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異世界技術派遣会社  作者: 神無
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※ロヴェル・ハルトンの転機

今回はスケルトンさん、、、ロヴェル視点になります。


スケルトンは他種族に比べて長寿であると言われている。


しかしそれは実の所間違いなのだ。


人間は長くとも百年程度の命しか持たないので言うまでも無いが、悪魔族も数百年で寿命が来る。


不死族とも呼ばれるスケルトンにはそもそも寿命が無い。特定の病気にしか掛からないし、その病気は他者に移る事は無い。故に怪我でしか死なないのだ。


ただ、その唯一が問題だった。


スケルトンは全種族随一と言って良い程にステータスが低かったから。


しかもスキルを覚えにくい。その為、身体能力は低い。


結果として最弱種のレッテルを貼られている。


若いスケルトン達は悲観するが、長年生きた者達は理解する。自分達は時間さえあれば数多のスキルを覚えられる。そしてそれを極められる。


殆どの種族は折角持って生まれたスキルを極める前に死ぬ。勿論、極めた者も居るが、完全とも言えるその時間は短いのだ。


とは言え、漸く覚えたスキルもレベルが上がるのが遅いので実際に極まったスケルトンは殆ど居ない。


その極めた存在がもれなく持っている称号、それが『スケルトンの希望』だ。


ロヴェルは産まれた時からそれを持っていた。


スケルトンの集落に鑑定スキル持ちが居ない為にコボルトとの会談の際にまとめて鑑定されて判明したらしい。


ロヴェルが七歳の頃、父であり集落を取りまとめる族長は言った。


「お前が極めたいのはなんだい?」


「執事スキルです!!」


その時はただ生存率が高い職業で同年代の仲間達の間で人気だった物を上げただけだった。だが、その一言で私の未来は決まった。元々戦闘職など向かないし、父の補佐は楽しかったのもあってロヴェル本人に悔いは無かったが、鑑定スキルが必要だった集落では少しだけ湿っぽい宴会が開かれたらしい。


ロヴェルは母が二日酔いになった父をひっ叩いていたので知った。


それから。


ひたすらに修行をして、友人にそろそろスキルを習得出来そうだと言われていた時だった。


集落から仲間達が攫われた。コボルトの集落では被害は無かったが、山向こうの村に居た出稼ぎ組が攫われたらしく、情報を集める事になり。


スキルこそ習得出来て居ないロヴェルだったが、それなりの作法は覚えて居たので情報収集役を買って出た。他にもスケルトン数名が名乗り出て、コボルトが捜索部隊、スケルトンが情報収集部隊と別れる事になった。


コボルトよりはスケルトンの方が狙われない事もあり、時間は掛かったが情報は集まった。


但し、狙われないと言う事には理由がある訳で。


それぞれが情報を持ち寄った際に殆どのスケルトンが疲労困憊の状態だった。コボルトは彼等を魔物と間違えた新米冒険者から攻撃を受け重傷。


代表者が衛兵への手紙を持って奴隷商のある城壁都市へ行く事になったが、誰が行くかが問題になってしまった。


更に、城壁都市へは途中で厄介な草原―――魔物と出会えば確実に逃げきれずに食い殺されるだろう場所もある。馬車に乗れれば問題ないのだが、元々森の中で暮らして居る二つの集落では貨幣が無いのだ。


少しづつ溜めて居た魔石は情報収集の為に向かった街への通行税で消え、最早馬車代などなくなってしまった。


其処で決断したのはロヴェルだ。


「、、、私が行きましょう。執事スキルには確か逃走術の指南もありました」


とは言え、あくまでもそれは主人を逃がす為の物。しかも、ロヴェルは情報収集の間は修行をしていないのでスキルは習得出来ていない。


それでも、確実に衛兵に手紙を渡せるのはロヴェルだけだった。手紙を書いてくれた友人は駆けずり回った所為で足をやられてしまった。


決死の覚悟で向かった城壁都市。


けれど辿り着く寸前に崩れ落ちた筈だった。ロヴェルを救ったのは人族の女性、エコー。


最初は女神かと思ったが、どうやら違うらしい。


奴隷反対派であり、そして救出と保護の為に手伝ってくれると言う。更に話を聞けば特殊スキル持ちであり、自分に数多のスキルを授けてくれた。


正直、解放された後にあの草原を大人数で超える事は出来ないと踏んで皆で何か職を探さねばならないと思って居たのでそれだけでも有り難い。


だと言うのに、あろう事かエコーはロヴェルを雇うと言ってくれた。


この人に仕える為に自分は存在しているのではないか、真面目にそう思いつつも衰弱している現状では真面に動けもしない。自分に苛立ちつつロヴェルはとにかく体を休めようと視界を閉ざす。


それでも興奮状態だった為か寝付けずに居ると暫くしてエコーが起き上がるのが解った。恐れ多い事に同室なのでベッドの距離は近い。


何となく緊張して黙り込んでいると耳障りの良い声がした。


「うーん、ステータス低いのってどうにかならないかなぁ、、、ロヴェルさんがうっかり倒れちゃったらヤダしなぁ、、、」


心配されている事への喜びと不甲斐無さで飛び起きそうになったロヴェルだが、疲労の所為で体は動かなかった。


「そうだ、せめてダメージカットとか出来れば良いんだ!、、、ダメージカット、、、んー、十分の一位で良いか、、、実質十倍になるし。名前どうするかな、、、」


暫くエコーは悩んで居たのだが、覚悟を決めた様子で「もう他に浮かばないから仕方ない、、、」と呟いた。


「、、、あぁあぁぁぁぁぁ、、、、やっぱりそうなったか、、、!!くっ、ごめん、ロヴェルさん、、、後で良い名前思い付いたら付け直すから、、、」


ふと、自分に何らかのスキルが譲渡されたのが解った。そして恐らくそれは凄まじい効果の物―――英雄が持つような特殊スキルなのではないか。


そんな事を考えながら眠りに落ちたロヴェルは翌朝、目が覚めて直ぐに隣にエコーが寝て居る事を確認し、次いで自身のステータスを確認した。


其処には昨日は無かったスキルが追加されていて。


「、、、、、、、、、、“ヨコヅナが乗っても壊れない”、、、?」


訳が解らないスキル名に困惑しながらエコーの寝顔を見詰めるロヴェルなのだった。


響のネーミングセンスはお察し。

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