ヤツアタリ
ムシムシした寝苦しい季節。ヒロシとのどしゃ降りのキャッチボールで案の定風邪をひいた。
「熱は無いみたいね。学校行きなさい。」
母ちゃんが部屋に入って来るのが嫌な年頃な俺は舌打ちをした。直後、頭を叩かれたけど。
「つか、最初から行く気満々だったし。」
呆れた顔をして、母ちゃんは部屋を出た。分かりやすい自分が嫌になる。
急いで家を出ると咲音が家の前をウロウロしていた。
「何してんだよ。」
「紅葉ちゃんから聞いて。大丈夫なの?熱はない?」
卓士の言葉がよぎり、おでこに伸びて来る手を振り払う。 さすがにやりすぎだな俺。
「楓?」
去年ぶりに下の名前を呼ばれた。けど、頭がガンガンしてどうでもいい。
「調子に乗んな。」
「え?」
「人気者だから俺のこと馬鹿にしてんだろ。」
ヤバい。俺は何を言ってんだ。咲音は何故か微笑んでる。
「辛かったね。」
「あれ?クソっ止まれよ!」
涙が止まらない。昨日泣いたばっかなのに涙腺壊れたのか?
「熱が出たみたいだね。私が先生に言っとくから今日はゆっくり休んで。」
ポンっと背中を押されて咲音を見ると、走り出していた。
「かっけぇな。」
家に戻るとベッドに直行した。