表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
野球少年の一喜一憂。  作者: shiraha
3/9

キャッチボール



俺は悩み事がある時、ひたすら走る。走るとだんだん冷静になるからだ。



卓士の発言を聞いた後、珍しく授業を全て受けた。いつもは教室にいるのが息が苦しいのに、一人でいるとどうにかなりそうだったからだ。




クラスのヤツらも俺に一々構うほど暇じゃないと気付けてバカバカしくなったし、俺自身成長出来た気がした。




けど、家に帰るとカバンを置いてすぐまた家を出た。汗臭い制服とかどうでも良くてイライラを弟にぶつけるのもしんどい。





「あー、暗すぎだろ自分。」






近くの公園のベンチに座って空を見上げた。さすがに梅雨だけあって今にも空は泣き出しそうだ。





「お、楓じゃん。」




懐かしい声に俺はのけぞる体勢から目線を落とした。





「なんだ。ヒロシか。」






「ひでぇ。つか、最近メールシカトしてるだろ。」




ヒロシは去年まで同じクラスだったダチ。賢く市内の私立に通ってる。俺より色黒で背が高く、ガッシリしていて熊みたいなヤツだ。正義感が強く頼りになる。だから、今の状況を相談したくない。






「パソコンとか、最近エロ画像しか見ねぇし。メールとかめんどくね?」





久しぶりのダチに泣きそうになる自分が情けない。ヒロシは黙って隣に腰掛けた。






「キャッチボールしようぜ。相棒。」







そんな悪意の無い自然な笑顔を見て心が軽くなる。ヒロシとはスポーツ少年団でバッテリーを組んでいた。俺は当たり前だが優秀なエースだったけどな。





「相変わらず野球バカだな。ま、俺もマイボール持ってるけど。」





学校帰りのヒロシの、スペアグローブを借りた。臭ぇけど、我慢すっか。





「味方だからな。」





ヒロシが小さく呟いたその言葉にとうとう涙が出た。と同時に

ポツリポツリと雨が降った。







「うし!楓。全力で来い!全部受け止めるからな。」






「…っくしょー。バカだよお前は!」





涙で視界が見えない。






バシッ。





暴れ球をヒロシは確かに受け止めてくれた。









どしゃ降りの中、2時間くらいキャッチボールは続いた。







ヒロシとの最後の試合の日以来に泣いたけど、また明日頑張れると思えた。








ダチ、いるじゃねぇか。バカだな俺。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ