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第二話 狂犬の戦士たち Ⅸ

 ヴァスティナ帝国城門前。

 戦いを終えた宗一は、自らの帰るべき場所へと戻ってきていた。無論、リリカを筆頭に、レイナとクリス、ヘルベルト率いる鉄血部隊も連れてである。


「どうだお前たち。俺の言った通り、最高の戦いだっただろ?」

「こんなやばい戦いをしたのは初めてですぜ隊長!六十対一万とか絶望的もいいとこだ」

「そりゃあそうだろう。戦争中毒のお前たちには、これぐらいの刺激が必要だと思ってな」

「最高でしたぜ。俺もこいつらもあんたのイカレ具合に惚れちまった。隊長のもとで、これからも戦わせてもらいますよ」


 これまでにない戦闘を楽しんだ鉄血部隊の面々は、ヘルベルトを筆頭に、全員が宗一を隊長として、これから先も付いて行くことを決めたのだ。

 それが嬉しくて仕方がない宗一が、今度はレイナとクリスを見まわす。


「リック様、私は・・・・・・。生きる意味も価値もありません。破廉恥剣士の言う通り、中途半端な女です」

「・・・・・・・・」

「生きる意味を見失い始めた私の前に、あなたは現れた。そして、私を叩き伏せ、鉄血部隊を我が物とし、敗北しかないように思えた此度の戦いを、あなたは勝利に導きました」

「槍女、なにが言いたいんだよ?」

「私に生きる意味をください、リック様」


 彼女は、自分の力と技を証明したいと言った。しかし、己の限界を知ってしまった彼女には、それができない。

 そう思っていたのだが、目の前のこの男は、限界や不可能など知らないとでも言うように、勝利を重ね続けた。そんな彼に付いて行けば、己の限界を越えられるのではと考えたのだ。


「生きる意味はやる。ただし、俺がお前に与えてやれるのは戦いだけだ」

「・・・・・・」

「お前の望みは戦いの中で叶えろ。大丈夫、レイナなら最強の槍士になれるさ。そして証明するんだ。俺が美しいと思ったお前を否定する糞な奴らにな」

「リッ、リック様!?私は美しくなど--------」

「お前は綺麗だよ。だから、俺に絶対の忠誠を誓え!俺はお前が欲しい!」


 宗一の言葉に覚悟を決めたレイナ。生きる意味を与えられた槍士は、その場に膝をつき、絶対の忠誠を誓う。

 少女が膝をついて忠誠を誓う様に、少々驚いた宗一であったが、すぐにその顔は嬉しさに染まる。


「レイナ・ミカズキ。御身に生涯忠誠を誓います」

「ありがとうレイナ」


 残る一人は、大陸最強の剣士を目指す青年一人。


「俺も忠誠を誓うぜ。・・・・・・お前に惚れたからな、愛してる」

「・・・・・・・・・・・・・はっ?」

「だから惚れたんだって。愛してるぜリック」

「ちょっ、俺に同性愛の趣味ないから!冗談だろ?!」

「冗談じゃねぇよ。これからよろしくな、リック」

「ふふふふっ、よかったねリック。男に惚れられて」


 宗一を含め、周りが唖然とする。リリカだけは何故か爆笑しているが・・・・・・。

 そうこうしていると城門が開き、中からは、銀髪褐色肌の女性と騎士団が、宗一たちを出迎えた。久しぶりに憧れの女性に再会して、胸が高鳴るのを抑えられない。

 ヴァスティナ帝国騎士団長メシア。戦場では軍神と呼ばれている、帝国最強の女性だ。

 再会の嬉しさに、駆け足でメシアへと近付く宗一。話しかけようと口を開いた瞬間、彼女は宗一へと腕を回して、優しく抱きしめた。


「メシア団長・・・・・?!」

「待っていたぞリック、オーデル軍を倒したのはお前だな。必ず来ると信じていた」


 またも突然のことに、唖然とする周りの面々。リリカだけは、その光景に嫉妬する様な目を向ける。

 メシアの温もりに包まれた宗一は、恥ずかしさと緊張で、完全に固まってしまっていた。


「女王陛下がお待ちだ。付いて来い、リック」


 その言葉に正気を取り戻し、美しく儚い、女王の顔を思い出す。彼女にも再び会うことができるのだ。

 宗一の生きる意味。そして、どうしようもなく惚れこんだ存在。


(ユリーシア陛下・・・・・。俺は、貴女のための力を集めてきました)






 一行は、前に宗一が通された、謁見の間へと案内された。

 ヴァスティナ帝国女王ユリーシア・ヴァスティナが、直々に謁見すると言ったため、ここまで案内されたのだ。

 宗一に付いて来た一行は、まさか女王に直接謁見することなど、全く想定していなかったために緊張している。戦争中毒の鉄血部隊ですら、この状況に戸惑っているのだ。

 何より、帝国の騎士団長に抱きしめられ、女王と面識があるという宗一に、「一体この男は何者なんだ?」と、今更ながら考える一行。ただの旅人ではないとはわかっていたが、その正体を掴みかねていた。

 そして、メシアに手を引かれ、玉座へと腰を下ろした少女を見た彼らは、己の目を疑う。帝国女王の存在は知っているが、その女王が、この場の誰よりも若い少女であるなど、一体誰が信じられるというのか。しかし少女の傍には、宰相である老人と、騎士団長であるメシアの姿があり、目の前に現れた少女こそが、この国の主であることを証明している。

 長く白い髪に、透き通るような綺麗な素肌。十四歳のユリーシア・ヴァスティナ女王陛下が、国を救った宗一たちへと、感謝の意を述べた。


「この度は帝国を救って頂き、感謝の言葉もありません。帝国の民を代表し、御礼を言わせてください。本当にありがとうございました」


 少女の素直で真摯な言葉に、その場で膝をついた宗一。レイナやクリスもそれに倣い、ヘルベルトたちも膝をついた。だが、リリカだけはユリーシアの顔を見つめ、心ここにあらずというように、立ち尽くす。


「そしてリック様。先の戦争同様に、貴方にはまたも帝国を存亡から救って頂きました」

「いえ、陛下に忠誠を誓った者として、当然のことをしたまでです」

「ちょっと待てよリック!またもってどういうことだよ?」

「リック様は過去にもこの国を救ったというのですか?」

「皆様は御存じないのですね。彼は、先のオーデル王国との戦いで帝国軍全軍を指揮し、帝国の滅亡を阻止した英雄なのですよ」


 女王が話した事実に、何も知らなかった彼らは、驚きのあまり声を上げる。鉄血部隊の面々が口を開き、先の戦争というものについて話し出した。


「先の戦争って、噂の業火戦争のことかよ」

「一晩でオーデル軍が全滅したってやつか?」

「噂じゃ、帝国軍を指揮した参謀が、奇策を考えてオーデルを焼き討ちにしたらしいぞ」

「おい!てことは、隊長がその参謀ってことか?!」


 確かに宗一は、前回の業火戦争と呼ばれている戦いで、ヴァスティナ帝国を救った。そして今回もまた、彼はオーデルの侵略から、女王と帝国を奇策によって救い出したのだ。  

 業火戦争の英雄の話と、見せつけられたその力。宗一に付き従うと決めた者たちは、自分たちが、救国の英雄の配下となったことを、この時初めて理解したのだった。


「女王陛下。彼らは貴女のために私が集めた力です。これからは彼らと共に、命を懸けて陛下の武器として戦います」


 剣と魔法の世界、ローミリア大陸。

 豊かな土地を持つ、かつての大国ヴァスティナ帝国は、今は帝国とは名ばかりの小国である。

 しかし、この出来事により帝国は、生まれ変わるための道を進む。

 その第一歩を踏み出したのは、まさにこの瞬間であったのである・・・・・・・。

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