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第六話 愛に祝福を  後編 Ⅲ

 その頃、結婚式を挙げる式場では、慌ただしく準備が行なわれていた。

 式は城の中ではなく、チャルコ国の伝説の神を祀る、神聖な神殿で行なわれる。この国の伝説で、古くからこの地を守る、大地の神の話があり、その神が、この土地に豊かな恵みを与えてくれていると、信じられているのだ。

 その神を崇め奉るために、初代チャルコ王が神殿を造らせ、以来王族の儀式の時は、この場所が使われるのである。神聖な場所であるから、王族の儀式という国の大事には、最適な場所である。神に祈りを捧げ、神に祝福されようという、王族の願いが込められているのだ。


「しっかし古い建物だぜ。こんなところで式やるのかよ」

「歴史ある建築物というものか。私にはよくわからないが」


 神殿の外から建物の古さを観察し、慌ただしく準備を進めている人々を眺めている者が、二人いる。

 ヴァスティナ帝国軍参謀長の両腕である、槍士レイナと剣士クリス。彼らは手伝いをするわけでもなく、ただ神殿を観察していた。勿論理由がある。これも二人の主人である、リックの作戦の一環。所謂下調べなのだ。

 当日の式場の様子、警備のための騎士の人数や装備を確認し、建物の構造も含めて、頭の中に入れておく。二人はこの式場と、直接関わる役目はないが、作戦でもしもの事があった時のために、こうして自分と関係がない地点も、下調べしているのだ。

 これは、念には念を入れるリックの考えであり、命令でもある。


「警備も大した事ねぇし、これなら心配いらねぇだろ」

「やはり、私たちがやるべきなのでは・・・・・・」

「あいつが一人でやるって言いやがったんだ。仕方ねぇだろうが」

「それはそうだが、いくらリック様でも一人では・・・・・・」


 二人は、この後の作戦の話をしている。

 結婚式には、当然警備の人間が立つ。作戦成功のためには、式場の警備状況が重要であり、警備が厳重であれば、成功が難しくなる。

 この場所では、リックが一人で行動を起こす。そのため、彼の護衛も務めるレイナからすれば、いつもの様に心配でならないのだ。


「あいつならどうせ上手くやるだろ。それより見ろよ、あいつが例の糞王子だ」


 神殿の外から眺めていたクリスの視界に、式場へと向かう一団が映った。その一団は、結婚相手のエステラン国側の者たち。一団の先頭には、結婚相手であるエステラン国王子、メロース・エステランの姿があった。


「あれがリック様を侮辱した男なのか。許せない」

「奴と結婚する不良姫殿下に同情するぜ」

「それで、実力はどの程度なのだ?」

「光の魔法が使えるってだけで大した事ねぇ。俺なら秒殺に出来るぜ」

「待て、破廉恥剣士。あの下郎を倒すのは私だ。私ならば瞬殺出来るだろう」

「何言ってやがる。やるのは俺だ、俺なら瞬きする間にやれるからな!」

「ならば私は、神速の速さで奴を倒して見せる!」


 犬猿の仲である二人は、やはりこんな時でも、張り合わずにはいられない。

 どちらがより早くあの王子を倒せるか。作戦とは全く関係ない事で、二人の武術家の、意地の張り合いが始まってしまった。こうなると、二人を止められる人間は、帝国内でも多くはない。


「クリスティアーノさん」

「んっ?」


 二人の意地の張り合いが燃え上がり、武器を持っての決闘に発展するかに見えた、その時だった。

 クリスの事を見つけ、彼の愛称ではなく、本名で名を呼ぶ少年。少年に声をかけられた事で、二人の張り合いが一旦止まる。

 名前を呼んだのは、クリスがこの国で、初めて知り合いになった少年、アニッシュ・ヘリオースであった。その手には、丁寧に布で包まれた、騎士の魂であるランスを持ち、服装はいつもの、青い見習い騎士の制服である。クリスがよく知る、少年の姿だ。


「何やってんだよアニッシュ。式の手伝いか?」

「いえ、僕に仕事はありません。そちらの方は?」

「こいつはリックの部下の一人だ。脳筋槍女っていうから覚えとけ」

「ふざけるな破廉恥剣士。君がアニッシュ君だね、私はレイナ・ミカズキ。以後、よろしく頼む」

「はい、こちらこそ、よろしくお願いします」


 レイナはアニッシュの事について、リックたちから話を聞いている。

 真面目で礼儀正しい少年であり、騎士を目指しているという事。そして、例の王子との模擬戦の事も聞いていた。後は、どうもクリスがこの少年の事を、意外にも気にかけているという事も聞いている。

 普段なら、あだ名をつけて他人を呼ぶが、この少年に対しては、ちゃんと名前で呼んでいるし、彼の鍛練にも付き合っている。

 普段のクリスを知っている者からすれば、当然らしくないと映る。犬猿の仲であるレイナからすれば、尚更だ。


「君は騎士見習いだと聞いているが、式場に何か用でも?」

「僕は見習いなので、他の騎士の方たちの様に、警護の任はありません。ただ、彼女に一言謝りたくて、気が付けばここに足を運んでしまったんです・・・・・・」

「あの不良姫殿下にか?」

「はい。僕は、約束を守れなかったから・・・・・・」


 少年の言う約束というものを、当然ながらレイナは知らない。

 アニッシュの思いも、この式に対する心の痛みも、彼女は知る由もないのだ。

 彼は視線を二人から移して、エステラン国側の一団を見る。特に、結婚相手であるメロース王子の事を。

 複雑な心境である。自分の愛した彼女は、これからあの王子と結婚し、この国を離れて行ってしまう。王子の性格には難があり、その歪んだ性格によって、自分は傷を負った。

 あの王子が彼女の事を、大切にするとは思えない。彼女を政治のための道具としか、考えていないはずだ。大切なシルフィの事を思うと、メロース王子と結婚させたくはない。

 これがもし、自分以上に彼女の事を大切に思う相手であれば、アニッシュは潔く、身を退くつもりでいる。彼にとっては自分の恋愛感情、つまり独占欲に近いものよりも、彼女の幸せを願う方が優先なのだ。シルフィが幸せになるのならば、自分の気持ちがどうであれ、関係ない。

 彼女の親友として、彼女を愛する者として、アニッシュは心にそう決めている。


「お前、本当にこれでいいのかよ」

「えっ・・・・・・?」

「これでいいのかって聞いてんだ。お前に意地はないのかって聞いてんだよ」


 クリスはとても不機嫌そうに、何がそんなにも気に入らないのか、アニッシュに対して言葉をぶつける。

 この国に来て二日目、クリスはアニッシュと模擬戦をした。何度も何度もアニッシュが戦いを挑み、その度にクリスは彼を負かした。アニッシュは気絶するまでクリスと戦い、これでもかという位、実力の違いを思い知った。

 あの時アニッシュは、自棄になっていたと言える。己の未熟さと力の無さが許せず、クリスに模擬戦を挑んで、自らを罰したのだ。

 クリスは途中から、その事に気付いていた。少年の死に急ぐような目は、彼の心情を読み取るのに、十分であったのだ。

 そんな目をして戦いを挑んだアニッシュは、次の日もクリスに稽古を頼みに来た。次の日も、その次の日もである。その度に、クリスは頼みを断るのだが、最終的には何だかんだと言って、アニッシュの頼みを聞いてしまう。それが、式の前日である昨日まで行なわれていた。

 クリスはアニッシュに、自分自身ですら驚くほど真剣に稽古をつけ、自分が駄目だと思うところには、徹底的に指導をする。勿論、いつも通り乱暴な言葉遣いでだ。

 その様子はリックたちも見ており、「あいつはどうしてしまったんだ」と、疑問に思っていた。クリスは普段から、自分が認めた者以外を馬鹿にする。リックの命令以外で、他人に何かを指導する様子など、誰も見た事がない。そんな彼が、この少年にだけは特別だった。


「僕は・・・・・・」

「お前が何考えてようが俺は知ったこっちゃねぇぜ。だがな、俺は今、お前を見てるとイライラして仕方ねぇんだ」

「・・・・・・・」

「ちっ、男だったら惚れた女ぐらい奪って見せろってんだ」

「!?」


 アニッシュはシルフィに対する思いを、クリスに打ち明けた事はない。

 クリスはアニッシュが気絶した時、少年が薄れゆく意識の中で口にした名前を、憶えている。その少女が、少年にとって愛おしい相手だと、その時彼は見抜いた。

 まさか、クリスにばれてしまっていると思わなかったアニッシュ。無意識で口にした事であるから、無理もない。


「おい、そろそろ行くぞ槍女。しけた面したガキなんかに構ってる暇はねぇ」

「なっ、おい待て破廉恥剣士!」


 不機嫌を隠す事なく、苛立った表情のまま、クリスはアニッシュに背を向ける。

 彼の言葉に立ち尽くすアニッシュを残し、レイナはクリスの後を追いかけた。


「貴様、突然どうしたというのだ?何をそんなに苛立っている」

「少しは察してみやがれ。だからてめぇは脳筋なんだよ」


 クリスに言われてむっとしながらも、彼が何故苛立っているのかを考えるレイナ。

 しかし彼女は、どうしてもその理由がわからず、首を傾げるばかりであった。

 結局彼女は理由がわからず、作戦行動中何度もクリスに、脳筋と馬鹿にされる事になった。






「なあリリカ。これ、エミリオの趣味なのか?」

「さあね、使えそうな物を適当に用意しただけだろうさ」


 誰にも見られないために用意した、この部屋の中では、リックとリリカの二人が、最後の準備に取り掛かっていた。

 最後の準備とは、この作戦に必須である装備を、リック自身が身に付ける作業である。


「これが趣味かどうかは今度聞くとして、リリカたちが来てくれて助かった。エミリオが持たせた装備のおかげで、どうにかなりそうだからな」

「ふふ、崇め奉るがいいよ」

「いや、そこまではしないぞ。まあともかく、ほんと今回は、エミリオの心配性のおかげで助かった」


 話は、式の前日である昨日まで遡る。






「りっ、リック様。レイナ・ミカズキ、只今参上いたしました・・・・・・・・」

「うっ、うん。とりあえずご苦労様」


 式の前日。つまり、リックたち一団がチャルコに来て六日目。

 時刻が夕方になろうという時、リックたちを手助けするため、帝国を出発したレイナたちは、何とか式の前日に到着する事が出来た。

 試作魔法動力機関を搭載した荷車に乗り、帝国から驚くべき速さでチャルコに到着した、レイナたち一行。しかし、荷車は木端微塵となってしまった。出発してから全速前進だった荷車は、途中から何度も不具合を起こし、最後は暴走して制御が効かず、チャルコ国城門に激突したのである。

 幸いな事に、乗っていたレイナたちは無事で、荷物の方も問題はなかったが、激突した衝撃で荷車は全壊し、魔法動力機関は黒煙を上げて、完全にスクラップと化してしまった。


「リリカやシャランドラまで、一体どうしたっていうんだ?」

「シャランドラは荷車の制御のために同行しました。リリカ様は・・・・・・」

「まあいいじゃないかレイナ。それより、面白そうな物を沢山持ってきたよ」


 チャルコの騎士たちに呼ばれ、荷車が激突した現場である、城門に集まったリックたち。城門前はちょっとした騒ぎになっていた。城門が閉じているにも関わらず、荷車は停止せずに突っ込んで来たのだから、仕方のない事だ。

 激突した衝撃でばらばらになった荷車と、地面に散乱する破片。何とか助かったレイナたちは、門番の騎士たちに事情を説明。当然最初は疑われたのだが、リリカの話術と説得、その美貌のおかげで信じて貰えた。

 門番の騎士たちがリックたちを呼びに来て、彼女たちの到着を知り、慌てて来てみればこの惨事である。リックも、付いてきたその他の者たちも、事情が全く読み込めないでいた。


「おいおい!何しにきやがった脳筋槍女!てめぇ、リックの命令はどうした!?」

「黙れ破廉恥剣士!私はエミリオの指示できたのだ。リック様の命令は、あの男が引き継いでいる」

「エミリオの指示?」

「はいリック様。リック様が帝国を出発してすぐ、軍師のもとに新しい情報が入りました。内容は、エステラン国周辺に不穏な動き有りというものです」

「そんでな、エミリオはリックの事めっちゃ心配してたんや。んで、レイナちゃんが呼ばれてな、結婚阻止に使えそうな物を集めて、こうして持ってこさせたんやで」


  帝国一の発明家であるシャランドラは、持ってきた物資の入った木箱から、様々な道具を取り出す。木箱の中には、彼女が新しく試作した狙撃銃もある。それに目を付けたのは、今や帝国一の銃の使い手である、イヴ・ベルトーチカだった。


「何これ?新しい試作銃?」

「そうや、イヴのために持ってきたんやで。ちょっと使ってみて欲しかったんや。こいつはな-----」


 シャランドラはイヴに銃の説明を始め、完全に二人だけの世界に入ってしまう。

 話に夢中になっている二人は放っておき、ついでにレイナとクリスの喧嘩も放っておく、リックとリリカ。


「リリカ、お前には陛下の事を任せたはずだが・・・・・・」

「その陛下からの願いだよ。エミリオ同様に、彼女も心配性でね」

「不穏な動き・・・・・・。結婚阻止を早く済まして帰って来いという事か」

「そういう事だよ。ふふ、行けと命じたのは彼女だというのにね」


 彼女の言う通り、結婚阻止を命じたのは、帝国の女王ユリーシアである。しかし、当初とは状況が違う。

 エステラン国周辺の情勢が不安定である以上、突然何が起こるかはわからない。リックの身を案じる彼女からすれば、気が気ではないのだ。


「リリカ殿、一つ聞きたい」


 妖艶に笑うリリカのもとに現れたのは、リックたちに同行した、帝国騎士団長メシアである。彼女はとある疑問をリリカに聞いた。


「久しぶりだねメシア団長。どうしたんだい?」

「何故、あの帝国軍女性を連れてきたのですか?」


 荷車に乗っていたのは、レイナとシャランドラと、出発直前に同行したリリカである。しかしもう一人、リリカの護衛として乗り込んだ女性が、一人いる。

 帝国軍兵士の制服に身を包み、背はレイナたちよりも高い。日に焼けた肌に、鍛えられた体格の良さ。そんな彼女の表情からは、寡黙さが伝わる。

 ここに集まったクリスやイヴ、そして遅れて集まって来た、リックの護衛であるロベルトたちも知らない女性。未だにレイナやシャランドラも、彼女の事は何も聞いていない。荷車の制御などで、聞く暇がなかったためである。


「アングハルトじゃないか。久しぶりだな」

「参謀長閣下、アングハルトはリリカ様の護衛で参りました」

「護衛?リリカ、まさかお前・・・・・・」

「偶然彼女を見かけてね。可愛かったから連れて来たんだよ。どうだいリック、例の恋文女性との再会は?」

「知ってて連れて来たのか・・・・・、勘弁してくれ」


 セリーヌ・アングハルト。元々は帝国の人間ではないが、リックに助けられた事がきっかけとなり、今では帝国軍の一女性兵士である。

 彼女は帝国城内で、最近大きな話題となっていた女性でもあり、その名を聞いたレイナたちは、すぐに全てを理解した。


「アングハルト?・・・・・・まさか、リック様が命を救った例の女性兵士!」

「こいつか!?俺のリックにラブレター出したっていう恋文女は!」

「うっそ!?この女の人が」

「一緒におったけど、全然知らんかったわ。これが噂のアングハルトかいな」


 アングハルトの周りにレイナたちが集まり、話題となっていた彼女に詰め寄る。ロベルトたちも興味津々な様子で、気になっていた事を質問し始める。その様子は、丁度学校で転校生が来た時に、周りの生徒たちが転校生を質問攻めにする、あれに似ている。

 何故ラブレターを出したのか?参謀長相手に緊張しなかったのか?こんな変態のどこがいいのか?

 アングハルト中心に、周りから様々な質問が飛び交う。


「質問が酷いぞお前ら」

「いや参謀長殿、事実だからしょうがない。メイファのお嬢ちゃんも言っていた」

「彼女は俺の事何も知らないんだぞ。勘違いしたらどうする」


 どんな質問にも寡黙であったアングハルトは、リックの言葉に反応する。彼が、「何も知らないんだぞ」と言った時だ。


「参謀長の事はよく調べています。男の娘属性なるものが好きで、さらには年上の女性が好み。最近では年下の少女を誘拐して専属メイドするなど、女性の好みが幅広いと」

「・・・・・・・」

「専属メイドに変態と罵られて喜びを感じ、女王陛下にも呆れられる始末。他には-------」

「待ってくれ!超待ってくれ!!わかってるんだけど、一応誰から聞いたか教えてくれ」

「参謀長をよく知ると言う、リリカ様から聞きました」

「お前は俺に恨みでもあるのか!?俺の変態性癖がかなり酷くなってるぞ!」

「全部事実じゃないか。そうだろ皆?」


 彼女の言葉に頷いて答える、メシアとアングハルトを除いた一同。

 最後に、遅れてやって来た参謀長専属メイドのメイファが、彼に止めを刺すべく現れた。


「これで理解出来たでしょう。ご主人様は、帝国一の変態です」


 その場に両膝をついて、がっくりと絶望するリックに、専属メイドの視線は冷たかった。

 この後しばらくの間、リックはずっと落ち込んだまま、今後の作戦を皆に説明し、全員が大急ぎで準備に取り掛かる。

 流石に落ち込みの具合が酷いので、後から皆が励まして、リックは何とか気力を取り戻す。

 それが式の前日である、昨日起こった出来事であった。






 準備は整った。例の式場では、予定通り結婚式が始まっているはずである。

 予定通りなのは式だけではない。リックの作戦により、各部隊が所定の配置についている。こちらも予定通りだ。後は、行動を起こすのみである。


「そろそろ行くか」

「私も動くとするよ。お互い頑張るとしよう」

「お前なら大丈夫だと思うけど、無茶な事はするなよ」


 リックの事をよく理解している女性が、帝国には二人いる。女王ユリーシアも含めれば、三人だ。

 リリカはリックを理解し、彼の精神的な支えでもある。彼が困った時、迷いがある時は、常に彼女が傍にいて、彼を必ず助けてくれる。

 同時にリックにとっては、自分の事を理解してくれる、大切な存在である。心の支えであり、つい彼女に甘えてしまう。彼女無しでは、何も出来なかった。彼女無しでは、この先、生きてはいけないと思ってしまう。

 そんな彼が、大切な彼女の身を案じてしまうのは、当然と言えた。


「安心しなさい。私を誰だと思っている?」

「・・・・・自称美人で自由な旅人だ」

「違うよ。自称じゃなくて事実さ」


 そう言って彼女は、微笑みを浮かべながら、リックの頬を撫でた。


「さあ、始めようじゃないか。私たちの宴をね」


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