『仁王様と三文のプレスマン』
掲載日:2026/05/03
あるところに、正直者の息子がいた。正直者というのはいい言い方で、少し抜けていると言えば言えないこともない。
ある城下に、露天が出ていて、仏像やら仏具やらプレスマンやらを商っていた。正直者の息子は、プレスマンがどうしても欲しかったのだが、財布には三文しか入っていない。プレスマンといえば、超高級速記シャープなので、三文ということもないだろうと思ったが、欲しくてたまらない。隣に、プレスマンと同じくらいの背丈の仁王像があって、阿形と吽形がそろっていて、これも欲しいといえば欲しい。いや、しかし、仁王像って、こういう感じで仏壇に飾ったりするようなものだったろうか。もっと大きくて、下から見上げるようなものだったのではないか。のお、この仏様は、普通、どこにいらっしゃるものかのお、と尋ねると、露天商は、山門じゃ、と答えた。その答えにちょうど重なるように、プレスマンは幾らかのお、と尋ねた正直者の息子は、何、三文か、と喜んで、あり金を全部たたきつけると、プレスマンを引ったくるようにして、走って帰っていった。
教訓:正直というのは、絶対的な基準があって使われる言葉ではない。




