10 「ネーミング」と「センス」
短い冬休みが終わり、久しぶりに学校の友達と顔を合わせる。肩にはゴマが乗っているが、誰にも見えないのがちょっと面白い。何だか自分だけの秘密を持ったようで口元が緩む。
「ミカン殿! 楽しいのじゃ、楽しいのじゃーっ! 妾は学校が気に入ったのだぞ!」
耳元でゴマが話しかけてくるから、ボソボソっと小声で返事を返す。
「いい? 授業が始まったら不意に話しかけたりしないでよね。ビックリしちゃうから」
流石のアタシでも、授業中に突然話しかけられ「ひゃぁっ!」とか叫びたくはないもんな。
そんな日常に戻りながらも、平日は、学校が終わってからゴマと一緒に体力作りと能力を使う練習。土日は、アルさんとアクロバティックな戦闘訓練をこなして、近い内に必ず訪れるであろう戦いに備えた。その甲斐あって、能力の使い方と体捌きがかなり上達し、技も覚えた。
『蒼炎』 自由自在に狐火を操る。纏う事も可能。魔を焼き払う清浄な炎。
『疾風』 自由自在に風を操る。纏う事で行動速度の上昇や飛行が可能。
『裂空』 見えない真空の刃を飛ばし、切り刻むカマイタチ。
『烈風』 凄まじい回転の風で切り刻み、吹き飛ばす竜巻。
『竜息』 烈風に狐火をミックスした技。凄まじい火力の火炎旋風を放つ。
『迅雷』 疾風で空気中の水分や塵を衝突させ発電し、激しい雷撃を放つ。
技のネーミングはアタシの知恵を絞った力作だ。
内なるイタさが顔を出した感はあるけど。
アルさん曰く「センスはリンちゃんそっくり」だとか。
ちょっとだけ教えてもらったんだけど「超新星爆発」とか「紫電轟雷」だって、笑うよね。って……あれ? 感性一緒じゃん!? 何だか急に親近感湧いて来たな、ひいおじいちゃん。うーん、血は争えないってか?
それにしても、しっかり身体を動かして鍛えているからか、腹筋や太ももがかなり締まってきた。自分でもびっくりするくらいカッコイイ体形になってきたのではないかと思う。困った事と言えば、体育でバスケなどをしている最中に、無意識で疾風を纏ってしまい、とんでもないプレーをしてしまったり。学校帰りに危うく飛行してしまいそうになる事だ。今のとこバレたりはしていないから大丈夫だと思う。けど、友達はちょっと疑ってるかも?
アルさんとの訓練中に、何度か黒い影が襲ってきた事があったけど、もはや、強くなった私の敵ではなくなっていた。それと、慣れとは怖いもので、戦闘を繰り返した事で、始めに感じていた怖さや死というものに対しての抵抗が薄くなってきた。一つ壁を超えた様な感じかな。
そんなこんなで忙しくしていたら、あっという間に三学期も終りを迎え、特訓三昧だった冬が明ける。
アタシはこの春から三年生に進級する。進級と言えば気になるのがクラス替えだ。短い春休みを経て今日が登校初日。各クラス前に貼り出されたクラス割りを確認する。この学校も少子化の影響を受け、クラス数が昔と比べて少なく、現在は3クラスしかない。一年の時はB組、二年はA組、そして三年生になった今回はC組だった。これで全クラス制覇だ! とか思ったけど、仲の良かった友達が結構バラけてしまい、ちょっと心細い。