表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Rising Force - The Beginning -  作者: J@


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/75

31 「伯爵」と「王女」

 領主館の中に案内されたアタシたちは、廊下を進み豪華な扉の前で立ち止まる。案内している若い護衛がノックをすると「どうぞ」と、中からメイドさんらしき人が開けてくれた。

 部屋の中ではケーキと紅茶を前にアキとユキちゃんがソファに座っていた。アタシらがどんだけ心配したと思ってんだよ、と怒る前に、部屋の中にいた身なりの良い男性が腰を上げる。


「ようこそお戻りになられました! 英雄の皆様方!」


 そう言って貴族然とした挨拶をする領主。


 あら、これは……中々のイケオジじゃないですか。中学生のアタシでもちょっとクラっと来てしまいそうだ。ん? 中学生のアタシでもって事は! アキとユキちゃんに視線を配ると、サッと顔を逸らされた。さてはコイツら帰れなかったんじゃなくて、帰らなかったんだな。視線をそろーっと戻し、またアタシを見るが、追及の目でジーッと見ている視線に気が付くやいなや、またサッと逸らされた。


「一つ聞くが、私らは貴公に名乗りすらしていないのだが、なぜ、素性を知る事が出来た?」


 ん? タラさん!? 若干イラっとされてるのは分りますけど、一応目の前にいるその男性、ここの領主で伯爵階級なんですが!? 無礼を働いた罪で打ち首とかイヤなんだけどアタシ!しかも女性が男性に向かって「貴公」って使うのは自分より目下の相手にじゃなかったっけ!?


「これは失礼致しました。私は、ココ都領主を務めます『バン=ランベール・ド・ココ』と申します。ジルバニア国王より伯爵位を賜っておりますが、どうぞ、皆様方におかれましては、気兼ねなく『ランベール』とお呼び頂ければと存じます。アストルミナ随一の魔法使いであり、S級冒険者。ラ・フル王国第十三代国王が第一皇子の長子『タラ・ラ・フル』王女殿下。以後御見知りおきを」

「……とうの昔に捨てた身分と名だ。今はただの『タラ』だよ。普通に接してくれると有難い」


 こめかみを抑えながら盛大に溜息をつくタラさん。

 ……なんだって? 第一王女だって!?


「うぇぇぇえええーーっ!?」


 アタシら四人はもちろんビックリしたけど、アルさんとイロハさんは、めちゃくちゃ笑い堪えてるし、メイドさんなんて白目剥いて立ったまま気絶してますよ?

 それにしても、ランベールさんはどうやってその事を知ったんだ?


 当時、魔王討伐の偉業を称える意味と、その脅威を忘れない様にと想いを込めて、冒険者組合が英雄の肖像画を描かせたらしい。それをココ都の初代領主となったバンさんが買い取り、永い事大事に保管してきたのだとか。

 そして今日、たまたま連れてこられたユキちゃんが、その肖像画に似ている事に気が付き、こうして、もてなして話をしている内に、英雄が帰還したという考えに至ったという訳だ。


「このココに滞在している間は、私お勧めの宿屋に滞在願えればと思います。もちろんお金の事は一切気にする必要はございませんので、宿屋で運営している居酒屋での飲食も存分にして頂いて結構です。英雄である皆様の帰還に国中、いえ、世界中が沸く事でしょう。どうぞ長い事ココに滞在して頂けると、私としても嬉しい限りです」


「ほう、飲み食いがタダって言っタな! お前、ラン()ール! よく分かってるじゃないか、アタイはその宿屋に決めタゾ! 早速行って肉ダな!」


「そう言って頂けると大変助かります。存分に楽しんで下さい。それと私、ラン()ールからのお願いなのですが、明日にでも一度、冒険者組合へお顔を出して頂けませんでしょうか。私の方から支部長へ話は通しておきますので。出来れば彼の話に耳を傾けて頂ければと」


 要は、滞在中の費用はこちらで持つから、代わりに一つ面倒事を聞いてくれ、という事か。


「ああ、それは問題ない。むしろ、今の俺たちは無一文なんでな、助かるよ。明日早いうちに組合へ顔を出すと、そう伝えておいてくれないか。話の内容は大体想像つくしな」

「察しが良くて助かります! では、これから宿の方に案内致しますので――」


 さっきの護衛の人が呼ばれて、アタシたちを宿まで案内してくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ