第32.5話 俺のヴァスティナ帝国がこんなにイカれてるわけがない Ⅰ
第32.5話 俺のヴァスティナ帝国がこんなにイカれてるわけがない
この広い世界には、幾千、幾万の人達がいて、私と同じように、願いや想いを抱いて暮らしていて、誰かを心から愛して、時には、愛する人のために、ぶつかり合って、戦ったりする。
これから始まるのは、可愛く、美しく、愛のため戦う、そんな、あいとゆうきのおとぎばなし・・・・。
魔法少女リリカルユリーシア、始まります・・・・・。
1.魔法少女リリカルユリーシア 第11話「宿命の対決です」
私、ユリーシア・ヴァスティナ。歳は今年で十四歳。私立ヴァスティナ学園中等部に通う、ごく普通の女子中学生。好きなものはお花と紅茶。苦手なものは早起き。遅刻はしていないですが、朝はどうしても苦手です・・・・・・。
だから今日も、私の妹アンジェリカと一緒に、急いで学校に向かっています。恥ずかしい話ですが、寝坊してしまったんです・・・・・・私が・・・・・・。
「姉様!早くしないと遅刻しますよ」
「待ってアンジェリカ!置いて行かないで!」
慌てて走ってスカートをなびかせながら、妹のアンジェリカの後を追って、遅刻しないよう学校に向かいます。私達二人のこの光景は、いつもの通学路のいつもの風景。もし寝坊しなければ、今頃この通学路を越えて学校の正門前まで辿り着いていた事でしょう・・・・・・。
自分が憎いです。簡単に睡魔に負けてしまう、自分の弱さが憎い!でも仕方ないんです。二度寝って、とっても気持ちいんです・・・・・・。私では抗えません。
「姉様のせいで今日もギリギリです。寝る前に紅茶なんて飲むから眠れなくなるんですよ」
「そんな事ないです!アンジェリカが毎日ちゃんと起こしくれれば、遅刻なんてしないと思います!」
「起こそうとしました!それで起きなかったのは姉様じゃないですか!?」
「あうっ・・・・・」
確かに私ユリーシア・ヴァスティナは、妹のアンジェリカに起こしてもらいました。それから二度寝してしまったのは、全部私の責任です。ごめんなさいアンジェリカ。
「あれ?ユリーシアとアンジェリカ?」
「「!!」」
慌てて走った先で偶然会ったのは、私達姉妹の先輩達だ。私立ヴァスティナ学園高等部に通う高校生。私達の前に現れたのは、ヴァスティナ学園生徒会長リクトビア・フローレンス先輩。親しい人達はリックと呼んでいる、優しい先輩。
「リックさん!おはようございます!!」
「おはようユリーシア。もしかして、また遅刻ギリギリなのか?」
「あははは・・・・・、恥ずかしながら」
「アンジェリカもおはよう。今日も朝から大変だな」
「・・・・・・おはようございます、先輩」
私達二人に本当に優しくしてくれる、私の憧れの存在。それがリックさん。
でも、アンジェリカはリックさんが嫌いらしい。確かに先輩は優しいけど、女性大好きな変態さんで、年上好きで、困った性癖の持ち主ではあるけれど・・・・・・・・・、あれ?嫌われるの当然な気がしてくる・・・・・・・。
でもでも、基本はとてもいい人だから、先輩の傍には不思議と人が集まります。
「会長、おはようございます」
「ようリック!」
「レイナとクリスじゃんか。おはよう」
「こんなところで会うなんて偶然やな。おはよ、リック」
「リック君、おはよ♪♪」
「シャランドラにイヴ。今日も二人共可愛いな」
「おはようございます生徒会長」
「おはようなんだな、リック」
「おはようだぜ!!リック!!」
「アングハルトにゴリオンにライガまで!お前ら偶然だな」
「相変わらず、君のところには人が集まって賑やかだね」
「賑やか過ぎてうるさいですわ。まったく、どうして皆さんこんな中二病を好くのかしら」
「エミリオとミュセイラか!朝からいきなり全員集合かよ!?」
集まり過ぎですね・・・・・・。この人達は、ヴァスティナ学園生徒会メンバーなんです。生徒会長であるリックさんを助ける、とても頼りになる先輩達。リックさんがいつもの通学路を普通に歩いていると、誰かは必ずリックさんの傍にいるんです。今日は全員集合なので、かなり驚きました。
「姉様、急がないと遅刻します」
「そっ、そうでした!リックさん、それに先輩方!お先に失礼します!!」
「ああ。気を付けてな」
きちんと礼をして、リックさん達と別れ、私とアンジェリカは学校目指して走り去っていきました。ちなみに、私達がこんなに急いでいる理由は、今日が日直だからです。後からゆっくり来れるリックさん達が羨ましい。
「次からは耳元で大声上げて起こしますから、覚悟して下さいね」
「ごっ、ごめんなさあああああああああああい!!」
ユリーシア・ヴァスティナ、十四歳。今日も私は、いつも通りのお寝坊さんです。
頑張って走ったお陰で遅刻は免れました。後からアンジェリカに叱られましたけど・・・・・。
「最近、我が校の生徒の風紀の乱れが問題視されています。先生方との協議の結果、高等部の風紀委員長とも協力し、乱れた風紀の改善強化が決定しましたので、皆さんも身嗜み等は気を付ける様に」
ここは私とアンジェリカの教室。教壇で朝のホームルームを行なっているのは、私達のクラスの担任であり、生活指導のウルスラ先生です。ちなみにウルスラ先生は、とある事情で私達の両親が家にいないため、私達の親代わりをしてくれています。つまり、私達の家に一緒に住んでるんです。
「それから、最近遅刻をする生徒が増えてきているようなので、絶対に遅刻はしないように。ユリーシア、わかりましたね?」
「はっ、はい!」
ウルスラ先生は厳しいです。怒るととっても怖いです。誰も逆らえません。中等部の絶対王者なんて呼ばれてます。
でも本当は、面倒見がよくて、優しくて、私達姉妹のお母さんのような存在。寝る時、可愛いパジャマを着て寝るところなんかが、ウルスラ先生の可愛いところ。
でも、少し困った癖がありまして・・・・・。
「それではホームルームを終わります。・・・・・アンジェリカ」
「起立!気を付け!敬礼!」
このクラス・・・・・、いえ、中等部全体のこれは、最後軍隊式の敬礼で終わります。
元軍人らしいので、軍隊での癖が抜けないんだとか・・・・・・。
ホームルームを終えたら、いつも通りの授業が始まりました。
一限目はリンドウ先生の数学。二限目はラフレシア先生の現代文。三限目はアマリリス先生の家庭科。四限目はラベンダー先生の英語。五限目はノイチゴ先生の保健体育ですが、四限目までで授業は一旦終わり、お昼の休憩に入りました。
楽しみにしているお昼休憩の時間。私はこの時間を利用して、中等部の隣にある高等部へと入っていきました。お弁当を持った私は、高等部の教室を覗き込み、リックさんを探しています。理由はもちろん、リックさんと一緒にお弁当を食べるためです。
まだ教室にいるかなと思ったのですが、教室にリックさんはいませんでした。レイナさんとクリスさんが毎度の喧嘩を勃発させ、大暴れ寸前というところでしたが、リックさんの姿はどこにも見えませんでした。
(もしかしたら生徒会室かも)
生徒会の仕事が多い時は、よく生徒会室を使ってご飯を食べて、昼休みが終わるまでそこで仕事をしていたりします。もしかしたら、今日は生徒会室にいるかもしれません。場所をわかっているので、私はお弁当を持って生徒会室を目指しました。
階段を上がり、廊下に出て少し歩けば、そこはもう生徒会室の目の前。階段を上り、廊下に出ようとすると、そこにはリックさんの後ろ姿。声をかけようとしましたが、リックさんは誰かとお話し中でした。
私は慌てて壁に隠れて、話に聞き耳を立てました。何故かと言えば、リックさんがお話をされている相手が、あの女性だったからです・・・・・。
「生徒会室で昼食か。仕事が溜まっているようだな」
「そうなんですよ。このところ学校行事関係で書類に追われてまして」
「無理はするなよ。忙しければ私を頼れ」
「ありがとう御座います、メシア先生」
ヴァスティナ学園高等部、生活指導のメシア先生。銀髪褐色肌の美人教師で、リックさんの憧れの女性。
「そうだ!よかったら一緒に昼食でもどうですか?書類整理に付いて、是非メシア先生に相談があるので」
「昼食は食堂で済ませるつもりだった。私は弁当などは持っていないぞ?」
「ご心配なく!実は弁当のおかず作り過ぎちゃって。ここにいっぱい食べ物あるんで、一緒にお昼にしませんか?」
「そう言う事ならご馳走になろう」
メシア先生と一緒にお昼・・・・・・。リックさんが、満面の笑みを浮かべて凄く嬉しそう・・・・・。
そうなんです。だから咄嗟に隠れたんです。もう御理解頂けてるかと思いますが、リックさんはメシア先生の事が大好きなんです。お弁当のおかず作り過ぎたと言ってましたけど、絶対わざとです。だってリックさんが持ってるお弁当箱、四段ある重箱なんですよ!?メシア先生が大食いだって知ってるから、最初からお昼一緒にする気満々だったとしか思えません!
そしてあの、メシア先生の嬉しそうな微笑み!普段は表情鉄仮面なクールビューティーなのに、リックさんの前だとあんな表情するんですよね。私とアンジェリカの前でさえ、あんな風には滅多に笑わないのに。
メシア先生は私の家のお隣さんで、私達姉妹は小さい頃からよく遊んでもらっていました。メシア先生は私のお姉さんのような女性で、私だって尊敬も憧れもしています。でも、それとこれとは話しは別です!!
「ぐぬぬ・・・・・、メシアが羨ましいです」
「おっ、ユリーシア嬢ちゃんじゃねぇか。こんなところでどうしたよ?」
私の姿を見つけ、背後から話しかけてきたのは、高等部の用務員であるヘルベルトさん。お髭の生えたおじさんで、子供好きの優しい・・・・・・・じゃなくて!そんな事今はどうでもいいんです!!
(せっかく・・・・・・、リックさんと一緒にお昼を食べるつもりだったのに・・・・・・)
そうなんです。私にとってメシアは、仲の良い憧れのお姉さんであり、宿命のライバルなんです。
そして、リックさんとメシアの仲は、現在急接近中。ユリーシア・ヴァスティナ、十四歳。恋のライバル出現中につき、大ピンチです。
「はあ・・・・・・」
放課後の中等部生徒会室。外はすっかり暗くなり、学校に生徒は残っていません。
私、こう見えて中等部の生徒会長なんです。今日は仕事が沢山あって、片付けるのに時間が掛かってしまいました。まあ、落ち込んで溜め息ばかり吐いてしまっていたから、全然作業が進まなかったせいでもあります・・・・・。
アンジェリカは生徒会役員ではないので、イヴさんと一緒に先に帰りました。二人はとっても仲が良くて、少々内気なために友達作りが苦手なアンジェリカの、唯一無二の親友なんです。友達が少ないアンジェリカにとって、彼女・・・・・・ではなく彼の存在は、まさに天使・・・・・・じゃなくて小悪魔かも?ともかく、とっても明るくて可愛い先輩なんです!
なので、イヴさんと一緒にアンジェリカは帰ってしまったので、今日は一人で帰ります。他の役員の子達は先に帰らせたので、後は荷物をまとめて生徒会室の戸締りを済ませ、帰るのみです。
今日はメシアにしてやられたので、帰ったら紅茶とお菓子をやけ食いします。録画してた、ま〇か☆マ〇カの最新話見て、嫌な事は全部忘れて寝ちゃうつもりです。マ〇さんが可愛くて大好きなんです!再放送で初めて見てるんですけど、確か今日は・・・・・・三話だったかも?どんな展開になるのか楽しみです!ああいう魔法少女は憧れちゃいます!!
と言っても、私の憧れはもう叶ってしまっているんですけどね・・・・・・。
「ユリーシア!!キンキュウジタイ!キンキュウジタイ!」
「きゃっ!?」
いつもいつもそうなんですけど、この子はどこからともなく突然現れます。だから絶対驚いちゃうんです。片言声で私の名前を呼び、緊急事態を伝えようとしている、目の前に突然現れたドロドロした物体。どこから声を出しているのか知りませんが、個体とも液体とも言い切れない、手の平サイズの白くてどろりとしたこの物体の正体は、ファンタジーでお馴染みのスライムさんです。
「スライムさん!驚かさないで下さい!」
「ユリーシア!キンキュウジタイ!マジュツケッカイ!ハツドウカクニン!」
「えっ!?」
魔術結界の発動確認。これは、スライムさんが私に警告している、敵の出現を意味しています。
このスライムさんと偶然の出会いを果たし、私の日常は大きく変わってしまいました。世界の平和を脅かそうとする、謎の秘密結社との果てし無き戦争。スライムさんは時空保安情報局の局員さんで、秘密結社と戦うためにこの学園へやって来たんです。
そしてスライムさんは、高い適性を持っていた私に、秘密結社と戦うための力を強引に授けました。お陰で私は、自分の意志とは関係なく、強制的に秘密結社との戦争に巻き込まれてしまったんです。
「ユリーシア!テキガコウテイニイル!ゲイゲキ!コウセン!」
「また戦わされるんですか・・・・・・」
「ユリーシア!テキヲタオセ!センメツ!センメツ!」
「はあ・・・・・・、仕方ありません」
スライムさんと出会うまでは、極普通の女子中学生でした。でも今の私は、女子中学生の顔を持ちながら、悪と戦う正義の味方の顔も持っているんです。あまり気乗りはしませんが、やむを得ません。
「ホワイトスライムハート!セットアップ!!」
掛け声と一緒にスライムさんが光り輝き、私の体も光り輝きます。互いの光が重なり、私とスライムさんが一つになって、私の制服が弾け飛び、代わりにバトルコスチュームを身に纏います。スライムさんの力で私は、秘密結社と戦うための姿へと変身できちゃうんです。
純白のドレス。力を宿した私の愛杖。変身を遂げた私は今、気高き正義の心を持った戦士。
「魔法少女リリカルユリーシア!学園の平和は、私が守ります!!」
高い魔力適性を認められ、強制的に魔法少女に任命された私の仕事は、謎の秘密結社ナイトランスの殲滅。やっぱり気乗りはしませんが、学園の平和を守るのは生徒会長の義務です。校庭に現れたナイトランスの戦士に、この学園を好きにはさせません!
「それじゃあ今日も、リリカルセンメツ頑張ります!」
学園全体に展開された魔術結界。これは空間を隔離し、結界内の生物を閉じ込めると共に、元の次元に大きく干渉して・・・・・・・・・・、一度説明されたんですけど原理は全く分かりません。ともかく、この魔術結界内ではどんなに暴れても大丈夫で、建物を壊してしまっても、結界が解除されれば、壊れたものは全部元通りになります。都合がいい便利な結界ですね!
「見つけた!」
魔法の力で空を飛び、上空から今回の敵を発見しました。校庭の真ん中に立つ人影の前に、私は着地しました。目の前にあった人影は二つ。一人は武装した女性。もう一人は膝を付かされ手足を拘束された、私がよく知っている人物。
「現れたか、リリカルユリーシア」
「!!」
女性の名は、秘密結社ナイトランスの騎士団長メッシー。ナイトランス最強の戦士で、私のライバルです。そして、彼女の傍で拘束されていたのは、なんとリックさんでした!気絶させられているらしく、拘束されたまま身動き一つしていませんが、どうしてリックさんがここに!?
「騎士団長メッシー!彼に一体何を!?」
「この男には用がある。邪魔をするな」
「どんな用かは知りませんが全力で邪魔します!彼に手出しする事は、この私が許しません!!」
リックさんを捕まえて、一体何をするつもりなんでしょう。いつもそうなんですけど、メッシーは何考えてるか分からない、クールビューティーな感じの女騎士です。関係ないリックさんを私達の戦いに巻き込んで、何が目的なのか見当もつきません。
秘密結社ナイトランスの目的は世界征服らしいです。その目的にリックさんが必要だとは考え難いです。状況がよくわかりませんが、ともかくリックさんを助け出し、ついでにナイトランスの野望を阻止します!
「いきます!」
「来い」
ナイトランスの軍服を着ているメッシーが、自分の得物である剣と盾を構えました。相手はいつも通りの近接戦闘スタイルなので、こっちは飛び道具で戦っちゃいます。相手はこの街最強の戦士で、彼女に勝てた人は誰もいません。魔法が使えるわけじゃないのに、鬼のように強いんです。接近戦では私に勝ち目はありません。
愛と美を守る美少女魔法使い、魔法少女ノエル。悪の組織ジャッカーと戦う正義の味方、仮面ライガー。この街の有名な戦士さん達でも、彼女には勝てません。でも今日は、リックさんを守るためにも絶対勝たなくちゃ!
「ヴァスティナ式魔法兵装、解放!!魔術式突撃銃!!」
魔法の杖が分子となり、私の魔法が発動します。私の右手に現れた魔法陣の中から、一丁の銃器が姿を現しました。私はその銃を右手で掴み、魔法陣の中から引き抜いて、両手でしっかりと構えて引き金を絞りました。
突撃銃型の魔法兵装。七・六二ミリの魔術式完全被甲弾が、メッシーを撃ち貫くべく放たれていきました。これを受けて生きていられる生物は、自然界には存在しません。
でも、ここがメッシーの恐ろしいところです。彼女はこの弾丸を躱しながら、剣で弾丸を弾き返しながら、真っ直ぐ私に向かってくるんです!一発も命中しないんです!相変わらずの事なんですけど、本当に信じられません!!
「はあっ!!」
「きゃ!!」
一気に距離を詰められ、彼女の剣の切っ先が私に迫ります。私は咄嗟に銃を盾にしました。次の瞬間、盾にした銃は真っ二つに叩き切られ、簡単に破壊されてしまいました。
態勢を立て直すために、魔法の力で宙に浮いた私は、空を飛んでメッシーの真上を取ります。近接戦闘では鬼神の如き強さでも、空中戦なら私に分があります。
「魔術式短機関銃!!」
今度は短機関銃型の魔法兵装です。新たに展開した魔法陣から、私は新しい銃器を取り出しました。連射力重視のこれなら、今度こそメッシーを蜂の巣にできるかも。
引き金を引き、メッシーの真上から弾丸をばら撒く様に発砲しました。弾丸の雨を彼女に浴びせて見たものの、これも駄目でした。放たれた弾丸が止まって見えるのか、最小限の動きで全部躱されてしまいました。
「落ちろ」
「!?」
これ以上真上を取らせまいと、彼女は自分の盾を私に向けて投げつけました。彼女は飛び道具を持っていないと油断していたせいで、投げつけられた盾を避けられず、盾は私に直撃します。
「きゃあああああああああああっ!!」
撃墜され、悲鳴と共に私は落下しました。背中から地面に激突しましたが、身に纏っている魔術防具が機能して、ダメージを減少させてくれています。お陰で無事でしたが、隙だらけとなった私に、メッシーが急接近してきました。
「くっ!魔術式二丁拳銃!!」
両手に魔法陣が現れ、私はその中から拳銃型の魔法兵装を抜きました。両手に同じ銃を構え、立ち上がりながらメッシー目掛け銃撃します。近距離戦では取り回し易い便利な武器。扱いやすいんですが、これも彼女には通用しません。全弾剣で弾かれてしまいました。
「こんなものか」
「そんな!?」
私の懐に潜り込んだメッシーは、私の腹部目掛けて強烈な足技を放ちました。簡単に蹴り飛ばされてしまう私の体。魔術防御のお陰でダメージは抑えられていますが、今のはかなり効きました。
「ぐっ・・・・・!」
またも地面に背中を打ち付け、背中の痛みと腹部の痛みが私を襲います。大人の女性のなのに、この人手加減を知らないんです!そのせいでいつもこんな感じなんです。だから彼女と戦うのは嫌なんです。
馬鹿みたいに強くてほんと困ります。一体彼女は何者なんでしょうか?未だに正体がわかりません。
「実力不足だ、諦めろ。この男は貰っていくぞ」
「そっ、それだけはさせません!!」
こうなったら、出し惜しみなんてしてられません。圧倒的な実力差があるなら、数でその差を埋めるまでです!
拳銃を捨て去り、分子となって消えていた魔杖を再構成し、私の右手に出現させました。私は杖を高らかに掲げ、召喚の呪文を唱えます。
「我が呼び掛けを聞き届け、我が命に応じよ!ヴァスティナ式魔法兵装第二段階、解放!!」
「!」
「契約せし我が従者達!汝らの戦うべき時は来た!緊急召喚!!」
私の前に現れた、五つの魔法陣。魔法陣から現れたのは、メイド服姿の五人の女性。私と契約した、私の最強のメイド部隊。彼女達さえいれば、相手がメッシーだろうと怖くありません!
「緊急召喚されちゃった・・・・・・。まだ洗濯の途中だったのに・・・・・・」
「洗濯なんか帰ってからやればいいじゃない!私なんか見たいドラマの途中だったのよ!?」
「はわわわわわ・・・・・!お鍋の火を付けたまま呼ばれちゃいました・・・・・・!」
「もう!せっかく街で可愛い女の子ナンパしてるところだったのに」
「ゲームまだセーブしてない・・・・・。最悪・・・・・」
皆さん・・・・・、緊急召喚されちゃった事を怒っているようです。何してても強制的に呼び出しちゃうから、この魔法は使いたくなかったんです・・・・・・。
「メイド部隊を召喚したか」
「そうです!今日こそは決着を付けますよ、メッシー!」
メイド部隊のやる気はイマイチですが、契約はしているのでちゃんと戦ってくれるとは思います。彼女達は戦闘のプロであり、実戦経験は私よりもずっと豊富です。そんな精鋭が五人もいれば、負けるはずありません。
「相手は騎士団長なわけね・・・・・。ユリーシア様の命令だし、やるしかないわね」
「リン、ほんとにあれとやるの?なんか今日の騎士団長、眼が本気よ」
「はわわわわわ・・・・・。本気出さないと殺されちゃいます・・・・・!」
「いい機会だわ!ここで騎士団長倒してお持ち帰りしていいかしら?いつか絶対犯してやるってそう決めてたの♡」
「面倒くさい・・・・・・」
一見頼りなさそうですけど、本気を出した彼女達なら必ず勝てます!
さあ、勝負です!!
「騎士団長、こんなところで一体何をしているのですか?」
「「「「「!!」」」」」
メッシーばかりに気を取られていて、まったく気が付きませんでした。いつの間にか彼女の後ろから、もう一人別の女性が現れていたんです。メイド服に身を包む、メッシーよりも年上そうな女性。最悪です!秘密結社ナイトランス最強のメイドが現れてしまいました!!
「おや、驚きました。私を裏切ってそちら側に付いていたのですね」
「めっ、メイド長!?」
「げっ!!ユリーシア様に付いてたのバレちゃった!」
「はわわわわわわわわわわ・・・・・!!」
「あら~、今日が私達の命日かしら・・・・・・」
「終わった・・・・・」
不味いです!メイド長ウルウルの登場です!!
私が召喚したメイド達は、元々ナイトランス所属のメイド部隊でした。ですがある日、メイド長ウルウルの鬼のしごきのせいで、彼女達は逃げ出したのです。その時、彼女達を血眼になって探していたウルウルから、私が彼女達を上手く逃がしたおかげで、私に感謝した彼女達は、私と契約してくれたんです。
だから非常に不味いんです!メイド長ウルウルは、メイド部隊五人が泣いて逃げ出すほど強い、絶対強者なんです。その戦闘力はメッシーに匹敵します。ナイトランスの最大戦力が二人も揃ってしまっては、私達に勝ち目はありません・・・・・・。
それにしてもこの人、誰かに似てるような気がするんです。この厳しい感じとか、軍人みたいな空気とか、どこかで見覚えが・・・・・・。
「うっ・・・・・・ここは・・・・?」
「!!」
敗色濃厚なこの状況の中、気絶していたリックさんが目を覚ましてしまいました!私が魔法少女である事は皆には秘密なんです。魔法の力で正体がばれないようになっていますが、それでも心配にはなります。
ただ、私がリリカルユリーシアとしてナイトランスと戦っている姿は、リックさんに何度も目撃されちゃっています。そして、メッシーもまた、リックさんと何度も出会っているんです。
「起きたか、リック」
「えっ・・・・?メッシーさん・・・・?」
「手荒な事をしてすまなかった。悪いが拘束させてもらったぞ」
「確か俺・・・・、生徒会室でいきなり腹をぶん殴られて・・・・・・」
「私がやった」
「マジですか?お陰で昼に喰ったもん全部出てきたんですが・・・・・」
「メッシー!!貴女、気絶のさせ方が酷過ぎます!!」
色々乱暴すぎるんですよね。目的のためには手段を選ばないというか、不器用というか・・・・・。
「何で俺を気絶させたんですか?しかも手足拘束されてるし・・・・・」
「それは・・・・・、お前を手に入れるためだ」
「えっ・・・・・・?」
「リック。私は・・・・・、お前が欲しい」
「!!」
なっ、何を言ってるんですかこの人!?お前が欲しいって、それってつまり・・・・・!
「騎士団長。それが貴女の望みなのですね」
「そんな!騎士団長までリックさんを!?私に勝ち目ないじゃない!!」
「リン、勝ち目って何よ?あんたまさか、教師の身でありながら生徒に手を出す気なの!?」
「はわわわ・・・・・!告白が大胆過ぎます・・・・!」
「あらあら、面白い事になったわね~♡」
「波乱の予感・・・・・」
ですよね!そう言う事になっちゃいますよね!?新たなライバル出現って事じゃないですか!!しかも、リックさん好みの年上美女って、私も勝ち目ないんですけど!?
「どっ、どどどどどどういう事ですか!?」
「私はお前を愛してしまった。だから私は、お前が欲しくなった」
「いやいやいやいやいや!!俺にはメシア先生という心に決めた人が-------」
「それならば心配いらない」
「!?!?!?」
次の瞬間、私の頭の中は真っ白になってしまいました。
何故って?その理由は、騎士団長メッシーがリックさんの唇を奪ったからです・・・・・・。
彼女は突然、リックさんの唇にキスしたんです・・・・・・。
「・・・・・・これでもう、お前は私のものだ」
「めっ、メッシーさん・・・・・」
「お前を私の家に連れていく。男を抱くのは初めてだが、何でも知っている友人からやり方は教わっている。安心しろ」
「!?!?!?!?!?!?!?」
メッシーはリックさんを連れ帰り、彼を抱くつもりだそうです。状況が整理できず混乱しているリックさんが、顔を真っ赤にして言葉を失い、どうしていいか分からなくなっています。
えっ・・・・・、何ですかこの状況?リックさんを助けようとした私が悪者みたい・・・・・・。
私はあれですか、恋路を邪魔する残念ヒロインなんですか?私もリックさん好きなんですけど、何でこんな展開見せられちゃってるんでしょうか?
もういいです・・・・・、何もかも消し去って、一からやり直しましょう。
そうです、それがいいです。全部、全部全部全部全部全部全部全部全部消し去ってしまえばいい。
「・・・・・・ヴァスティナ式魔法兵装、第六段階まで強制解放」
「「「「「「「「!!」」」」」」」」
私、怒っちゃいました。だから、ヴァスティナ式魔法兵装の封印を解きます。
これで何もかも吹き飛ばして、・・・・・少し頭冷やしましょうか。
「イケナイ!!ユリーシア!!キケン!!セカイホロブ!!」
「スライムさん・・・・・、うるさいので少し黙っていてください」
変身中は杖になっているスライムさんが、私に危険を訴えてきます。でもそんなの関係ありません。危険だろうが世界が滅ぼうが、そんなのどうでもいい・・・・・。
「我が力は神の奇蹟。我が行為は神の鉄槌。我が大いなる帝国の宝物庫よ。その力を解き放て」
ヴァスティナ式兵装は、私の魔力が作り出す魔法の宝物庫であり、無数の魔術式火器が眠る武器庫。スライムさん曰く、この力を私が完全開解放したならば、世界を二回滅亡させる事も出来るんだとか・・・・。
二回滅ぼすのは可哀想なので、今回は一回だけにしておきましょう。
「はわわわわ!ユリーシア様が御怒りに・・・・・!」
「あら~・・・・・、私達の命日どころか人類の命日ね・・・・・・」
「終末・・・・・・」
私を怒らせるとどうなるか、その身にちゃんと刻んでもらいましょう。
私を中心にして、無数の魔法陣が出現し、中から様々な魔術式銃火器がその姿を現します。突撃銃、短機関銃、拳銃、重機関銃、軽機関銃、狙撃銃、散弾銃、榴弾砲・・・・・・、さらに大型魔法陣からはこんなものまで・・・・・。
「魔術式四十五口径四十六サンチ三連装砲三基。魔術式徹甲弾装填」
取り敢えず、まずはこれだけの武器を発射してみましょう。それで倒せないなら、世界を壊すついでにもっと強力な魔術式火器を出すまでです。
「これだけの銃口と砲口。いくら貴女が最強の騎士でも、これなら仕留められる・・・・・」
「リック、お前は私が守る。私の傍を離れるな」
「むっ、無理ですって!あれ大和砲の魔術式版ですよ!?あんなの撃たれたら学園ごと吹き飛びますって!!」
「そうか・・・・・・。ならば、お前を守るためにあの砲を叩き切るまでだ」
「この人が言うとやれちゃいそうだから困る!!頼む二人共!結界諸共学園が消滅するから、もう戦うのはやめてくれえええええええええええええええええええっ!!!」
そうですねリックさん。このままだと、結界ごと学園を灰にしちゃうかもしれません。そしたら流石に、都合のいい便利な修復魔法は発動しないかも・・・・・・。
でも、ここでやめるのは無理です!だからやっちゃいます!!
「我が前から消え去りなさい。ヴァスティナ式、地獄の黙示録」
私の言葉共に、全ての魔術式武器が一斉に発砲。それと同時に動く、秘密結社ナイトランス騎士団長メッシー。
さあ、全てを終わりにしましょう。ヴァスティナより愛を込めて・・・・・・。
「ふふふっ・・・・、随分派手に暴れてくれたようだね」
「はい・・・・・」
「奇跡的に結界の力で修復できたものの、もう少しで学園どころか街が吹き飛ぶところだった」
「反省しています・・・・・」
「君は怒ると冷静さを失い過ぎる。魔法兵装は第四段階までしか解放してはならないと、そう教えたじゃないか」
「すみません、理事長・・・・・」
ヴァスティナ式魔法兵装第六段階を解放し、魔術結界内で何もかも吹き飛ばしたら、とりあえずスッキリはしました。その後冷静になって辺りを見回し、「またやってしまった・・・・・」と深く反省しました。あれだけの事をしたのに、死傷者が誰もいなかったのは奇跡としか言いようがありません。
結界内とは言え、学園を一度消滅させてしまったので、次の日私は理事長室に呼び出されました。この学園の理事長は、自称美人で自由な理事長リリカさん。謎多き美女で、私が魔法少女である事を知る数少ない人です。
「罰として君は明日からしばらく、校内ではバニーガールで過ごしてもらう」
「そっ、それは流石に・・・・・!」
「嫌かい?なら代わりに、君のお漏らし伝説を校内放送で全校生徒に語るとしよう」
「バニーガールでお願いします」
何で私が魔法少女なのかとか、私の弱みとか、この人は何でも知っているんです。だから彼女には逆らえないんです。マストール校長先生ですら、彼女には勝てません。この学園の絶対的支配者はリリカ理事長なんです。まあ理事長ですし、この街を裏で牛耳っているとまで噂されているので、それは間違いないでしょう。
「バニーガールのユリーシアが見られるとはね。ふふっ、良い目の保養だ」
「はあ・・・・・・・」
何事も、やり過ぎはよくありません。今回の件は、この溜息と共に深く反省しました。
「ウルウル、何があったかはよくわかったわ。つまり、メッシーが勝手に動いてあの変態野郎を拉致ろうとしてたから、リリカルユリーシアがぶち切れて学校吹っ飛ばしたわけね」
「その通りです、姫殿下」
「申し訳ありません、姫殿下」
「結界張るための魔法石まで持ち出して男攫って、しかも告白までしたらしいじゃない?メッシー、あんた馬鹿なの?」
「しっ、シルフィ!騎士団長もこの通り反省している事だし、今日はこのくらいで・・・・・」
「黙ってなさいアニッシュ!それから、今の私は秘密結社ナイトランスの総統シルベスタ様よ!次シルフィって呼んだら殴るわよ!?」
「ごっ、ごめん・・・・・」
「まったく、どいつもこいつも馬鹿ばっかり。こんなんじゃ、いつまで経っても私の野望が叶えられないじゃない」
「ほっ、本当にやるつもりなの?」
「当たり前よ!この世の全てを支配し、私の前に跪かせてやるんだから。世界征服こそ私の野望!秘密結社ナイトランス総統シルベスタ様が、この世界を支配してやるのよ!!ふふふっ、あはははははははははははははははははははっ!!!」
「姫殿下。世界征服の達成の暁には、リックを私のものに」
「私は、世界中の珍しいパジャマを入手したく思います」
「好きにしなさい!この世界の全ては私達のものよ!!」
「「はっ!」」
色々ありはしましたが、取り敢えずいつもの日常は戻ってきました。
朝寝坊から始まる私の朝。アンジェリカと共に駆ける通学路。学校での勉強の時間。いつもと違う事があるとするなら、私がバニーガール姿で授業を受けている事と、リックさんの事です。
「はあ・・・・・・・」
放課後の生徒会室を覗いてみると、そこにはリックさんの姿がありました。溜め息ばかり吐いて、全然仕事が進んでいません。どうやら、昨日の衝撃的な出来事が原因のようです。
「メッシーさんの唇・・・・・柔らかかったなあ・・・・・・」
完全に恋に悩める乙女って感じです。メッシー、ほんと恨みます。
「メッシーさん・・・・・・。でも俺には、メシア先生が・・・・・」
恋のライバルがまた一人増えました。これで何人目でしょうか?ライバルが多いので、これ以上増えるのは正直困ります。なので、次にメッシーと遭遇した時は、魔術式核兵器使ってでも必ず仕留めます。勿論、この学園以外を戦場にしてです!
「待っていなさいメッシー・・・・・。次に会った時が、貴女の最後です」
ユリーシア・ヴァスティナ、十四歳!恋も魔法少女も、全力全開です!!
スライムさんのお陰で秘密結社ナイトランスのアジトを突き止めた私は、ありったけの武器を搔き集めて襲撃に向かいました。奇襲を仕掛けた私の迎撃に現れたのは、メイド長ウルウルさん。彼女の事は召喚したメイド部隊に任せ、単身突撃した先で出会ったのは、ナイトランス総統シルベスタちゃん。
一方その頃、メッシーはリックさんと再会していて・・・・・・。
次回、第十二話「最終決戦です!」
来週も、リリカルセンメツ頑張ります!
~続く?~




