表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

4・記録


僕は椅子に腰掛ける。情報端末を操作する。

この端末はパネル操作で、誰でも簡単さ。

僕にかかれば、情報収集なんてお手の物、って事だね。


”センター”からメールが届いてるけど、なんだかわかんないね。

こいつはナナミに任せた方が、無難だと思うね。ナナミが主任だからね。


早速、巨人観察業を学習しよう。

そしてナナミにモテる男に、僕はなるっ。



データベースを参照。巨人ハルナについて。

このまえ目撃したんだよね、巨人ハルナ。


ハルナ 巨人年齢70歳(推定率99.52%)

移動履歴、ヒートマップ参照。

ああ、どこをうろついてたかマップ化してるね。

プログラムを実行してみると、時間軸に沿ってハルナのカーソルが動いてる。


5Y182D15H15M37S338MS

経過時間も表示され、リアルタイムで移動が観察できる。


おおむね屋内か、家の周辺を歩いてるようだ。行動半径は狭いのかな。

狭いといっても巨人スケールだけどね。

一歩でも歩かれたら、僕らの観測船から遥か彼方、なんて事もあるだろう。



キャリブレーション済み参加船団 稼働状況

N201(11748/32992) N202all N203all N204(22523/46647)


これは、いま巨人ハルナを追跡してる船団、かな?

僕らの所属はN204。この船団をナナミ主任が運営してるって事だね。


観測船ひとつひとつが、カメラのセンサーになっている。

その情報をリンクして、立体的な巨人のホログラフを生成できるんだね。



モニターの方を見ると、今も巨人ハルナの映像が見える。

いまハルナは立って、右手を腰背部に当てている。


姿勢は歪曲しているね。腰部が痛いのかな。

生物には痛覚があるから、巨人も例外じゃないんだろうね。

なんとなく気になって、個体データを調べてみる。


生体活動率:総合27.25%

その下に数百のチェック項目が並んでる。

そのうちのひとつに、目が留まる。


椎間板1・C 2・D 3・D 4・D……


よくわかんないけど、ひどい評価だ。

恐らく、この部位が劣化してるね。


巨人だから、修復に莫大なコストがかかると予想できる。

僕らの100兆倍のボリュームだからね。巨人のボディはほんと、非効率だよ。


巨人ハルナのデ-タ、発語の読み取り履歴も残されている。

発語はカメラの視覚データと、空気の振動データが複合されて作られるみたいだ。


発語の収集データは、とんでもなく膨大だ。

そのうちの一つを、適当に再生してみようかな。


収集対象 ハルナ・ジョージ(以上2体)


再生。

メインフロアのスピーカーから、巨人同士の会話がはっきり聞こえてくる。

実際にはスケールギャップがひどいから、データ化しないと聞き取れないね。



ハルナ「はあかぜがでてきてねえ」

ジョージ「ひもとにきおつけとったらええ」

ハルナ「すずうしくなってええ」

ジョージ「うんありさのかぜはどんなぐあいよ」

ハルナ「はたけえいってらっしゃい」

ジョージ「みみとおなったなあ」



発語データには、注釈が書き込まれてある。


※はあ=未解明、吃音または友好的な挨拶と推測

※かぜ=風、気流のベクトルに関連する言葉

※ハルナが風について発話した場合、友好的な挨拶を兼ねると推測

※ひもと=火元、火点を表す言葉

※ジョージは交流人物に対し、頻繁に火災への警戒を促す習性を持つ

※ジョージは近辺の巨人グループにおける、セキュリティ担当である可能性

※かぜ=風邪だと推定され、風とは異なる言葉。未解明・要調査


……こんな調子で、実際の発語よりもたくさん書き込まれてる。


これ、ナナミ主任の仕事なんだろうな。マジメだなあ。


でもさ。

※はあ※ これさ、ハルナ固有の口癖か、訛りじゃないかな。

気にせず空白にしちゃっても問題ないと、思うんだよね。

でも勝手に変更したら、ナナミ主任のご機嫌を損ねるかもね。



巨人ハルナのデータからは離れる。

他にも60体ほどのデータが管理されてるな。


死亡確認中のデータもあるし、若いのもある。

最も若い個体は、アリサ (巨人年齢5歳・モニタリング確定値)になってる。


こうして視覚とか言語の情報群から、巨人の調査データがストックされてる。

おおまかな役割分担としては、ナナミ主任が情報分析みたいだね。

所感やトラブル対応を、センターへ報告してる履歴が残ってる。


そして僕の仕事は、船体操縦、なるほど操縦士かあ。

あと各モジュールの管理メンテナンス、船体への応急処置。

履歴を見ると、いろんな緊急事態にも対応してる。

これは気に入ったね、僕にピッタリ来そうな仕事だね。


だいたいイメージがつかめた。

観測船は、前にナナミ主任が言ったみたいに、よく壊れる。

巨人の近くは危険だから、あらかじめ過剰な機数でカバーしてるんだね。


量産パーツを自己複製的に用意して、壊れる前提で低コスト運用する。

これこそ僕の感覚にピッタリ合ってる合理性。すばらしいね!



巨人観察業について、もう僕が知るべき情報は残ってないね。

それほどの学習っぷりだと、自信を持って言える。

この急成長ぶりを、早くナナミに見せたい。ワクワクするね!


ちょっと疲れたから、このままひと眠りしようか。

ベッドルームはナナミが使ってる最中だし。

ナナミが起きて来たら、僕はこう言うね……


(素敵な寝覚めだね、ナナミ主任!)



そんなわけで、寝たんだよ。



そして、起こされたんだよ。

ナナミ主任に。


主任は、なんだか緊張した面持ちで告げてくる。


「すぐ着替えてサンゴ、気流に乗ってだいぶ移動してるんだ」


「ふうん?」

「いま、アリサの近くに来てる」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ