04 ひじりん
「ん、んなぁ!?」
「おう、やっと起きたか。」
起きたと思ったら開幕凜さんが息もかかるほどの眼の前に。驚いて飛び退く。同じ布団に寝かされていたようだ。…なんかデジャヴ。
「な、何してるんですか!?というかこんな展開以前にもありませんでしたっけ?」
「あったぞ。ちゃあんと生きてるから安心しろ。」
「生きてる?…そういえば…」
凜さんに無理やりカウンターに座らされこれからの事考えてたら誰かが店に入ってきて、それで、殺された。殺された。殺された。臓物をまき散らし、血を噴き出して、完膚なきまでに、死んだ、はず。急いで体に異常がないか確認する。
「安心しろ。お前はきちんと生命活動してる。」
「でも死ぬ感覚?みたいなの覚えてるんですけど…。」
「やれやれだな。お前はもう少し頭のできた奴だと思っていたんだがな。」
その言葉に少しいらだちを覚えた。
「そういえば凜さん、あの時あの場に居たのに助けようともしませんでしたよね?人間は必要ないから死んでも構わないって思ったんですか?」
敵意丸出しだ。隠す気など毛頭ない。凜さんは一つため息をつき、そして僕の頭を鷲掴みにして目線を無理やり合わせる。あの目だ。最初に応接室で正面に対峙した時と同じ目だ。
「いい加減私を信用しろ。お前の衣食住を受け持ってるのは私だぞ?それに人員は一人でも多い方がいいに決まってるだろうが。もう少し頭を使えよ人間。考えたら分かることだ。」
「考えたら分かる…。」
これ以上何を考えろというんだ。この様子だと助けてくれたのは凜さんではない。他に助けてくれそうなのは、代理さん…。そうか代理さんか!代理とはいえ神様、その上生と死をつかさどっている。死の能力は無いと言っていたが生はあるじゃないか。
「…代理さん…ですか?」
「遅いな。遅すぎるな。だが正解だ。」
やっと手を離してもらえた。改めて顔を見ると怒っているというよりは、むしろいつも通りの笑みを浮かべていた。
「これは確認だったんだ。お前はちゃんと死なないのかどうかのな。まぁこの場合は死ねないだが。それで彼に頼んだわけだ。」
「彼?」
「どうも。そろそろ俺は必要ないんじゃないかなーなんて思い始めてたとこですよ凜さん。」
彼はずっとこの部屋にいたのか腕を組みこちらをじっと見つめている。服装は上から下まで真っ黒なのに髪だけが病的なまでに真っ白。少し垂れ目でやわらかい物腰をしている。今まで気づかなかったのは凜さんが死角になっていたからのようだ。…わざとしたな?
「そんなことは無いぞ猫又。お前はここでのキーマンだからな。ほれ自己紹介しろ。」
「へいへい。どうも猫又です。今回ひじりんの殺害依頼を受けました。以後お見知り置きを。」
頭だけで会釈する。がそんなことはどうでもいい。殺害依頼ってところも死なないと分かったからこの際どうでもいい。ただひじりんってなんだ。ひじりんってなんだ!キッと凜さんを睨む。
「お前の言いたいことは分かるがまぁ落ち着け。残念ながら猫又は信用できる相手では無いのが事実だ。彼も私と同じよろづ屋をしている。つまり、お前を狙っている奴から依頼を受ける可能性は高い。よって本名を教えるわけにはいかない。」
「その通りだひじりん。今はまだ味方でいられるが依頼を受けた以上はそれに従うことになる。」
…だからってひじりんって…なんか萌えキャラっぽいし…。
「因みにこの名前を考えたのは…?」
「無論私だ。」
凜さんが胸を張る。だから可愛くないって。おーけい。もうどうでもいいや。大きな脱力感。
「終わりならもう帰ってもいいか?」
猫又が手を上げる。
「そうだな、ありがとう。」
「じゃあ帰るけど。」
襖を開けたところで立ち止まる。
「一応忠告だが、吸血鬼に狙われることになるだろうから気をつけろよ。」
「え?」
「分かってるさ。」
「そっか。まぁ頑張れよ。」
それを最後に出ていってしまった。また僕だけ置いてけぼりみたいだった。
「あの…凜さん?」
「自分で考えろ。」
やっぱりか。
「いやそうじゃなく、前々から気になってたんですけどこの部屋何ですか?」
凜さんはきょとんとした顔になった。
「霊安室。」
「………。」
またもや予想よりも長くなり書きたいところまで書けませんでした。
ようやく主人公に定番の不死という付加価値ができました。これぐらいないとたぶん主人公はすぐ死んでエンディングになりますので勘弁してください。