第四十三話 プレイン・バーン作戦 中編 Ⅵ
「グラーフ同盟軍!!貴様達の悪事は俺達が止めてみせる!!」
現れた敵は五人だった。
とても奇妙な恰好をして、五人全員が異なる色の衣装を身に纏い、第二戦闘団に戦いを挑んだその五人は、なんと素手で戦っている。
銃相手に格闘戦を挑み、多数の兵を倒していく五人の敵。彼らに対して当然銃撃が行なわれたが、どういう構造なのか、彼らの着ている衣装が弾丸の貫通を許さない。着弾による衝撃は与えるが、弾丸が彼らを撃ち抜く事はなかったのである。
銃撃したり、ナイフで切り付けたり、殴ったり蹴ったりなどして、このよく分からない奇妙な敵を迎撃する、困惑状態の第二戦闘団兵士達。そんな兵達相手に戦いを挑む五人は、どれだけ攻撃を受けようとも立ち上がり、チームワークを駆使して戦い続けた。
「卑怯者め!!飛び道具など使わずに正々堂々戦え!」
先程から赤い衣装姿の男が、兵に向けて正義だの悪だのと叫び続けている。どうやらこの赤いのがリーダーらしく、別の色の衣装を着た四人を率いているようだった。
赤いのは兎に角正義感が強いらしく、グラーフ同盟軍を悪と断定して、正義のためと闘志を燃やしている。取り敢えずボーゼアス義勇軍の味方なのは間違いないため、第二戦闘団は彼らを敵と判断した。そして、ボーゼアス義勇軍の民兵よりは厄介な彼らに、少しばかり手を焼いていた。
「そこまでだ!!!」
「「「「「!?」」」」」
赤、青、緑、黄、桃色の衣装を着た五人の前に、その男は現れた。
五人と交戦していた兵を助けようと、第二戦闘団後方からバイクに乗ってやって来たのは、ヴァスティナ帝国国防軍一の体力馬鹿である。
「出たな!!ジャッカーの改造人間!!!」
急ブレーキで派手にバイクを止め、敵である五人の姿を捉えたその男は、バイクから降りて彼らの前に立ちはだかった。厄介な五人相手に、たった一人で立ち向かおうとしている彼こそ、帝国国防軍の特攻隊長ライガ・イカルガである。
「貴様、何者だ!?」
「オレの名前はライガ!!こっから先はオレが相手になるぜ!!」
「噂に聞いたヴァスティナの強敵だな!相手にとって不足はない。いくぞ、みんな!!」
突然のライガの登場に、熱い闘志を燃やした赤い衣装姿の男は、仲間達に呼びかけ全員を集合させる。赤を中心に集まった彼らは、ライガの目の前で、それぞれが独特のポーズを取り始める。
「ローレッド!」
「ローブルー!」
「ローグリーン!」
「ローイエロー!」
「ローピンク!」
「五人揃って!!」
「「「「「大陸戦隊ローレンジャー!!」」」」」
独特の決めポーズと決め台詞が決まった瞬間、待ってましたと言わんばかりに、彼らの背後で爆発が起こり、五色の煙が派手に出現した。
五つの色を身に纏いし彼らこそ、ローミリア大陸の正義と平和を守るために立ち上がった、五人の戦士達。その名も、「大陸戦隊ローレンジャー」である。
ローレンジャーは、ジエーデル国によって苦しめられた人々を救うべく、ジエーデル国と敵対しているボーゼアス教に協力している。ボーゼアス義勇軍が誇る精鋭部隊の一員として、装甲車輌と銃火器で味方の突撃を阻む第二戦闘団撃破のため、最前線に投入されたのだ。
「俺達がいる限り!」
「この世に悪は栄えない!」
「大陸の平和を乱す悪党共め!」
「正義の拳を受けて見ろ!」
「覚悟しなさい!」
ライガに向かって決め台詞を吐く五人の戦士。どうやら、五人の内の四人は男らしいが、声や話し方的に桃色は女性らしい。これで黄色がカレー好きであれば、まさにお決まりという事になるのだが、色違いの戦隊スーツを着た彼らは、何処からどう見ても正義のために戦う戦隊ヒーローであった。
ちなみに、彼らの着ているスーツはある魔物を素材としているため、伸縮性が高い割に銃弾に堪えるほど頑丈である。それに加えて、ボーゼアス義勇軍の民兵と違い、戦い方は心得ている。息の合った五人の連携も厄介だ。
対してライガはたった一人。その手に武器はなく、いつも通りの素手である。それでも彼は、ローレンジャー相手に一人で立ち向かう気であった。
「そっちも正義の戦士ってわけか!!だったらお前らの正義、試させて貰うぜ!!!」
「「「「「!?」」」」」
相手が異教徒の手先などではなく、大陸の平和のために戦う正義の戦士だと知ったライガの胸に、正義の炎が燃え上がる。正義の心が彼を突き動かす以上、こうなると誰にも止められない。
この先の彼は、ヴァスティナ帝国国防軍のライガ・イカルガではなく、正義の戦士として彼らと戦う事になる。「また始まった⋯⋯」と言いたげな顔を浮べ、関わると厄介だと思った第二戦闘団の兵士達は、ローレンジャーの相手をライガへと任せ、早々に離れていく。
彼らを邪魔する者はいなくなり、集中力を高めたライガが、お決まりのポーズを取って見せた。
「ライガー、変身!!」
変身の掛け声と共にポーズを決め、空へ向かって飛び上がった彼の身体に、平原の草や砂、戦場に転がっていた武器や防具が、細かな物質になって集まっていく。物質は彼の身体で鎧へと変わり、ローレンジャーとはまた違うデザインの変身スーツへと、その姿を変えていった。
やがて、ジャンプした彼が地面に着地する。発動された特殊魔法による変身は完了し、黄色と黒を基調とした変身スーツ姿の彼は、頭から被った正義の仮面越しに五人を捉える。
「お前はまさか!アーレンツで魔法少女ノエルと戦った正義の戦士!?」
「噂に聞いたあの男!?」
「魔物オルトロスを倒したっていう、あの!?」
「話に聞いた通りだ!あの姿、間違いない!」
「正義の戦士、仮面ライガー⋯⋯!」
ローレンジャーは知っていた。直接出会った事はなかったが、自分達と同じく正義のために戦う戦士がいると、話には聞いていたのだ。
仮面ライガー。その名を知っていたローピンクが彼の名を呼ぶが⋯⋯⋯。
「否っ!!私は仮面ライガーではない!!」
「「「「「!!」」」」」
話に聞いていたローレンジャーからしても、彼をよく知る帝国国防軍の兵から見ても、仮面ライガーなのは間違いない。
ただ、今回の彼の変身姿は、今までの姿とデザインが変わっていた。よく見れば、今までと違って変身スーツに赤色が加わり、最大の変化は首に巻かれた白いマフラーだった。
「私の名は!!仮面ライガー、Ⅴ参!!!」
「「「「「かっ、仮面ライガー⋯⋯⋯、Ⅴ参!?」」」」」
「魔法少女ノエルとの戦いを経て生まれ変わった私の力で、君達の正義を試させて貰うぞ!!」
アーレンツでの激闘でぎりぎり勝利を収めはしたが、あの日、自分の力不足をライガは痛感した。
以来、彼は更に己を鍛える様になり、以前よりも体力をつけ、頑丈となり、強くなった。生まれ変わった彼は、以前の弱い自分と決別するために、新たな変身スーツを生み出したのだ。
パワーアップした彼の新たな名は、「仮面ライガーⅤ参」。実際のところデザインが変化した以外、変身スーツの性能はほとんど変わっていないのだが、何も知らないローレンジャーにとっては衝撃的だった。
「「「「「かっ、かっこいい⋯⋯⋯!!」」」」」
変身ヒーローにとってパワーアップ展開は、まさに極上の浪漫である。それはどの世界でも同じらしく、ローレンジャーは全員、仮面ライガーのパワーアップを羨ましく思っていた。
しかし羨ましいとは言え、いつまでも物欲しげに眺めているわけにはいかない。気持ちを切り替えたローレッドが咳払いし、他の四人も我に返った。
「正義の戦士、仮面ライガー、Ⅴ参!同じ正義を志す者として、どちらの正義が正しいか勝負だ!」
「望むところだとも、ローレンジャー!!」
「俺達は五人で一人!必殺のチームワークの力を見せてやる!」
戦場で相見えた正義の戦士達が、決着を付けるため同時に駆け出した。
今ここに、「変身特撮ヒーロー」対「変身特撮戦隊ヒーロー」による、互いの正義を懸けた頂上決戦が開始された。




