13 「オモチ」と「アズキ」
走り着いた先はちょっと小高い丘にある公園。夕焼け前の太陽が、綺麗なオレンジ色に染まって行くのがよく見える。そこで、やっと落ち着いて話をする事が出来た。持っている情報を出し合って分かった事がいくつかある。まずはアマツの姓の事だ。
ひいおじいちゃんには5人の奥さんがいた。どうやったのか分からないけど、最強の能力者集団だったひいおじいちゃんたちの為に、当時の力ある政治家がなんとかしたらしい。
以前、ゴマがアタシに話してくれた「宇迦之御魂神」の話ともまあ辻褄が合わない事もない。それに、ひいおじいちゃんの奥方様らって言ってたしね。アタシ、アキ、ハルの三人はその直系なんだって。
証拠はこのキツネたち。
「初めましてやな! ワイは『白狐』や、そこの黒いんと同じ天狐でアキの守護精霊や。ワイめっちゃカワイイやろ? 今は『オモチ』呼ばれてんねん。以後よろしゅう頼んまー!」
「ワっちは天狐が一尾『赤狐』の『アズキ』でござりんす。ハル様を守護するのがお役目。最後の時までずっと一緒にある所存でありんす。今後ともよろしくいたしんしょうえ」
「妾は『黒狐』じゃ。今は『ゴマ』という名を賜ったのだ!」
この状態を何と表現したらいいのか迷うけど、なんて言うか……濃いなっ!
それと、二人ともアルさんと面識があり、危険が迫っている事を告げられている。戦闘訓練も受けており、黒い影はもちろん、その後ろに控えている大きな戦いを見据えてるのも同じ。三人がバラバラなのは良くないって事で、アルさんが昔から所属してる組織を通して政府に働きかけ、難なく転校って事になってアタシのいる学校に集まったみたい。
そして、三人とも特殊な能力に覚醒しており、お互いの現状を共有し合った。
それからしばらくは平穏な日常が続き、気が付くと、いつも三人で連む様になっていた。
平日、学校が終わってからは今まで通りゴマと体力作りと能力の特訓をしたが、休日は三人でアルさんから戦闘の訓練を受けた。おかげでお互いの呼吸も分かるようになり、少なからず連携も取れるようになった。簡単に言うと、アタシが速さと技でトリッキーに攪乱し、ハルが怪力で一撃必殺を放ち、アキが防御障壁と回復能力で後方支援といったバランスの良い構成。
アルさん曰く、正に三位一体、三狐神「宇迦之御魂神」の再現だな、だって。アタシがフリでハルがノリ、アキがツッコミとも言ってたが、それは余計な三位一体だ。