第七話 侵略者 Ⅳ
今日もヴァスティナ帝国は、普段通りの、平穏な日常を送っているかに見える。
しかし帝国軍内部は、迫り来る脅威に対して、密かに準備を進めていた。
「状況はあまり良くない。ジエーデルの動きは活発になっているから、間違いなく侵略しにやって来る」
新しく用意された、帝国軍専用会議室。
会議室というよりも、学校の教室のような部屋であり、机と椅子が用意されている。教壇が設置され、黒板もあるのだから、会議よりも、授業が始まりそうな部屋だ。
その教壇に立ち、集めた帝国軍主要な者たちへ、説明を始めているのは、参謀長の頭脳である軍師エミリオである。彼の視界には、椅子に座っている、軍幹部と言える者たちの姿が映った。
参謀長の両腕であるレイナとクリス。発明家のシャランドラ。鉄壁の巨漢ゴリオン。天才狙撃手イヴ。元傭兵部隊を指揮するヘルベルトとロベルト。参謀長専属メイドのメイファ。そして、帝国最強と最凶のメシアとリリカ。
肝心の人物はいないが、時間も惜しいため、会議は始まった。
「知っての通り、大国オーデル王国は滅亡した。二度の敗戦と国王の戦死で、内乱状態になっていたところを、ジエーデルに攻め込まれて、成す術が無くね」
ヴァスティナ帝国に二度も侵攻したオーデル王国は、元々政治の乱れによって、国内が反王政に傾いていた。事態を解決するために、帝国を攻めたは良いものの、結果は、次期国王の王子と現国王を失う形となった。これにより、国内では暴動が発生。武装した過激派勢力などは、王国軍相手に、国内で武装蜂起を起こした。
国内が戦闘状態となり、収拾がつかないほど乱れた王国。これに狙いを定めたのが、急成長を続ける独裁国家ジエーデルである。
宣戦布告もなく、突如として軍を王国に進軍させたジエーデルは、瞬く間に王国の防衛線を突破。王国内に進軍し、王族も国民も関係なく蹂躙したのだ。
「王族は全員処刑されたという話だけど、噂では生き残りがいるという話もある。国民の多くは、強制収容所に連行されたそうだ。逆らう者を皆殺しにしてね」
「随分と下衆い国家じゃねぇか」
「独裁国家ジエーデル。噂には聞いていましたが、戦争で捕らえた民を収容所に連行するというのは、本当だったのですね」
「そうだよレイナ。クリスの言う通り、下衆な国家と言えるかも知れない。強制収容所では日々、多くの人間が強制労働を強いられ、劣悪な環境下で、毎日のように死人が出るという話だ」
占領した王国内に、新たな強制収容所を作り上げ、そこに王国の国民を連行したジエーデル軍。ここでは日々、強制労働や拷問が行なわれているという。ローミリア大陸広しと言えども、ここまで悪行を行なう国家は存在しないとして、独裁国家ジエーデルの非人道的な行ないは、大陸中で有名となりつつある。
「問題なのはこれからだ。敗走したオーデル王国軍の多くは、ジエーデル軍に降伏した。でもね、一部の残党が降伏を拒否して、へスカルの領内まで後退してきた」
「へスカルって王国に最も近い国だよな?帝国と友好関係の」
「まずいなそれは」
ヘルベルトの言う通り、へスカル国はヴァスティナ帝国周辺の友好国である。
その友好国に、オーデル王国軍の残党が逃げ込んだという。これは危険な事態であると、ロベルトはすぐに理解出来た。
ジエーデルは、南ローミリアの征服を目論んでいる。手始めにオーデル王国を攻め、侵攻の足掛かりとしたのだ。王国軍残党がこの地に逃げ込んだという事は、ジエーデルに侵攻の大義名分を与える事になる。
残党追撃を言い訳に、へスカル領内へと侵攻し、南進のための前線基地を設置する。残党を処理した後は、満を持して侵略を開始するのだ。
「残党の規模はおよそ千人。王国軍の多くは烏合の衆だったけれど、この残党軍は、一応精鋭部隊だったらしい。それでも、鉄血部隊の方が実戦慣れしているとは思うけどね」
「どうするんやエミリオ。このままやと独裁国家が来てまうで。残党を追い出すんか?」
「今更手遅れだと思うな~。戦うしかないって感じじゃない?」
戦争は避けられない。
ジエーデルが初めから侵略を考えている以上、交渉の余地はないだろう。シャランドラの言うように、たとえ残党を、へスカル領内から追い出したとしても、適当な口実をつけて、必ず侵攻を開始するはずだ。
戦いは確実だと感じるイヴは、大きな戦闘になる予感を覚える。オーデルを超える脅威。大軍で攻めて来るであろうジエーデルに対し、どう立ち向かうのか。激戦になる事は必至である。
「戦争になるのは確実だ。そして、この時を私は待っていた」
「知ってたんだか?敵がくることを」
「予測の一つだったよ。あの国なら、侵攻も時間の問題だとね」
「流石は軍師様です。ご主人様と参謀長の職を交代なさった方が宜しいのでは?」
「君は本当にリックだけには厳しいね。あんまり言うと、彼が泣いてしまうよ」
ゴリオンとメイファは、戦いを予期していたエミリオに、尊敬の目を向ける。
軍師として、大陸全土の国家の状況を、常に調べていた彼にとって、この程度の事態は、予測の範疇であった。中でも、活発な動きを見せていたジエーデルについては、特に入念に調べたのだ。
「前回私たちは、チャルコとエステランの政略結婚を阻止した。あの時リックは、私の情報をもとに作戦を決行した。エステラン周辺の国家に動きがあるという情報。あの国の隣にはジエーデル国があるんだ」
「なるほどね」
「そういう事か」
「お二人は理解出来たようですね。エステランとジエーデルは長年の敵対関係。動きが活発となり、侵攻開始の予兆に気付いたエステランは、政略結婚どころではなくなった。だからあの国は、あっさりシュタインベルガーを手放したというわけさ」
エステランの隣国はジエーデルである。独裁者による一党独裁で国がまわっているこの国は、長い間エステランの領土を狙っていた。そのため、度々侵略行為を行ない、国境線で何度も戦ってきた。
今まではエステランの対ジエーデル防衛線が堅く、突破される事はなかったのだが、近年急成長を続けるこの国は、軍事力も飛躍的に向上し、エステランの戦力を上回るまでになっている。
隣国が自国の領土を狙い、しかも強力な戦力を持っている。そんな国が活発な動きを見せたとあれば、黙っていられるわけがない。帝国のせいで結婚を妨害され、本来であれば報復に動きたいところであろうが、それどころの状況ではないのだ。だからリックは作戦を実行出来た。エステランが動けないとわかったからだ。
感の良いメシアとリリカは、すぐにその事を理解し、二人だけ納得している。この二人の感の良さには、エミリオも驚かされる。
「前置きはこの位にして、本題に入るとしようか。と言っても、会議を始めようと言い出した、肝心の人物がいないけどね」
「皆様申し訳ありません。使えない我が主がご迷惑をおかけしてしまって。次からは首に縄を付けて監視しますので、どうかご主人様をお許し下さい」
「メイファちゃん、自分が許されるよりリック君を優先するんだ♪♪デレ期到来かな」
「・・・・・・あり得ません。私はただ、自分の監督不十分の責任を取ろうと----」
「嘘つきな可愛い子はこうだよ」
「リリカ様!?やめっ、んっ、んんんんっ・・・・!」
メイファの背後から忍び寄り、後ろから腕をまわして、彼女を抱きしめたリリカ。耳元に息を吹きかけ反応を楽しみ、穢れを知らない少女の首筋を、ねっとりと舐めまわす。妖艶でやらしく、少女を弄ぶ。
敏感なところを舐められ、喘ぎ声が出そうになるのを必死に堪える。
そんなメイファの姿は、誰が見ても、エロい。
(リック様がここにいなくてよかった・・・・・・)
(絶対あいつ興奮するだろうな。だから変態だって言われるんだ)
(いい組み合わせやわ~。これで本だしたら売れるんちゃうやろか)
約一名、商売利用を考えてはいるものの、誰もがこの場に、リックがいない事を幸運に思った。
もし居れば、メイファの身が、益々危険に晒された事だろう。誰もがそれを、ちゃんと理解していたのだ。
「りっ、リリカ様!いい加減に・・・・・ひゃんっ!?」
「ここがいいんだね。もっと私に、君の可愛い声を聞かせておくれ」
「待て待て姉御!それ以上はやばい。俺たちが目のやり場に困る」
メイド服を少しずつ脱がしていきながら、少女の耳を甘噛みするリリカを、慌てて止めに入ったのは、意外にもヘルベルトであった。
普段物静かな少女から聞こえた、可愛らしい悲鳴。メイファの頬は朱に染まり、感じさせられ息も荒い。改めて一同、帝国最凶の力を思い知った瞬間であった。
ヘルベルトのおかげで、何とかこの妖艶な美女から解放されたメイファは、ふらふらと、親友であるイヴのもとに逃げ延びる。イヴは倒れそうになる彼女を抱きとめ、リリカのもとから離す。
「リリカ姉様!僕の親友にいやらしい事しないで。やるなら僕もまぜてくれなきゃやだよ!」
「はあ、はあ、はあ、・・・・イヴさんはどっちの味方なんですか・・・・」
「ほら、やっぱり可愛いものは苛めたくなるでしょ♪♪」
「話が脱線したけど、そろそろ再開してもいいかな?リリカさんもイヴも、いい加減お願いだよ」
明後日の方向に話が逸れ、溜息をつきながら、会議を再開しようとエミリオが口を開く。
とりあえずリリカは満足したらしい。これ以上メイファに手を出す気は無いようで、話を再開してもよさそうな雰囲気となる。
「やっと本題に入れるよ。それでは、対ジエーデル戦略構想について話すからね」
「リックはいねぇが、始めていいのかよ?」
「大丈夫だよ、彼とは昨日話したから」
「ではエミリオ、話を始めてくれ」
「わかりました騎士団長。確実に侵攻を開始してくるジエーデルに対し、帝国は全友好国と共に迎え撃つ構えだ。既に女王陛下は友好国と連絡を取り、ジエーデルの危険性を訴えて、軍を起こす準備をさせている」
オーデル王国滅亡の知らせをリックが知った後、その情報は帝国内を駆け巡った。
当然女王である、ユリーシア・ヴァスティナの耳にも、その知らせは届く。事実を知った彼女は、すぐに行動を起こし、軍師であるエミリオが指示を出すまでもなく、各地に書状を送り出した。
手紙の内容は、ジエーデルの危険性についてだ。このままあの国が侵攻を開始すれば、確実に帝国も友好国も蹂躙される。そうなる前に、手を取り合い、共に迎え撃とうという内容の手紙を、全友好国に出したのだ。
全ての友好国はこの手紙に応え、軍を動かす準備を始めた。どの国も、ジエーデルの動きを脅威と感じていたのだ。だが、友好国は全て小国。軍事力は帝国よりも小さい。
しかし、大国オーデル王国を二度も退けた帝国が、共に戦おうと言うのだ。絶望的な戦力差に、彼らは希望を持った。だからこそ、侵略者を倒すため、彼らは立ち上がる。
「独裁国家ジエーデル対、ヴァスティナ連合軍。情報によれば、侵攻してくるであろうジエーデルの戦力は、兵力約一万五千。対して連合軍は、兵力約三千」
「戦力差五倍やんけ!」
「ジエーデルの予想される戦力だけど、歩兵部隊を主力に、騎兵部隊も相当数いるはずだ。さらに、魔法を使える者を集めた、魔法兵部隊も出してくるだろうね。切り札は、魔法兵部隊の中でも特殊な者を集めて構成された、精鋭魔法部隊。最低でもこれ位は出てくると思うよ」
大きな国家にもなると、自国領内で魔法を使える者を徴兵し、魔法攻撃によって、敵を殲滅する事を目的とした、魔法兵部隊を設立する。
魔法を使える者自体が、珍しい存在であるが、国の人口が多ければ多い程、魔法を使える者が生まれる確率は高くなり、このような部隊の設立も可能だ。大国の多くは、人口の多さを利用し、対魔法戦のための軍備を拡大している。
ジエーデルは大国に倣い、魔法兵部隊を設立し、その規模を大きくしていった。しかもこの国は、先のオーデル王国との戦いで、王国軍の魔法兵部隊を捕虜にし、今では自軍の一部にしてしまっている。ジエーデルの魔法兵部隊の規模は、数の上では大国に匹敵するのだ。
ちなみに、王国軍は帝国との二度目の戦いで、実は魔法兵部隊の一部を投入していた。最も、彼らが活躍する前に、リックたちの活躍によって戦闘が終わってしまい、この部隊が暴れる事はなかったのである。
「敵は恐らく、宣戦布告なしの電撃的な奇襲で、部隊を展開してくるはずだ。一点集中ではなく、軍をいくつかに分けて、複数の国を同時に攻めると思う。そうして帝国の周りを全て蹂躙し、最後に戦力を集結させ、一気に私たちを攻める作戦だろうね」
「何故そうだと考える、軍師殿。兵力差に任せて雪崩れ込んでくる可能性もあると思うが」
「確かに、ロベルトさんの言うように、数をもって力技で攻めてくる可能性もある。下手な作戦を考えるより、その方が確実だからね。だが、敵はオーデルの失敗を知っている。帝国を過小評価していないはずだ」
戦いは数で決まる。
犠牲を承知で大軍を敵にぶつけ、数で押し切れば、戦争は勝利出来る。相手が大量破壊兵器でも持っていない限りは、数を揃えた方が有利である。
勿論、作戦というのは戦いにおいて重要であり、なくてはならないものだ。しかし、作戦とはあくまで、戦闘の基本方針でしかない。戦況によっては、何重にも考えられた策などが、全く機能しなくなる事も多いのだ。
今回の場合も、敵は帝国以上の数を揃えている。戦力内容も充実しており、オーデルのような烏合の衆ではない。強力な戦力を有した敵だ。
そんなジエーデルであれば、こんな小国連合など、数で押すのは容易い。数で押せば、短時間で全ての国家を滅ぼせるだろう。そうしないのは、大軍で帝国を攻めたオーデルが、二度も敗走した事実を知っているからだ。
帝国は侮れない。数で押すだけでは苦戦は必至だと、どんな国家でも考えるはずだ。
一度目は二万五千人で攻め、二度目は五万もの大軍で攻めた。そんな王国軍が、二回とも小兵力に敗走したのだから、帝国の戦力を過小評価してはいけない。そう考えるのは当然だ。
故にエミリオの考えでは、ジエーデルはまず、帝国に味方する国家から討つと推測している。帝国に味方するであろう戦力を全て潰し、帝国を丸裸にした後、戦力を一点集中して数で攻めるのだ。
ジエーデルからすると、今のまま無策で攻めれば、帝国と周辺国家が連携し、厄介な防衛線を敷かれる可能性が高いとわかる。だからこそ、確実に帝国の戦力を削ぐため、周辺国家の攻略が不可欠なのだ。
「敵の作戦はわかっている。推測ではあるけどね。連合軍は、例のオーデル軍残党も味方にして戦うつもりだ。これで兵力は約四千。私はこの四千人の軍を、敵軍と同様に分ける」
「敵が戦力を分けるのであれば、こちらは一点集中で敵大将の首を狙うのではないのか?」
「今回はそうもいかない。敵の魔法兵部隊が強力だからね。正面から挑むのは危険だ」
「これだから脳筋槍女はよう。力技しか知らねぇ」
エミリオは会議室の黒板に、予想される敵戦力の配置と、こちらの展開を描いていく。
描かれた黒板の図には、敵の進軍するであろう、予想進路が描かれた。
「まず、敵は軍を三つに分けるだろう。第一軍はへスカル、第二軍はネルス、第三軍はハーロンをそれぞれ攻めるはずだ。電撃的にこの三つを攻略し、休む事なく、チャルコを含めた残りの国を攻める。最後は集結して、帝国へ攻め上るのが予想されるね」
「へスカルとかの戦力はどの程度なの?」
「数で言えば、帝国騎士団並みか、それ以下だよ。攻められたら三日ともたないね」
「てっ、帝国騎士団って何人なんだな?」
「騎士団長の話だと、今は四百人程だよ。ゴリオンが心配するように、帝国以外でまともな戦力を持っている国は少ないんだ」
チャルコ国が最も軍事が遅れているのだが、この三つの国家も、戦力は心もとない。
帝国騎士団規模の戦力しか持ち合わせておらず、錬度は帝国以下なのだ。三日ともたないであろう。
「敵が三つに軍を分けるのは、帝国以外の国の戦力規模を把握しているからだ。あの国は、諜報活動にも力を入れているみたいだからね。それ位は把握しているだろう。三つに分ける理由は二つあって、一つは、一万五千全軍を使わなくとも滅ぼせるから。もう一つは、同時に三つの国を攻めて、こちらを混乱させるためだ」
早期決着という理由もあるだろう。
しかし大きな理由は、エミリオが予想したこの二つだ。戦力が多ければ勝算が上がるのは勿論だが、この三つの国は、二千の兵力でも打ち破れるだろう。帝国が参戦してくれば厄介になるだけで、他の小国は、敵にとって小石のようなものでしかない。
だが万全を期して、敵は軍をそれぞれ五千人ずつで分け、同時に三つの国を攻めるのだ。さらに分けて、チャルコなどにも侵攻出来るだろうが、帝国の反撃を考え、この分け方で来ると予想されている。
旧王国領に近いへスカルと、隣国のネルスとハーロンを攻め、奇襲効果で、帝国軍などを混乱させるのが目的だ。その混乱に乗じて、一気に勝負を決めるつもりだと、軍師エミリオは推測している。
「よって私たちは、友好国を守るためにも、敵同様に軍を三つに分ける。帝国軍と帝国騎士団合同の作戦展開になるから、連携を取る際は気を付けて欲しい」
今更ながらの話だが、帝国軍と帝国騎士団は、それぞれ独立した戦力である。
帝国軍は、敵国への侵攻や防衛などを主任務とする軍隊だ。対して帝国騎士団は、女王陛下を守護する事を目的とした、武装警備部隊である。
リックが帝国に来て、参謀長に就任するまで、帝国軍と騎士団の役割はあいまいとなっていた。メシアの存在があったため、軍も騎士団も彼女が指揮をし、本来は軍の仕事である野盗討伐なども、騎士団と合同でやっていたのだ。
今まではそれで問題はなかったが、リックはメシアとエミリオと相談し、軍と騎士団を分けて、完全に独立させた。今後の部隊展開を考えれば、そうしなければならなかったからである。
元々これについては、女王とメシアが前から話し合っており、形だけは出来ていた。故に、女王はリックたちの意見をあっさりと承認し、以降帝国軍と帝国騎士団は、全く役割の違う組織となったのである。
「さて、気になる軍の分け方だけど------」
「待った!これから作戦について話すんやろ?気になったんやけど、その話ってどれ位かかるんや?」
「うーん、夕方までには終わると思うけど」
「マジかよおい!今昼だぞ、どんだけ長い説明だ!」
まだまだ話し足りないように見えるエミリオと対照的に、考える事が苦手な帝国軍面子は、少々へばってきていた。正直、椅子に座って難しい話を聞き続けるのは、彼らにとっては苦行なのだ。
説明が嫌になっているのは、レイナ、クリス、シャランドラ、ゴリオン、イヴ、ヘルベルト、ロベルトの七人である。
「リックは昨日、私の話を全部聞いてくれたよ。朝から夕方まで」
「嘘やろ!?ほんまかいな!」
「流石はリック様・・・・・・」
「君たちに対しての説明は、昨日の説明を省略したものなのだけど」
「冗談だろ・・・・・・」
会議はまだ始まったばかり。
軍師エミリオの作戦会議は、これからが本番だ。
「説明を再開するよ。よく聞いておいて欲しい」
「「「「「「「はあ・・・・・・・・・・」」」」」」」
七人の溜息など関係なく、説明は再開された。




