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12 「アキ」と「ハル」

 休み時間になる度、ワッと人だかりが出来て取り囲まれた。色々聞かれたが、まぁなんとか上手く口裏を合わせたというか、無理やり乗り切ったという感じ。おかげで碌に話も出来なかったし、もう一人の転校生にも会えず、結局学校が終わるまで待つ事になった。


 チャイムが鳴り、皆、帰り支度や部活の準備を始める。かくいうアタシも一応部活には入ってるけど、今年になってから戦闘訓練云々で完全なるサボり魔になってしまった。


 校門前でもう一人の転校生を待つアタシとアキ。色々と他愛のない会話をしていると、お嬢様然としたアキの表の顔と本性が結構違ってて面白かった。まぁ頭が良いのは見た目通りなんだけど、腹黒、毒舌だが、基本は優しいカワイイもの好きのポンコツと言った感じが強い。怒らせたら静かにキレそうなタイプとでも言った方がいいのかな? 悪い子ではない。


「アキー、遅くなって悪ぃ! 直ぐ帰ろうと思ったら部活があーだこーだ掴まっちゃってさ!って、おお! やっと会えた運命の三人目! ウチは『天狗(あまつ) 陽熒(はる)』! ハルって呼んで!」


 言葉使いは男の子だけど、赤毛でクセっ毛のロングツインテールな女の子が走って来た。


 アタシより十センチ程背が高いだけなのに、アタシやアキとは次元が違う胸の存在感は一体何だ!? オマケに健康美溢れるこれまた美人ときてる。落ち着けアタシ、泣くなアタシ。


「えっと初めまして、アタシはアマ……」

「うっはー! お前カワイイな! 真っ黒じゃん! ちょっ、撫でていい? いいよね?」

「妾は『黒狐(こくこ)』! ゴマという名前なのじゃ! 以後、ミカン殿共々よろしく頼むのじゃ」


「……初めまして、アタシは……」

「おお! ミカン? めっちゃカワイイ名前……」


「は・な・し・を……聞けーっ!! オマエはアレかーっ! とりあえず人の話を遮らないと喋れない病か!? デカイおっぱいと一緒で自己主張が強いってか! 慎ましさの欠片も持ち合わせてないのか! 少しはアタシとアキを見習えーっ!」


 ……あまりの話の聞けなさ加減に思わずキレて怒鳴ってしまった。


「……あ、アレ? ウチ、またなんかやっちゃった?」


 さっきまでの興奮した顔は何処へやら、一転して困り顔で頬をポリポリするハル。


「はぁっ……いつも気を付ける様に言ってたのにこれだから。今のはハルが悪い。テンション上がるのがダメっては言わないけど、TPOをもっと考えるべき」

「あちゃー! そっかー! ウチ、テンション上がるといつもこうでさ、気分悪くさせてしまったようでゴメンねっ! この通り! それでえーっと……ミカンって呼んで良かった?」


 思わず怒鳴ってしまったけど、根は素直なのか悪い子ではなさそうだが、人の話は聞け。


「あ、いや、あの、アタシこそ抑えが効かなくて、いきなり怒鳴ったりしてごめんなさい」

「はい。二人ともゴメン出来て偉かったけどー。ミカンちゃーん。さっきの慎ましさの欠片ってどういう意味なのかなー? ウフ、ウフフフフフッ」

「げっ! やばっ! 逃げるぞミカン! とりあえず走れっ!」

「え? ちょ! 待ってハル! アキに貧乳は禁止ワードなのーっ!?」

「誰が貧乳ですってーっ!? 私のは美乳っ! しかも現在進行形で成長中なんだからーっ!」


 この後、三人でめっちゃ本気で走った。

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