして、敵軍が国境線に展開しているというのであれば、チャルコ国防衛線強化のためにも、帝国の戦力を向かわせなければならないのである。
でなければ、小規模の騎士団が戦力の中心であるチャルコは、エステラン軍三千とまともな戦いもできない。
「この時期にエステラン国が動くのは妙だ。まだあの国はジエーデルとの戦いを続けている。こちらへ侵略してくるだけの戦力的余裕は、全くないはずなんだ」
「でも実際は、侵攻を企てる動きがあるわけだね」
「その通りです。宰相はどう見ますか?」
「形振り構わず自棄になっているわけではなさそうだね。何かしらの策が在るのかも知れないと、私は見るよ」
説明を聞く者の一人、宰相リリカは自身の考えを口にする。
エミリオもそう考えており、彼女の言葉に頷いた。
「何かしらの策ですか・・・・・・」
「おい、脳筋じゃあいくら考えてもわかるわけねぇだろ。馬鹿かお前?」
「・・・・・・剣を振りまわすだけしかできない、破廉恥馬鹿には言われたくない」
「てめぇ、一回死んでみるか?」
「死ぬのは貴様だ」
犬猿の仲であり、どうしようもなく仲が悪い二人。
槍士レイナ・ミカズキと剣士クリスティアーノ・レッドフォードは、お互い火花を散らして睨み合っている。この二人がいると必ず喧嘩が発生し、いつも切りがないため、最早誰も喧嘩を止めない。
喧嘩し始めた二人を無視し、説明は続いていく。
「反女王勢力の貴族たちの動きも気になる。女王陛下が療養中のこの状況は、エステランにも貴族たちにも都合がいい」
「両勢力の存在は帝国を脅かしかねない。ふふふ、この二つの勢力は裏で繋がっていそうだね」
リリカの感に間違いはなかった。
エミリオが掴んだ情報によると、反女王勢力の貴族たちは、裏でエステラン国と通じ、密かに同盟関係の様なものを築いているという。
これは確実な情報ではないが、もし事実であれば、今回のエステラン国の動きには、何らかの策があるという事になるのだ。
しかしだからと言って、帝国の貴族たちを国家反逆の疑いがあるとして、全員を捕まえるというわけにもいかない。まず証拠が必要であるし、何より反女王勢力と言っても、彼らは帝国各地の領土を治めている貴族である以上、下手に捕まえれば国民が動揺する恐れがある。
例え貴族であろうとも、女王に逆らう者は捕らえられる。女王に逆らう事も意見する事も許されず、この国に自由はない、等と言う話が広まれば、帝国女王の信頼を失う危険性があるのだ。
下手に権力のある者に手は出せない。それはエミリオ自身もわかっている。
せめて証拠でもあれば、彼らを一斉に捕縛する事もできる。今まではこちらから手を出さずにいたが、このまま野放しにしては、近い将来必ず帝国の害となる。
それを理解しているエミリオもリリカも、貴族たちを排除したい気持ちは同じであった。
貴族たち反女王勢力は、女王に絶対の忠誠を誓うリックの敵なのである。それはつまり、二人の敵という事でもある。エミリオからすれば、リックは親友と呼べる存在であり、自身を唯一認めてくれる主人であるのだから、主人の敵は排除したいという気持ちが強い。
「貴族たちの動きには目を光らせます。特に、マルクル・ビル・ヌーヴェルには注意が必要です」
反女王勢力の筆頭である貴族の名前。ヴァスティナ連合軍戦勝の宴が思い出される。
帝国貴族マルクルに動きがあれば、それは女王に害が及ぶ計画がある事を意味する。彼を一番に警戒しているエミリオは、その行動などを部下に調べさせ、不穏な動きがないか常に目を光らせている。
今のところ変わった報告は彼に届かず、マルクルは他の貴族たちと偶に会う程度で、不穏な動きはないと報告されていた。
「それでエミリオ、俺たちは何をすればいい?」
会議室でエミリオとリリカの会話を聞いていた、二人の男がようやく会話に参加する。
帝国軍の精鋭であり、元傭兵部隊の隊長ヘルベルトとロベルトが、自分たちの仕事を教えろと、痺れを切らしてヘルベルトが口を開いたのだ。
「では説明しようか。ヘルベルト旗下の部隊は帝国の守備を、ロベルト旗下の部隊には偵察を任せようと思う」
貴族たちとエステラン国の動きを考え、万一のための防衛戦力として、精鋭のヘルベルトの部隊を帝国の守備に置く。
偵察や工作が得意なロベルト旗下の部隊には、チャルコ国国境線に集結している、エステラン軍の戦力と行動目的を探る、偵察任務を任せようと彼は考えていた。
それだけではない。ロベルトの部隊には可能であれば、陣地を構築しているであろうエステラン軍の、敵陣地内調査を行なわせようとしていた。
簡単に言えば、夜間にエステラン軍陣地に侵入して貰い、情報収集を行なわせるのだ。勿論危険な任務であり、ヴァスティナ帝国軍の痕跡を残してはいけない任務である。だが成功すれば、敵軍の目的を知る事が出来るのだから、得られるものは大きい。
痕跡を残してはならない理由は、エステラン軍に侵攻の大義名分を与えてしまうからである。
具体的には、帝国軍装備などを現地に放棄して、この襲撃がヴァスティナの仕業だと知られれば問題なのだ。
そのためロベルト旗下の部隊には、帝国軍で採用されている装備ではなく、先の戦いでいくつか回収された、ジエーデル軍装備を使用して貰おうと考えている。
剣や槍、盾や甲冑などは、国によって見た目や性能が違う。国によって運用目的や戦術が違うのだから、これは仕方のない事である。それはつまり、ジエーデル国の装備を使用すれば、陣地に侵入を果たしたのが、帝国ではなくジエーデルと思わせる事もでき、もし気付かれて抗議されても、帝国は無関係だと白を切れる。
「ロベルトさんには前もって話してある。準備は万全ですか?」
「問題ない」
「敵陣地への偵察。危険な任務ではありますが、どうかお願いしたい」
「任せておけ。こう言う危険な戦いは血が滾る。我らの力の見せ所だ」
ヘルベルトたち鉄血部隊と同じく、ロベルトの部隊の者たちもまた、戦いに飢えた獣だ。
戦場こそが自分たちの帰るべき場所であり、戦いこそが生き甲斐である。危険な任務であれば、戦いのスリルは大きくなり、彼らの欲求を満たす事が出来るのだ。
ロベルトはエミリオに任務を頼まれてからずっと、傭兵の血が騒いで仕方がない。
そんな彼を羨ましそうに見ているのは、勿論ヘルベルトである。
「ちっ、俺は留守番かよ」
「我が戦友よ。女王を守るのも立派な任務だろう」
「そりゃあそうだが・・・・・、俺は護衛とか苦手だ。敵に突っ込んでって荒らしまわる方が性に合ってる」
とは言いつつも、女王を守るため帝国の守備に就く事に、彼は文句はない。護衛が苦手というのは本当だが、彼もまた他の者たちと同じように、女王の身を案じているのだ。
自分たちを毛嫌いせず、人として扱い、優しさを与えてくれた。そんな彼女を守り抜きたいという思いは、戦いに生きる戦争中毒者の彼らにもある。
「エミリオ、私は何をすればいい?」
「俺の仕事は何だよ。まさか留守番じゃねぇだろうな?」
「二人には待機していて貰いたい。ただ、いつでも出撃できるよう準備をして欲しい」
現在の状況は、いつ何が起こってもおかしくはない。
その時緊急展開し、事態を収拾出来る戦力は、今現在レイナとクリスだけである。レイナとクリス以外の、帝国参謀長配下の主だった他の面々は、それぞれ別の任に就いているからだ。
帝国軍の鉄壁ゴリオンは、ネルス国周辺に現れた野盗軍団相手に戦うため、部隊を率いて同地域に向かっている。
ネルス国は以前から、野盗や盗賊の被害が多く、これらの対処に手を焼いていた。
そして、季節は今や秋であり、冬は順調に迫ってきている。野盗や盗賊たちは今年も冬を越すため、互いに手を組んで、ネルス国周辺の村々を組織的に襲いだしたのだ。
事態を重く見たネルス王は、友好国盟主ヴァスティナ帝国に救援を依頼し、これに志願したのはゴリオンであった。
彼は身勝手な者たちのせいで、罪のない人々が苦しめられている事に我慢できず、救援部隊に名乗りを上げたのである。そんな彼の強い意志を汲み取り、リックは救援部隊を編成し、指揮官をゴリオンと定めた。
さらにこの部隊には、先の戦いで友好国の味方部隊を救い、敵軍精鋭部隊の一人を討ち取った、帝国軍第四隊所属のセリーヌ・アングハルトも加えられた。精鋭二人を向かわせ、迅速に事態を収拾させようとしたのである。
今頃、ゴリオン旗下の部隊はネルス国に到着し、事態の収拾に務めている事だろう。
帝国軍天才狙撃手のイヴ・ベルトーチカは、帝国のさらに南の大森林に発生した、魔物の討伐にあたっている。ケルディウス国とビオーレ国との合同で、大森林に大量発生した魔物を討伐し、周辺の村や町への脅威を取り除こうとしているのだ。
イヴが向かった理由は、単に現地が人手不足であったからと、銃を使用する新たな兵士の育成のためでもあった。
イヴを隊長として編成された、銃火器使用の特別部隊。彼らはヘルベルトたちと同じように、今後の帝国軍主力兵器となるであろう銃火器を、イヴの教えのもとに、運用できるようになる事を目的とした部隊である。
銃の一通りの運用方法は習っていたが、彼らは実戦での運用がまだであった。そのため、実戦経験を積ませる事を目的に、イヴを隊長としたその部隊は、友好国支援を名目に、現地へ派遣されたのである。
大量発生した魔物の種類は、小型種が多数と中型種が少数であり、実戦経験を積むには比較的危険が少なく、絶好の機会であると考えられた。将来の戦力増強を考え、この機会を利用するため、リックがイヴに命令を下し、現在大森林の方では、魔物との戦闘が行なわれている。
報告によれば、魔物は想定よりも数が多いため、時間はかかっているものの、討伐は順調であるという。イヴの部隊の損害は皆無で、持たされた弾薬の続く限り、銃火器運用の実戦経験を着実に積んでいるそうだ。
ちなみに魔物の種類だが、小型種は昆虫型の魔物で占められ、中型種は爬虫類の様な姿をした生物である。どちらもそれほど強くはなく、訓練された兵士ならば問題はない。
かつてリックたちが戦った暴食竜などと比べれば、赤子の様なものだろう。
「ゴリオンやイヴは帝国を離れているし、シャランドラは工場で開発に忙しい。騎士団長旗下の帝国騎士団と、ヘルベルト旗下の部隊を帝国の守備に当てるから、レイナとクリスには敵の侵攻があった場合の迎撃戦力として、今は待機していて欲しいんだ」
「それはリック様の命令でもあるのだな?」
「無論そうだよ」
「なら仕方ねぇぜ。今は大人しく待機しといてやる」
参謀長の両腕であり、帝国軍最強の戦力。それがレイナとクリスだ。
万が一、エステラン軍三千の戦力が侵攻を開始しても、この二人を筆頭にした千人の戦力を向かわせれば、敵軍を打ち破る事は難しくないと、二人を正しく分析しているエミリオは、そう考えて待機を命じた。
当然二人の反発を考えて、二人が忠誠を誓うリックに許可を取ってである。その辺に抜かりはない。
「そう言えばリック様はどこに居られるのだ?朝から御姿を見ていないのだが・・・・・・」
会議室にリックの姿はない。このような場に居なくてはならない存在が、今日は姿を見せていないのである。
「どうせ、眼鏡軍師の説明から逃げたんだろ。説明長過ぎるからなこいつ」
「そうかい?でもリックは私の説明を、いつも喜んで聞いてくれるよ。勉強になってありがたいと言ってね」
「うげ、マジかよ・・・・・・」
リックの居場所を知る者はいない。
だが、リリカだけは、彼が今どこにいるのか予測できていた。
マストールが死に、ユリーシアが倒れた今、苦しんでいる彼の心が向かう先は、一つしかないのだ。
(さて、彼女は上手くやってくれるかな)
妖艶な笑みを浮かべたリリカは、自分の脳裏に浮かぶ銀髪の女性に問いかける。
リックへと抱く思いの正体は見つけられたのかと・・・・・・。




