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11 「転校生」と「親戚」

「久しぶりの学校なのだー。顔ぶれも一新したようで楽しいのじゃー!」


 アタシの肩の上で楽しく騒ぐキツネが一匹。

 ゴマのお陰で心細さもどこかへ消えた。


 予鈴が鳴り、先生が教室に入ってくる。人事異動とやらで入れ替えがあったみたいだけど、二年生の時と同じ岩上(いわがみ)先生だったのでちょっとホッとした。


「よーっし、みんな元気に登校して来たわね! 今日から三年生よ! 下級生に情けない姿を見せたりしたら、直ぐナメられちゃうから気を付けなさいよー? 見知った顔も多いけど、これから高校受験も控えてるんだから、気を緩めずしっかりとやって行くように! それと転校生を紹介をするわね。入って来てー」


 転校生? 親の都合とかで仕方なくかなぁ? 受験前にこんな田舎に来るなんてカワイそ。なんて思ってたら教室のドアが開き、一人の女の子が入ってきた。めっちゃ可愛い……。


 黒髪ロングの姫カット。色白で大人しそうだけど、理知的で凄く頭良さそうな感じがする。クラスの男子共はもちろんだけど、女子もキャーキャー騒ぐってどういう事?


「ほらー、みんな静かにー。……はいっ、じゃぁ、自己紹介してくれるかな」


 両手を前に添え、美しい所作で腰を曲げる。

 流れる動作で顔を上げ、挨拶をする。


「初めまして。この度、こちらに転入して参りました『天狗(あまつ) 灯祈(あき)』と申します。不慣れな土地ではございますが、皆様のお世話になるかと存じます。何卒よろしくお願い申し上げます」


 中学生とは思えない程の完璧な言葉使いと挨拶。

 その見た目も相まってめっちゃ浮いてる。

 いや、問題はそこじゃない。

 えっ? 今「アマツ」って言った? あり得なくない?


「みんな驚けー、なんと七颷(なつ)の親戚だそうよ。それとA組にも転校生が来てるんだけど、その子も七颷(なつ)の親戚だそうよ。という事で、まずは灯祈(あき)ちゃんをよろしく頼むわね」


 そう言ってアタシに同意を求めて来る先生。

 ちょっと待って! アタシこんな親戚知らない。


「なるほど、妾には分かったのだ。ミカン殿、ここは了解したと言っておいた方がよいのだ」


 耳元でゴマが助言してくる。何が分かったというのだろう? とりあえず言う通りにする。


「あ、はい……。了解した」

「了解した……って、七颷(なつ)、面白い返事をするわね。まぁ、とにかくお願いね」


 ゴマのせいで「了解した」って言っちゃったじゃない!

 クラスのみんな笑ってるし!


 それから最初の席替えが行われたのだが……。アタシは一番後ろの窓際になり、アマツの姓を名乗った灯祈(あき)という女の子は、まさかの隣になるって言うね。どうしよ……。


 席替えも終り授業が始まると、彼女は教科書を持っていない為、アタシの机に机をくっつける事になる。クラスのアホ男子共がチラッチラと視線を投げて来るのがうっとおしい。そんな周囲には聞こえない様に、彼女はアタシにコソコソっと耳打ちをしてきた。


「さっきは突然でごめんね。でも嘘じゃないし、敵でもないから安心して。詳しくは後からもう一人を加えて話した方がいいと思うの。学校が終わったら三人で話しましょ。あ、もちろんキミもね、キツネさん。これからよろしく。私の事はアキって呼んで」

「妾の方もよろしくなのだ! ミカン殿はまだ状況が把握出来ておらんからの、後でちゃんと情報交換するのじゃぞ? 妾も久しぶりに白と赤に会いたいしの!」

「ちょ!? え? アンタこれ……えーっと、アキ、コレ見えてんの!? って、白? 赤?」


 肩を回すフリをしてゴマを肩から降ろして机の上に置く。するとアキは指先でゴマを撫で回して、こりゃ堪らんとでも言うかの様に口端がだらしなく緩み、端から涎が零れそうになる。これでは美人が台無しだと思い、机の中からティッシュを取り出し、口元を拭いてあげた。


 なんだこの残念美人は!?

 なんだか親戚って話の信憑性が上がった様な気がするし!

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