1/2
" さくら "
あの日、僕は医者になって初めて、
患者の中の1人の女の子が大切な人で、死んでほしくない人になった。
その女の子は " さくら " と言って、
余命宣告を受けている患者だった。
ここより大きな病院で、
人が多いがためにこの病院に回されたらしい。
さくら「私、冬に死ぬんだぁ…」
その少女、さくらは開口一番にそう言った。
彼女は自分の名前を気に入っていて、
入院するまで、家族で毎年桜を見に行っていたらしい。
その話をしたさくらは
さくら「今年の桜も見たかったなぁ…」
そう言うさくらに僕はこう言う。
「今年の桜も、僕が見せるよ。」