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7・死生観


歴代の私……


ナナミの言葉を聞いた瞬間、僕の身体は、なぜか震えた。

なんだろうね。この違和感。



操作パネルが、また鳴りだした。

さっきのメール受信とは、違った音だ。

単調で、ずっとピーッて鳴ってる。耳障りだ。


「ウイルス感知のアラームだ」

「そうかい、僕は初めて聞いたよ」



ナナミが、モニターに追加されたメッセージを確認する。

それは座標を示している。


「アリサの近くだ、回収しないと」

「回収か、僕の出番だねっ。船外に出るよ」


「サンゴ、私たち現行バージョンは、今もウイルス回収機能を備えていて」

「細かい説明はいらないね、僕も役割が判ってきたところさ」


「そう?巨人観察業の付帯業務として」

「ウイルス回収も僕らの仕事、って事だね?」


「焦らないでサンゴ、回収には」

「付帯業務ならボーナスも出るよね?ナナミ、成功したら何かおごらせてよ」



そう言った途端、ナナミは激怒しちゃった。


「このお調子者!」


「えっ……」

「……」


今度はナナミが、震えている。

なんで怒ったんだろう。判らないね。


ナナミは、自分自身の額に指を当てた。

数ミリ秒の間、何かに耐えてるような顔をしてた。

そして、立ち直った。


「落ち着いてサンゴ。状況を説明するよ」


「ああ、うん」

「アリサはいま”カゼ”に罹ってるの。古来から巨人を悩ませてきた、原因不明の疾病、それがカゼだよ。アリサはカゼの影響で免疫力が低下してるから、強毒性ウイルスが身体に付着するのはかなり危険。もし体内に入ったら確実に重篤化するよ」


「アリサちゃん、ピンチなんだね?」

「そういうこと。だから失敗は許されないの」


「腕がなるじゃないか、ようし回収だっ」

「サンゴ、操縦を任せるよ。ジャンプ操作は覚えた?」

「ああ勿論さ!」



僕はナナミと席を替わった。


「まだ距離がある、できるだけ直線的に詰めてみて」

「了解」



僕はトラックボールに手を当てる。

失敗できないなら、僕は絶対に失敗しない。


今度こそ慎重に、ジャンプ。

加速度に身体を押し付けられながら、モニターを確認する。



ウイルスを目標物としてカーソルが表示された。

接近してる、うまくいってる。どうだいナナミ主任?


横を見ると、ナナミが居ない。

いつのまにか天井のハッチを開けに行ってる。


「ナナミ、どうしたの!」



僕は操縦席を立ってナナミを追う。

まさか、ナナミが船外に出るつもりじゃないだろうね。


アリサちゃんのピンチなんだから、僕は迷わずウイルス回収をする。

たとえ危険な作業だって、僕は何とも思わない。


もしも死んだって、またあのベッドからリスタートするだけさ。

だから迷わない。何も怖くないね。


でも、ナナミ主任が危険にさらされるなんて、あり得ない話さ。

僕は、ナナミにモテるために生きてるんだからね。


「ナナミ」

「持ち場を離れないでサンゴ」


「まさかナナミが、外へ……そんなの許さないよ僕は」



乗降ハッチは開放されている。

ナナミは、追いすがった僕を、逆に捕まえてきた。

両手で、しっかりと。


「ナナミ……」

「今度は、私の番だから」


「どういう事だよ、判らないよ」


「サンゴ、愛してるよ。これからもずっと」



ぎゅーっと抱きしめられた。

温かな感触。

僕の肌に、温度を受け取る機能なんて無いはずなのに。


あったかい。



「船体角を微調整して。サンゴ、すぐに」


「ナナミ」

「あなたは”前”から操縦が上手だったよ。絶対に失敗しない」



身体は引き離され、ナナミは腰からケーブルを伸ばしていく。


僕は、もう状況的に裏切れない。

操縦席に戻る。もうベストを尽くすしかない。


操縦席のモニターに、ウイルスのカーソルとナナミのシルエットがある。

気流の表示を重ね、直観的に船体の向きを調整していく。


船は気流に流されつつ、近似した流れに漂うウイルスへ、接近する。

近寄る。もっと近寄る。ナナミのシルエットが、重なる。



キャッチしたはずだ。

ナナミは今、両手でウイルスを捕まえたはずだ。

僕らのケイ素とシリコンで構成されたボディは、ウイルスの毒性など関係ない。


あとは船内に戻るだけだ。ウイルスは密閉室に放り込めばいい。

僕はメインフロアを見渡す。たぶんあの小部屋が密閉室だろう。



「やった……」



こんな達成感、初めての体験だね。

僕は大きく息をついて、モニターを見る。


ナナミのシルエットは、しっかりウイルスと重なってる。

船体に向かって帰還を始めている。互いの距離は近寄りだす。



1ミリ秒後に異変が起きた。

ナナミとウイルスの表示が、モニターから消滅する。

同時に観測船に、バチッと衝撃が走る。何が起きたんだ。


「えっ、何だよこれ」



パニックになる。

モニター表示を何度も見返す。

静電気ショック?船体負荷アラート?いったい何の表示だ。


ナナミのシルエットが映らない。

その先に、アリサちゃんの巨大な姿が見える。


無我夢中でパネルを操作する。

モニターをアリサのホログラフに切り替える。


アリサちゃんは、巨大タブレットを床に置いたままだ。

よく見ると、その場で立ち上がろうとしてるように見える。


もこもこした衣服……セーター。

まさか。


あの毛状繊維に、接近し過ぎたから、静電気がスパークを起こして。

だからナナミは……


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