第四話 リクトビア・フローレンス Ⅶ
参謀長の両腕である、武術家二人を退け、脱出を急ぐイヴであったが、その目の前には、又も立ち塞がる人影があった。
城の兵士たちではない。レイナとクリスが、追い付いて来たわけでもなく、立ち塞がる影は、巨体の男。
二メートルを軽く超える身長の、その男は、胸に大きな鎧を身に付け、その手には、信じられない大きさの斧が握られていた。この斧が、頭から人間に振り落とされれば、間違いなく、真っ二つどころかぐちゃぐちゃにされてしまうだろう。そう思わせる程の、巨大で凶悪な斧である。
常人が扱えないであろう大きさと、持ち上げる事すら出来ない重さの斧を、この巨体の男は軽々と持ち上げている。
「今ならまだ間に合うだよ。降伏するだよ」
「ゴリオン君・・・・・・」
巨体の男は、帝国軍屈指の腕力と屈強な体を持つ、リック配下のゴリオンであった。
手に持つ斧は、ゴリオン用の装備として、リックがシャランドラに作らせた、巨大バトルアックスである。全て鉄製で、重さが百キロを超えるこの斧は、シャランドラの自信作だ。
ゴリオンの巨体では、並みの武器では小さ過ぎるため、彼が扱えるような武器は存在しなかった。ゴリオンの巨体が、通常の剣や槍を持つと、子供の玩具に見えてしまう。それ故、今まで彼には武器が無かったのである。
ゴリオン専用装備として、ようやく完成したのがこの斧で、どんな敵であろうと粉砕するという考えのもと、発明家シャランドラと技術者連合によって生み出された、特注の一品であった。
「見逃してよゴリオン君。でないと怪我するよ?」
「オラは怪我してもいいだよ。でも、怪我はさせたくないんだな」
「・・・・そんなんじゃ死ぬよ?」
狙撃銃をゴリオンへと構える。勿論ゴリオンも、銃の性能や威力を教わっており、その脅威は理解していた。
如何に巨体であろうと、人間である以上は、銃弾を跳ね返す皮膚など持ち合わせていない。弾丸を受ければ、死ぬことに変わりはないのだ。
それでもゴリオンは、恐れることなく前に出る。城の通路を完全に塞ぎ、ここから先へは進ませないという気迫が見える。
「無事に脱出・・・・・・出来そうにないかも」
イヴが引き金を引いて弾丸が放たれ、戦いの火蓋は切って落とされた。
城内で騒ぎが広がっていき、兵士たちが襲撃者を捕えようと動く中、騎士団長であるメシアは一人、女王の寝室を目指していた。
寝室の前に辿り着くと、警護の騎士たちがおり、異常がないかを騎士に確認して、寝室の扉を開く。部屋の中には、寝間着姿の女王ユリーシアと、彼女を守るように立つ、数人のメイドたちがいた。
「陛下、御無事ですか」
「私は心配ありません。これは何事ですか?」
「報告によれば、リックの命を狙った者が現れ、今その者は、城内を逃走しております」
「リック様は御無事なのですか?」
「怪我はないとのことです。今は兵士たちの指揮を執っております」
胸を撫で下ろし、息を吐くユリーシア。突然の銃声と騒ぎから、リックの身をずっと案じていたためである。
「リック様の命を狙った者は、何者ですか?」
「数日前にリックが連れてきた、イヴ・ベルトーチカという者です。あの男の狙いは陛下ではないようですが、念のため避難致しましょう」
「話には聞いていますが、その方はリック様の・・・・・」
リックやメイドたちからの話で、イヴの存在と人物については理解している。イヴはリックのお気に入りの一人であり、銃器を操るということも知っていた。
そのイヴが裏切ったという。リックの命を狙い、今は逃走中なのだとメシアは語った。
気に入っていた人間に裏切られ、自分の命が狙われる。今のリックの心境は、想像に難くない。
「メシア。頼みがあります」
「お断りします」
「まだ何も言っていません・・・・・」
騎士団長であり、女王のことを理解している彼女は、目の前の少女が、何を頼もうとしているかがわかる。
その頼みが、危険な行為であるという事も・・・・・・。
「どうしても行くというのですか?」
「・・・・はい、私は確かめねばならないのです。あの方が、どの様な選択をするのかを」
「何のためにですか?」
「知りたいのです、あの方を。私には、彼を知る義務がありますから」
メシアは思う。こうなった彼女は強情で、誰にも止められないと。
盲目であるにも関わらず、今彼女は、リックのもとへと向かおうとしていた。彼女は一人であっても、彼のもとへと向かうだろう。
危険なのは百も承知だ。しかし、どうしても確かめたい。
「お願いですメシア。私を、リック様のもとへ」
メシアが女王の寝室へ辿り着いた頃、ゴリオンと戦闘を開始していたイヴは、城内のとある倉庫に身を隠していた。
戦闘開始から約十分経過したのだが、余りの勝算のなさに、逃げ出したのである。
(聞いてないよあんなの!)
まず、イヴが狙撃銃より放った弾丸は、ゴリオンの巨大斧に防がれてしまった。何発撃っても、斧を盾にされて防がれるため、仕方なく、動きまわって隙を窺う戦術をとり、素早さで攪乱した。
巨大な斧を振まわすことで、城の中を破壊しながら攻撃するゴリオンであったが、その巨体と武器故に大振りで、隙はあった。その隙を狙い、斧を盾にされる前に銃を撃ち、ゴリオンを撃退しようとしたはいいが、撃ち出された銃弾は、鎧によって阻まれてしまう。
常人の鎧であれば、簡単に貫通してしまう弾丸なのだが、ゴリオンが相手では相性が悪い。彼が身に付けている鎧は特別製で、異常な厚さの鉄製防具である。シャランドラたちが設計し、実験場にて耐久性も確認されている。
今現在帝国にある武器で、ゴリオン用特別防具を破れるものは存在しない。まさに、フルアーマーゴリオンと呼ぶに相応しいだろう。
破壊的な攻撃力と、鉄壁の防御力。とても勝ち目がないと悟ったイヴは、倒すのを諦め逃げ出し、今はこうして隠れている。
(無理無理無理無理、あんなの人間じゃないよ。銃が効かなきゃ勝ち目ないし)
何とか隠れてやり過ごし、隙を見て、逃走を再開しようとしているイヴ。先程から、隙をついてばかりでしかない。
だが、仕方がない。現状はイヴにとって戦い難く、持っている装備も、屋内戦闘に特化しているとは言い難い。しかもこちらは一人で、敵はゴリオンだけではない。さらに敵には、イヴでは手に余る猛者たちが何人もいる。
屋外での長距離戦ならば、負ける気がしないのだが・・・・・・。
(残りの手榴弾は少ないし・・・・・・。弾も結構使っちゃったな・・・・・・)
徐々に、自分が追い詰められているのを感じる。戦況はどう見ても不利であった。
「っ!?」
外から気配を感じ、部屋の奥へと急いで移動した。その時である。
部屋の外から雄叫びが聞こえ、巨体の男が、壁をぶち破って突入してきた。なんと男は、肩を突き出した突進のみで、石造りの壁を破壊したのだ。
本当に、何もかもが規格外。人間と言うより、最早怪獣であった。
「見つけたんだな」
「ゴリオン君怖い!壁壊すなんてありえなさ過ぎだよ!?」
振りまわす力は周りを破壊し、己の肉体で、壁すらも容易く破ってしまう。
イヴは思う。どうやってリックは、この怪物を仲間に加えたのだろうと。
「もう逃げられないんだな」
「どっ、どうしようかな・・・・・」
逃げ場がない。後ろに出口はなく、眼前にはゴリオンが立ち塞がる。
銃は効かない。手榴弾も効果があるかわからない。
(一か八か・・・・・・。これで勝負!)
最早運に身を任せるしかない。
しかし生きている限り、最後まで抵抗しなければならないのだ。諦めれば、そこで終わってしまう。
「あっ!?あんなところに美味しそうな豚の丸焼きが!!」
何も無いところを指差し、突拍子もない言葉を叫んだ。
巨体であるゴリオンなら、食べ物には目がないと考え、食べ物で注意を逸らそうと考えた。勿論、豚の丸焼きが、そんな都合よくあるわけがない。注意を逸らすために、大嘘をついたのだ。
こんな嘘に騙される人間はいないはずだが、今はこれしか思いつかなかった。
苦し紛れの大嘘である。正直とっても恥ずかしい大嘘だ。これに騙されるなど・・・・・。
「どっ、どこなんだな!?豚の丸焼きどこなんだな!?」
信じた。彼はこんな大嘘を、信じてしまっていた。
指が差された方向を凝視するゴリオン。最初から苦戦していた相手が、こうも簡単な嘘に引っかかってしまった。今まで苦戦していたのは、一体何だったのだろう・・・・・・。
(って、そんな事考えてる場合じゃないね!)
良く言えば純粋。ゴリオンの純粋さのお陰で、隙が出来た。
懐から残りの手榴弾全部を取り出し、安全ピンを抜いて。ゴリオンへと投げつける。
今度はスモークでもフラッシュでもない、殺傷能力の高い強力な手榴弾である。投げつけられた手榴弾に気付き、回避が間に合わないと悟ったゴリオンは、斧を盾代わりにして防御態勢をとった。
投げたのは爆風によって敵を倒す、攻撃型の手榴弾で、ヘルベルトたちにも配備されている代物だ。手榴弾の威力も理解しているため、流石のゴリオンも防御態勢をとった。イヴも爆風にやられないよう、部屋の物陰に急いで隠れる。
やがて、投げられた残り全ての手榴弾は爆発し、爆風が部屋を襲った。爆風が部屋の中のものを吹き飛ばす。この威力ならば、如何にゴリオンと言えど、戦闘不能に出来たのではと思う程の爆風である。
「す、すごい爆発なんだな」
だが、ゴリオンはほぼ無傷であった。何個もの手榴弾の爆発も、彼の鉄壁の前では、意味をなさなかったのである。
しかしイヴの目的は、手榴弾で彼を倒そうとしたものではない。手榴弾で倒せないことは、やる前からわかっていたのだ。
「とったよ!」
「!?!?」
爆発を防ぎ切り、防御を解いたゴリオンの真横には、狙撃銃を構えたイヴがいた。
銃口はゴリオンを向いていないが、銃口の横には、彼の頭がある。だがイヴは、ヘッドショットを狙ったわけではない。狙っているのは、彼の耳であった。
ゴリオンの耳の傍に銃口を持っていき、引き金を引く。弾丸は彼に命中せず、銃声だけが響き渡っただけだが、それが狙いである。
「うっ!?」
ゴリオンが怯んだことを確認し、次弾発射のためにボルトを引く。装填された弾丸をすぐさま発射し、今度もまた、彼を怯ませる。
弾丸はゴリオンに命中してはいない。だが、耳元での至近距離射撃は、彼の鼓膜を刺激した。
銃の発砲音は危険な音である。この音を直接耳元で聞くのは、鼓膜にとって害そのものとなる。場合によっては鼓膜をやられ、一時的に耳が聞こえなくなり、時には気絶することもあるのだ
どんなに巨体であろうとも、鎧で鉄壁であろうとも、耳は耳栓でもしない限り、音に対して無防備だ。真面に銃声を聞いてしまったため、ゴリオンはその刺激で苦痛に襲われている。今は彼の耳は、音が聞こえない違和感と、耐え難い苦痛に襲われている。
スモークもフラッシュも使い切っていたイヴは、彼を退けるための武器として、銃声を使った。銃声の恐ろしさは、リックやシャランドラに聞いており、彼自身もよく理解していた。だからこそ、これならば効果があると考えたのだ。
そして、彼の考えは見事に的中した。
「じゃあねゴリオン君。僕、先を急ぐから」
「まっ、待つんだな!」
苦痛のせいで動けないゴリオンを置き去りに、イヴはこの場を後にする。
帝国一の巨漢との戦闘は、城内の一部を、修復が困難なレベルまで滅茶苦茶にし、終了したのである。
「はあ、はあ、はあ・・・・・」
警備の兵士たちの追撃を振り切り、レイナとクリス、ゴリオンも退けたイヴであったが、度重なる戦闘で、体力的には限界であった。弾薬は残り僅かで、手榴弾は使い切っている。
城からの脱出を試みてはいるものの、騎士団や兵士たちの連携により、抜け出せる道は、全て封鎖されている。どうやら、緊急時の対応が元々決まっているらしく、侵入者を逃がさない態勢が出来上がっている。
調べた逃走経路は全て使えないため、逃げまわりながら、新たな逃走経路を考えている。ゴリオンとの戦闘で足止めされたために、イヴは今、袋の鼠状態であった。包囲網が敷かれ、騎士団と兵士に徐々に追い詰められている。
このままでは捕まるのも時間の問題で、正面突破するための武器弾薬がない以上、有効な手は思いつかない。どこかに隠れて隙を窺うか、それとも諦めて投降するか・・・・・・。
「はあ、はあ・・・・。降伏したら許してくれるかな・・・・・・」
「そうだといいね」
銃声とともに、一発の銃弾がイヴの足元に着弾する。
銃弾が着弾する前に、よく知っている人物の声が聞こえた。声の主は、この場に現れるとは思っても見なかった、美しき女性である。
「どうしよ・・・・・・」
「ふふ、レイナたちを退けたようだね。流石、リックが見込んだだけはある」
これで四度目となる、顔見知りからの襲撃。
これまで戦った者たちは、リック自慢の武闘派たちであった。しかし今、目の前に現れた女性は、武闘派でない。イヴの知る限り、戦闘員ですらないはずだ。
女性は一丁の拳銃を所持し、この銃を先程発砲した。その銃は、イヴが見たこともない形状のものである。
「私は言ったよ。リックに危害を加えるのなら、君を殺すと」
「リリカ姉さま・・・・・・」
参謀長リックですら逆らえない、帝国最凶の支配者。自称美人で自由な旅人リリカが、殺気を帯びて現れたのである。
「今のは挨拶みたいなものだよ。ふふ、次は殺してあげるからね」
宣言通り、人間の急所である心臓に狙いを定め、銃を連続発射する彼女に対し、イヴもまた、狙撃銃を撃って応戦する。物陰に隠れて彼女の射撃を躱し、牽制射撃を繰り返す。自分の持つ拳銃とは装弾数が違うらしく、連射能力も高い。
弾切れとなった彼女は、同じように物陰に隠れて弾倉を交換する。彼女の持つ拳銃は、リックやイヴが持つリボルバーとは違い、自動拳銃と呼ばれる、排莢と装填を自動で行なう銃だ。発射速度と装弾数に優れた設計であるため、細かいことを除けば、リボルバーよりも優れていると言えるだろう。
この自動拳銃もまた、シャランドラ試作の逸品である。リックがモーゼル拳銃のようなものを作り出そうとして、自動拳銃開発のために試作させたのだ。
この銃は自動小銃開発にも役立ったのだが、試作品であったこれを気に入ったリリカは、半ば無理やりに、自分のものにしてしまった。以来この銃は、リリカ専用の拳銃である。
「もう弾は残り少ないんだろう?抵抗は無意味だよ」
妖艶な笑みを浮かべ、銃撃を繰り返す彼女は、容赦を知らない。完全にイヴを殺す気でいるのだ。
しかも、彼女の銃の腕前は正確で、一瞬でも気を抜けば、簡単にやられてしまうだろう。物陰に追い込まれ、満足な反撃も出来ず、牽制のために狙撃銃を使用したため、今の銃撃戦で弾が無くなった。
イヴの手持ちの武器は、これで拳銃のみとなってしまう。
「どうして私の急所を狙わない。そんなに殺したくないのかな?」
「それは・・・・・」
「迷っているのだろう?殺そうと思えば出来たはずさ。でも君は、わざと弾が当たらないよう撃ってたね」
「見てたんだ、ずっと」
「離れたところから見物していたよ。ゴリオンとの戦いも、頭を撃てばよかったのに、君はわざわざ非殺傷の手段をとった。そんなにリックに嫌われたくないのかな?」
違うと言えなかった。何故なら、彼女の言ったことは事実なのだ。
兵士たちを撒く時も、牽制ではなく直接攻撃すれば良かった。自分の腕前ならば、造作もないことだ。
非殺傷手榴弾など使わず、初めから殺傷手榴弾を使えば、弾薬の消費も抑えられたし、敵戦力を削ぐ事も出来たのだ。しかし、殺せなかった。
人を殺すのに躊躇いがあるわけではない。今までだって、何人も殺している。
知り合いになった者たちを殺したくないという、諜報員にあるまじき、甘い考えがあったわけでもない。いや、諜報員にあるまじき思いはある。
自分を気に入り、素晴らしい玩具を与え、楽しい時を与えてくれた存在。短い付き合いであるのに、彼を愛おしく感じる。
「君もまた、同じようにリックに惹かれてしまったのさ。リックがかけた言葉、与えてくれたものに、自分を揺さぶる何かがあったのだろう?」
「っ!?」
拳銃で応戦し、物陰から飛び出して移動する。敵である彼女は冷静に、そして冷酷に、引き金を引き続けた。別の物陰に移動しようと走るイヴに、容赦のない銃撃が襲いかかる。
「実はね、リックの命令でレイナから、君を殺さずに捕えるよう言われているんだよ。私には関係ないけどね」
「ちょっ!?」
「ふふふふ、君は私を殺せない。私は君を殺せるけどね。私を殺せないのは、リックに嫌われてしまうから。レイナたちを殺せなかったのも、それが理由だろう?」
彼女の言う通りだ。
数日見ていてわかったが、彼は仲間というものに、強い愛着を持つ。末端の兵士に至るまで、自分の仲間であれば大切にする。
そんな彼の、大切な仲間たちを殺してしまえば、自分は決して許されない。そう考えてしまうと、どうしても相手の急所目掛けて、引き金が引けないのだった。相手からすれば、レイナやクリスのように、手加減されていると思うだろう。
「・・・・・・」
「おや、もう降参かな。私はまだ遊び足りないよ」
銃を撃ちまくり、少しずつ接近するリリカに対し、弾丸の残りが六発しか残されていないイヴは、まさに絶体絶命である。しかもリリカは、先程から相手の心を読んでいるかのような発言をし、イヴの精神を迷わせていた。
誰にも知られたくない心の中を見透かされ、冷静ではいられない。銃を握る手に力が入り、怒りが募る。彼女がリックと関係ない存在であれば、今すぐにでも殺している。
イヴを追い詰め、銃を乱射し、完全に彼女は楽しんでいる。そのこともまた、イヴの神経を逆撫でするのだ。
戦闘に関しては自信があると言うのに、嘲笑われているように思えてならない。銃を自分と同じように使いこなすのも癪だ。
(銃を一番上手く使えるのは僕なのに。リック君に認められた僕だけなのに・・・・っ!)
いっそこのまま飛び出して、一矢報いるために差し違えようかと考えた。
だが、飛び出そうとした直前、とあるものが目に付き、考えを改める。
「ふふ、んふふふふっ」
「笑っていられるのも今の内だよ!」
物陰から再び飛び出し、全速力で移動するイヴを、リリカの自動拳銃が襲う。
ここで彼が走った理由。それは城の通路の先に、銃声を聞きつけて、迷い込んでしまった存在がいたからである。
「ほう・・・・・・」
「これで、形勢逆転だね」
イヴは一人の少女を捕まえた。その少女はメイドの格好をし、自分の今置かれている状況が理解できずにいる。
目に付いたのはこの少女である。彼女に銃口を向けて、人間の盾としたイヴ。人質を取られ、リリカの射撃が止まる。
人質となった少女は、リックが旅の帰りに連れてきた、例の少女であった。




