(四章)
テーマ:小説
まだ初夏の匂いを漂わせる頃合いで、
渡り廊下を歩いていると風が何気に気持ち良く感じた。
やがて俺達は体育館に着くと引き戸を開け、中の様子を窺うと、
中で何やら部活動に精を出す生徒たちが居た。
薫はそれを黙視した後、
「ここで待ってなさい。」
と言って体育館に入り小走りで倉庫へと駆けて行った。
仕方ないのでバスケの練習風景を眺めていると、
倉庫からパンパンに詰まった円柱型のバッグを背負って現れた。
「何が入ってんだ?」
「ボール!さぁ、戻るわよ!」
そう言い残し中庭に引き戻す事になった。
「さっきも言ったけど、私たちが出るのはビーチバレーだから
まずコンビ造りをしないといけない訳、
って言っても相性が合わないと意味が無いから、
今日から日替わりでチェンジしながら練習するわよ!」
満天の笑みで言い放った。
「そう言えばさっきも言ったけどメグは経験あるの?メグ以外もある人いる?」
確かに話しが曖昧になっちゃったからここは確認する必要があるだろう。
「私、元バレー部のエースです。」
ニッコリ笑って成瀬は応えたえ、
篠原は「ある」と気が抜けた感じで応えた。
和泉は「ないよ」と言い、俺も右に同じくない。
取り合えず気持ちを切り換えて練習を開始した。
俺の相手は成瀬だった。元バレー部のエースに言わせると
パス練らしいので言われるままにやってみると意外に難しく、
ラリーにもならず、苛立ちを隠し切れなくなった成瀬は
溜まらず怒声を荒立てて、俺は喫驚した拍子で尻餅をついてしまい、
その光景を見ていた外のメンバーがクスクス笑いながら
「何時まで坐ってんだ!」なんて和泉がヘラヘラしながら茶化す。
俺は和泉の詞に促されさっと立ち上がり皆の方を見渡すと
薫やら和泉は笑っていたが、
唯一人、篠原が顔色を曇らして俯きながら俺の事を見ていた。
薫は俺と成瀬の経緯を見兼ねて「チェンジタイ~ム」って言い皆を集めた。
「アンタだけよ!和泉も下手ながらもラリーが続くわよ!」
無頓着な面で言い放った。
「和泉よ、さっきしたことないって言ってなかった?」
「確かにないとは言ったが、中学時代にちょっとは触れただろう?
お前はやらなかったのか?」
確かに言われて見ればやったような気がするようなしないような、
脳裏の片隅に了い込んでいた記憶を掘り出した。
「想えばやったな」
「なら多少は出来るだろうよ?それとも運動音痴じゃないのか?」
またもやヘラヘラしながら言った。
隣で考え込んでいた薫が何かを閃いたの様な感じで
「悠一!あなたは一人で壁撃ちをしてなさい!」
上機嫌で言い、俺を省く二対二になるから軽く試合をやることなった。
俺は強制的に審判をやる事になってしまった。
運動音痴が幸か、俺はなるべくなら出たくはなかったが、
審判なら万々歳だ。