19 「アイネ」と「ブルー」
プラチナブロンドの長い髪に灰色の瞳。シュッとした輪郭に、出るところは出、括れるところは括れ、髪、眉毛、睫毛以外の無駄な毛など一切ない、類稀なる美貌とプロポーション。神々しいまでの、畏怖さえ感じる全身真っ白な肌。傾国の色を持つ女性『Eine』
アタクシの、殺戮と凌辱に塗れた甘い蜜の如き素晴らしき日々は、怨敵『アマツ リン』らの手によって、ディノ様の命もろとも全て奪われた。無念と共にアタクシに託されたディノ様の能力の根源「赤黒の炎」は、アタクシの怒りと同調し、長い年月を重ねアタクシの中で宿怨を深め、復讐心を膨れ上がらせ怨念となり「漆黒の炎」へと変貌を遂げた。
そして今、怨敵『アマツ リン』の血を引く者たちを捕捉し、アタクシは歓喜に震える。
「ああ……あああっ……。アタクシたちの仇、見つけ出しましたわ。とうとうこの手で憎きアマツの血統を絶つ事が出来ますのね……。ああ、小娘共から引き摺り出した腸で、漆黒の炎とこの身体を温めるのが楽しみでなりません。待っていて下さいねディノ様。……フフッ、フフフフッ。アーッハッハッハッハーッ! アマツアマツアマツーッ! ミツケタ、ミツケタ! ころす、殺す、コロス、コロス、コロス、コロスァーーッ!!」
ベッドの上で歓喜に身を捩るアタクシの隣に寝ていた女性『ブルー』が目を覚ます。
「んっ……ん、おはようベイビー。どうかしたぁ~? 何を見つけたのぉ~?」
背伸びをすると、一糸纏わぬアタクシの身体に顔を埋め、全てを嘗め回し確かめ始めた。
「ブルー。たった今、アタクシの子供達が探し物を見つけたわ。とうとうディノ様とアタクシの宿願が果たされる時が来たのよ。聖堂に子供たちを集めてくれるかしら」
「ン……分かった。招集かけておくねぇ~。ンッ……」
ブルーはアタクシの太腿の間から湯気を立て迸る飛沫を、舌を転がしじっくりと味を確かめる。ねちっこく、美味しそうに。
ニチャァっと崩れた笑みを浮かべる常軌を逸した天才科学者『Blutegel』
「アハァ~ッ! 満足~っ! んじゃーボクは先に行ってるぅ~。子供達を集めておくから聖堂まで来てねぇ~」
ベッドから降り、真っ白な絹地の薄い布を裸体の上に纏い、隆起した桜色の突起が透けている事など気にもせず外へと出た。程なくして聖堂の鐘が鳴ると、街中から人が集まり出す。
「さぁ、ディノ様。復讐劇の幕開けに向かいましょう。アタクシたちの渇望を叶える為に」
荘厳な雰囲気を帯び、息を呑む程に真っ白な聖堂で、登壇したアタクシは両手を広げる。
「能力を与えられし祝福された子供たちよ! 夜明けを告げる星たちよ! 今、時は満ちた!さぁ、正義の旗を掲げよ! 世界を革新せよ! 我らこそが正義である! 今、裁きの時!」
鳴る鐘の音と共に、聖堂を揺るがす程の鬨の声が、アタクシを狂気の激情へと解き放つ。