15 「襲撃」と「スーツ」
バットを振り回す先生や生徒らの前に降り立ち、開口一番、烈風をぶちかます。
強力に回転するド派手な竜巻に巻き上げられていく敵。後方から驚愕の声が聞こえて来る。
「我らに牙を剥きしその愚行! 炎に焼かれて悔いるがいい! 灰塵と化せっ!! 竜息!!」
巨大な淡青色した火炎旋風が立ち昇り、圧倒的な火力で敵を一瞬で焼き尽くした。
ハルも見事なまでの怪力を振い、次々と敵が宙高く打ち上げられる。そして、纏まって落下して来る先で両手首を合わせ待ち構える姿は、さながら獲物を狩る獰猛な獣の牙の如し。
「ミカンより派手さで劣るが、ウチだって負けてないんだから! 噛み砕けっ、光牙!!」
突き出した両手は煌く光の牙を放ち、狐を思わせる巨大な顎が容赦なく敵を噛み砕く。
アキは、まるで風に舞っているかの様に、流れる動きで敵を地面に叩き付け、狐の爪を模した防御障壁で切り刻んでいく。流麗な動きとは裏腹に、やっている事がエグイ。
「折角のお披露目なんだから、派手に散って下さいね? 刻めっ! 狐月爪!!」
数百という数で押し寄せて来た敵だが、アタシたち三人の凄まじい殲滅力であっという間にその数を減らして行く。完全制圧までもう一息と言った所で、後方から盛大な声援が上がっている事に気が付く。校舎窓から顔を覗かせる者、外に出てきている者、それに先生たち。
ブチ切れていて分からなかったけど、鼓舞と感謝の嵐に気恥ずかしさを思い出す。聞こえて来るのは「ありがとう」や「助かった」、「スゲーっ!」や「今日からお前が番長だ!」とか。
ん? 何かおかしなものが混ざっていたような気もするけど、きっと聞き間違いだと思う。さっきからパトカーのサイレンが煩い。それとヘリコプターの音もする。こんな大事になってしまったので仕方ないが、さっさと片をつけて事態を収拾するとしよう。
「ミカンちゃん! ハル! 何か来るっ! 注意して!」
アキが注意を促すと同時に、一見するとスーツを着た普通のサラリーマンが影の間を縫ってアタシたちの前まで歩いて来た。場違い感が半端ないが、間違いなく敵であることが伺える。ねっとりと舐め回す様にアタシたちを熟視すると、軽く鼻で笑った。
「おいおい、マジかよ。こんなガキ相手にしろってか? いくら因縁云々つっても七〇年以上も前の復讐に固執するなんざ正気の沙汰じゃねぇよホント。しかしまぁ、至上命令ってんだからやらねぇ訳にもいかねぇよなぁ。力貰っちまったし。オレも死にたくねーし」
首をコキコキ鳴らしながらスーツの上着を脱ぎ、黒い影に持たせた。
「あー、お前。そのスーツ結構高い奴だからぜってー汚したりすんなよ! いいな!」
スーツを持たされた黒い影はコクコクと頷いている様に見えた。
「つー事だからさ、お嬢ちゃんたちに直接的な恨みもなんもねーけど、まぁ、死んでくれや」